組織風土とは 構成要素や改革の手順を解説

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組織風土とは、組織の構成員のあいだで共通認識となっている価値観やルールのことです。

組織風土は「ハード面」「ソフト面」「メンタル面」によって構成され、とくに目には見えないソフト面が組織風土の大部分を形作っています。今回は、組織風土の概要や組織文化との違いを確認したうえで、組織風土改革の手順や課題について解説していきます。

組織風土とは

組織風土とは、組織の構成員のあいだで共通認識となっている価値観やルールを意味します。

目には見えないものでありながら社員の考え方や行動に影響を与え、大局的には人材の成長の方向性や定着率などにも関係してきます。そのため、組織風土は健全な状態で維持することが大切です。

組織風土と組織文化の違い

組織風土によく似た言葉として、組織文化が挙げられます。実際、両者はほとんど同じ意味として用いられますが、組織文化は「企業側がビジョンを掲げて、意図的に作り上げる」という意味合いが強いといえるでしょう。

一方、風や地形が滅多なことでは変化しないように、組織「風土」は深く根付いた価値観やルールを指す場合に用いられます。

組織風土を構成する要素

組織風土は「ハード面」「ソフト面」「メンタル面」によって構成され、これらの構造はよく「氷山モデル」を用いて表現されます。以下、それぞれの内容について解説していきます。

ハード面

組織風土におけるハード面は、明文化されたルールによって形成されます。「氷山モデル」においてハード面は、海上に突き出た氷山部分にあたり、組織風土のなかでも可視化されている部分として扱われます。そのため、組織風土改革においては、積極的に関与できる要素といえるでしょう。

ハード面の例としては、以下が挙げられます。

・経営理念

・事業内容

・人事制度

・就業規則

・マネジメントの方針

・コンプライアンス

ソフト面

組織風土におけるソフト面は、社員一人ひとりの性格や日々の行動によって形成されています。「氷山モデル」においてソフト面は、海中に沈んだ部分です。よく「氷山の一角」と例えられるように、見えない部分でありながら組織風土の大部分を占めています。

ソフト面の例としては、以下が挙げられます。

・経営層の価値観、理念

・働く人の意識や性格

・人間関係、信頼関係

・組織が所在する地域の文化

・エンゲージメント

・規範意識

メンタル面

メンタル面は広義ではソフト面に含まれる要素ですが、職場環境に直結し、社員の心理的安全性やモチベーションに直結する部分であるため、3つ目の独立した要素として重要視されます。

メンタル面に影響を与える例として、以下が挙げられます。

・自発的な行動、発言が尊重されるか

・コミュニケーションは活発か

・過度な上下関係に支配されていないか

・挑戦を受け入れる雰囲気はあるか

・競争意識の度合い

良い組織風土で得られるメリット

良い組織風土の企業には、「心理的安全性と高いエンゲージメント」「目標に向けて一丸となる」「質の高い人材育成・採用の実現」といったメリットがもたらされます。それぞれ見ていきましょう。

心理的安全性と高いエンゲージメント

良い組織風土の企業では人間関係の不和が少なく、発言の自由も認められているため、心理的安全性を感じやすくなります。簡単にいえば、社員にとって居心地の良い職場環境となるわけです。

必然的に従業員エンゲージメントが高まり、業務へのモチベーションや貢献意欲も高い状態で維持されるでしょう。

一丸となって目標達成に向かうことができる

良い組織風土が形成されているということは、ハード面とソフト面が合致している……つまり、企業のビジョンと社員の価値観が重なり合っていることを意味します。

こうした状況下であれば、社員の主体的な行動が企業の利益に直結するため、高い生産性が発揮されます。

質の高い人材育成・採用を実現できる

良い組織風土の企業では、質の高い人材育成と採用活動が実現されます。

前述のとおり、組織風土が良ければ心理的安全性やエンゲージメントが高まるので、定着率も高い数値で推移します。離職が少なければ人材育成計画のズレも少なくなり、効率的かつ効果的な人材育成を推進することができます。

また、離職が少ないという評判は求職者にとっても大きな魅力となるので、採用活動の場で強力なアピールポイントとなります。優秀な人材からの応募も集まりやすくなり、組織力は相乗的に高まっていくでしょう。

