自律型人材とは、指示を待つだけでなく自ら考えて行動し、結果を出していく人のことです。その特徴として「自発的に行動できる」「仕事に責任感を持つ」などが挙げられ、社内に自律型人材が増えることでボトルネックの解消やイノベーションの創出などが期待されます。
今回は、自律型人材とはなにかを踏まえたうえで、具体的な特徴や育成方法、成長を阻害する原因とその解決策について解説していきます。
自律型人材とは
自律型人材とは、他からの指示を待つだけでなく自ら考えて行動し、結果を出していくビジネスパーソンのことです。自律型人材の反対は、いわゆる「指示待ち型」となります。
自律型人材に明確な定義はないため、「キャリア思考を持って学び続ける人材」「企業としての目標や仕事の意義を理解して、自らの目標と重ねて働ける人材」といった特徴が挙げられる場合もあります。
そもそも自律は「自分で自分の行動を規制すること」「他からの制約を受けず、自分で立てた規範に従って行動すること」といった意味の言葉なので、ビジネスシーンではやや拡大解釈で用いられることが多いといえるでしょう。
自律型人材の特徴
自律型人材は「自発的に行動できる」「責任感を持っている」「創意工夫を凝らす」といった特徴を共通して持っているといわれています。それぞれ詳しく見ていきましょう。
自発的に行動できる
自律型人材の最大の特徴は、自発的に行動できることです。誰かに指示される前に状況や期待される役割を理解し、具体的なアクションを起こすことができます。
また、当事者意識を持って業務にあたるため、日々の行動について「指示されたから嫌々やる」「なぜこんな仕事をするかわからない」といったネガティブな感情を抱かず、努力や学習を惜しまないのも特徴のひとつといえるでしょう。
仕事に責任感を持っている
自律型人材は、責任感を持って日々の業務にあたります。「自発的に行動できる」でも触れたとおり、自律型人材は当事者意識を持って行動するため、自然と仕事に対する責任感も芽生えるわけです。
責任感を持つことで業務を完遂する姿勢が崩れにくくなり、失敗したとしてもすぐに改善策を考え、次回の成功を目指してくれるでしょう。
自分の強みを活かして創意工夫を凝らす
自律型人材は自分の強みを活かして、創意工夫を凝らすという特徴を持っています。高い主体性や責任感を持つということは、仕事に対する価値観も明確である証拠です。こうしたビジネスパーソンは自分のできることを理解しており、自分なりの方法論を確立していきます。
この資質を上手く伸ばしていけば、ボトルネックの解消や新規事業の創出、イノベーションの発生などを社内にもたらしてくれるでしょう。
自律型人材の育成方法
多くの企業が一人でも「指示待ち型」を減らし、「自律型」を増やしたいと考えているのではないでしょうか。ここでは、自律型人材の育成方法について解説していきます。
全社的に意思統一を図る
自律型人材育成の最初のステップは、全社的に意思統一を図ることです。具体的には、経営目標や経営戦略を広く共有し、社員一人ひとりが果たすべき使命を理解することを目指しましょう。
「今どのような状況なのか」「どこに向かうべきなのか」がわからなければ、自発的にアクションを起こそうと思っても方向性や手法が定まりません。漠然とした理念を提示するのではなく、組織としての目標と個々の業務が一本の線で結ばれるように意思統一を行うことで、社員一人ひとりに当事者意識が芽生え始めるでしょう。
心理的安全性を高める
次に行うべきなのが社内の環境整備で、自律型人材が育ちやすい文化や体制を整えていきましょう。これは単に社内制度を変更するだけでなく、社内の雰囲気という曖昧としたものを変革していく一筋縄ではいかない取り組みとなります。
具体的な施策としては、まず職場における心理的安全性を高めて、失敗を恐れずに行動できる雰囲気と体制を作ることが求められます。自発的に行動して失敗した結果、叱責を受ける・評価が落ちるといった環境では、誰もが指示を待ってからではないと行動しません。
社員それぞれのマインドを変化させるのは非常に難しく、一朝一夕で成し得るものではありません。この環境整備は、終わりなく続けていくものとなります。
評価制度の整備
自律型人材育成のための環境整備として欠かせないのが、評価制度の整備です。具体的には、チャレンジ自体を評価したり、取り組みの課程を含めて評価する仕組みが求められます。また、自発的な学習を評価に取り入れることでも自律型の育成につながります。
また、これらの制度を企業文化として昇華するためには、「挑戦を評価する雰囲気作り」も進めていかなければいけません。
指導者側のマネジメント力の強化
自律型人材を育成するためには、指導者側のマネジメント力が不可欠です。育成対象者だけに目を向けるのではなく、指導する側の意識とスキルを高める必要があるわけです。