組織風土改革の手順

ここからは、組織風土改革の手順をお伝えしていきます。

現状把握

組織風土改革を推進するのであれば、まず現状把握から着手しましょう。この取り組みの目的は、ソフト面をできるだけ可視化していくことです。

具体的には、アンケートや従業員満足度調査などを通じて、社員がどのように自社の内情を捉えていて、どのような不満を抱えているかなどを明らかにしていきます。

また、3C分析などを活用して、自社の置かれている環境を正確に把握することも大切です。例えば、業界の市場規模自体が縮小傾向にあるなら、社員のメンタル面にも少なからずネガティブな要因となるからです。

なお、従業員満足度調査の方法やポイントについては「従業員満足度調査とは 目的や分析方法を解説」で詳しく解説しています。

関連記事:「従業員満足度調査とは 調査の目的や分析方法を解説」

課題の定義と改善策の検討

現状把握が済んだら、解決すべき課題を具体的に定義し、改善策を検討していきましょう。

ここでのポイントは、解決すべき課題とその原因を見誤らないことです。ソフト面の課題は社員が感覚的に抱えていることなので、正確に原因を突き止めるのは困難です。組織側と社員側で認識に齟齬があると、改善策も的外れなものになってしまいます。

とくに組織風土改革の改善策は、人事制度の再構築のように大がかりな取り組みとなることがほとんどなので、明確な根拠をもとにアクションプランを検討しましょう。

組織風土改革の周知

本格的に改善策を実行する前に行うべきなのが、組織風土改革の周知です。組織風土が悪い企業の多くは、社員のあいだで「言っても無駄」「簡単に変わるわけがない」といった諦めが蔓延しています。こうした状態では、いくら施策を打っても成果は上がりません。

そのため、経営層による断固たる発信が欠かせず、社員の意識を前向きに改革へと向かわせることが成否を分ける最大のポイントとなります。

アップデートの実行

ここまでの手順を踏まえて、いよいよアップデートの実行です。

ただ前述のとおり、「風土」というものは一朝一夕では変化しません。改善計画は長期的な視野で実行し、KPIを設定したうえで各種施策の効果を確認していきましょう。※KPIの設定については「KPI設定のポイントと具体例」で詳しく解説しています。

関連記事:「KPI設定のポイントと具体例」

とくにソフト面の変化は一律ではなく、組織の変化の実感は人・ポジションによっても異なります。定性的な課題に対しても定量的な計測方法をできるだけ設定して、些細な変化でも見逃さない体制作りが求められます。

組織風土改革の課題・注意点

最後に、組織風土改革を推進する際の課題や注意点をお伝えします。

組織風土改革には時間を要する

ここまでの解説でも触れてきましたが、組織風土改革は時間がかかります。まず1つ目の難関となるのが、ソフト面の課題の定義です。

例えば「消極的な雰囲気を解消したい」という改善点が浮かび上がったとしたら、消極的になってしまう理由を突き止める必要があります。しかし、人の内面の問題である組織風土のソフト面は、機械の故障のように目に見える原因があるわけではありません。採用段階で「温和な人柄」を重視して人材を獲得し続けた影響かもしれませんし、リーダー層のマネジメントが上手くいっていないのかもしれません。

加えて、理由と思われる部分を特定できたとしても、改善に取り組んで成果が表れるまでには、また長い時間がかかります。人の性格や価値観が容易には変わらないことは、誰しも一度は体感しているでしょう。それが「組織・集団」の価値観となれば、時間がかかることは明白です。組織風土改革は、腰を据えて辛抱強く続けていく必要があるのです。

改革には反発やトラブルが伴う

組織風土改革は、すべての社員が肯定的に受け取ってくれるわけではありません。とくに「成果主義への転換」「業務のフルリモート化」といった大きな業務体制の変化は、社員のライフスタイルや報酬にも影響が出るため、強い反発やトラブルが伴う可能性があります。

対策としては、「手順」で解説した「組織風土改革の周知」が重要となり、改革の必要性や妥当性を真摯に伝える必要があります。

組織風土改革には「数字の活用」が欠かせない

組織風土改革の「現状把握」と「課題の定義」に欠かせないのが、数字の活用です。組織風土のソフト面という抽象的な部分を目に見える課題とするためには、定量的に社員の状態や満足度を示す必要があります。

「従業員満足度調査を行えばいいだけだ」と思われるかもしれませんが、前述の例のとおり原因がどこにあるかは、調査を行うだけではわかりません。調査結果のデータを分析し、原因解決につながる情報を選択するだけの「数字力」が必要となるのです。

ただ、数字やデータの扱いに対して苦手意識を持つビジネスパーソンは意外と多く、調査やアンケートを行なっても集計・分析ができず、せっかくのデータがお蔵入りしてしまう企業が後を絶ちません。

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