実際、社員のチャレンジがすべて正しい方向を向いており、成功するわけではありません。指導側は方法論や解決方法を直接的に指示するのではなく、失敗の原因や改善方法を本人に気付かせるようなマネジメントを施していく必要があります。そのためには、高いコーチングスキルやフィードバックスキルが欠かせません。
なお、フィードバックスキルについては「ビジネスにおけるフィードバックとは 種類・方法・効果について解説」で詳しく解説しています。
「関連記事:ビジネスにおけるフィードバックとは 種類・方法・効果について解説」
また、社内制度として1on1を定着させて、振り返りとフィードバックが常に行われる環境を作り上げることも大切です。
研修制度の見直し
自律型人材の育成には、もちろん研修制度も欠かせません。しかし、単に研修を行えばよいわけではなく、実務に結びつき、社員の成長を促すものでなければいけません。
まずは現在実施している研修について従業員満足度調査などを行い、実務への貢献や成長実感などの面から評価を行い、形骸化した研修がないか見直していきましょう。なお、従業員満足度調査については「従業員満足度調査とは 目的や分析方法を解説」で詳しく解説していますので、合わせて参考にしてみてください。
関連記事:「従業員満足度調査とは 調査の目的や分析方法を解説」
また、会社側が強制するのではなく、社員自身が思い描くキャリアデザインを実現できるよう、自発的に学んでいける体制を整えることも重要です。とくに書籍購入費の補助といった金銭面だけでなく、リカレント教育を行うための休職制度などを整備することも大切です。
社員が自律型人材に成長しない原因とその解決策
自律型人材を育成する際に障壁となりやすい課題と、その解決策について解説していきます。
社員が求めているものを提供できていない
自律型人材育成のための制度を整えたのに、社員が自律的に行動しないという悩みを持つ企業は後を絶ちません。こうした企業は、社員が何を求めているかを理解していない場合がほとんどです。
例えば、評価よりもプライベートを大切にする社員が「仕事を早く終わらせても、また別の仕事を振られるだけで早く帰れるわけではない」という状況に置かれれば、無理に生産性を上げようとしません。
自律型人材を育成する際は、社員それぞれのモチベーションの源泉を確認し、企業側が何を提供することで自発的に行動するようになるかを精査しておきましょう。
裁量権がない
自律型人材育成のための制度や環境を整えても、仕事に対する裁量権がないと社員は成長していきません。
注意したいのは、ルーチン化した業務や方法論が確立された業務ばかりを割り振っていないかです。こうした業務はそもそも作業者に選択の余地がないため、意図せずに裁量権がない状態となります。
こうなると、上司側は「自律性を発揮してほしい」と思うのに対し、育成対象側は「選択の余地なんてない」と、認識の相違が生まれやすくなります。自律型人材を育成する際は、割り振る仕事の性質についても目を向けておきましょう。
考える時間を考慮していない
自律型人材を育成する際、これまでと同じスピード感で成果や目標達成を求めていないでしょうか。
自律型は自ら考えて行動する人材なので、同じ仕事を頼んだとしても、細かく指示を与えたときと比べて考えるための時間が必要となります。上司が「自分が指示を出したほうが早い」と考えてしまうと、いつまでも自律型人材は育ちません。そもそも周囲が急かすような環境では、心理的安全性も保たれません。
とくに育成の初期段階は、育成対象者が焦らず物事を考えられるように、余裕を持ってスケジュールを組んでおきましょう。
自律型人材の育成に欠かせない「数字力」
自律型人材を育成する際には、様々な場面で共通認識が求められます。そこで必要となるのが「数字力」です。
例えば、全社的な意思統一を行う際に漠然とした理念を掲げると、社員それぞれの受け取り方が変化してしまいます。認識の齟齬がないように目標などを伝えるためには、誰の目にも公平な数字を用いることが確実です。
これは業務に対するフィードバックも同様です。目標を設定する際も「もう少し案件獲得を増やせるよう、方法を考えてみよう」と伝えても、「具体的にどのくらい?」と疑問符が浮かびます。これを「月間のアポイント件数を20件に増やせるよう、方法を考えてみよう」といえば、その数字に見合った方法を検討しやすくなります。
「数学力」というとテクニカルスキルが連想されがちですが、実はコミュニケーションにおいても活かせるスキルなのです。
弊社が実施する「ビジネス数学研修」は、数字力を構成する「把握力、分析力、選択力、予測力、表現力」を伸ばしていくことで、ビジネスシーンで数字やデータを効果的に扱える人材を育成しています。数字力を伸ばせば、自律型人材に不可欠な状況把握力を伸ばすことにもつながるでしょう。
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