ビジネスにおける伝え方を磨くトレーニング法とフレームワーク

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ビジネスにおいて「伝え方」は、相手の行動変容を起こすために、自身の考えをできるだけ正確に伝えるための手段・スキルを指します。独りよがりの「伝えた」で終わらず、相手の行動変容を起こすためには、伝え方を磨く必要があるのです。

今回は、伝え方を磨くための5つのトレーニング方法と、相手の理解・納得を引き出しやすくなる伝え方のフレームワークを解説していきます。

伝え方とは

ビジネスにおいて伝え方とは、相手の行動変容を起こすために、自身の考えや意図をできるだけ正確に伝えるための手段やスキルのことです。

ビジネスに限ったことではありませんが、コミュニケーションにおいて「伝わった」かは何よりも重要です。

単に「伝えた」だけでは、自分が言いたいことを届けただけであり、相手が理解したかどうかがわかりません。「伝わった」かどうかは、自分の言動によって相手に行動変容が起きたかでわかります。

つまり、独りよがりの「伝えた」で終わらないよう、相手の行動変容を起こすために工夫を凝らすことが「伝え方」なのです。

伝え方を磨くためのトレーニング方法

「伝え方を磨くためには具体的に何をすればいいのだろう」と疑問に思う方も多いと思います。ここでは、伝え方のトレーニング方法について解説していきます。

なお、伝え方のコツやポイントについては「伝え方が下手な人の特徴 上手く伝えるためのコツとは」でも詳しく解説しています。

関連記事:「伝え方が下手な人の特徴 上手く伝えるためのコツとは」

自分の意見を短文でまとめる

伝え方の最初のトレーニングとして、「自分の意見を短文でまとめる」に挑戦してみましょう。これを行うことでテーマが明確になり、伝えるべき内容の優先順位が見えてきます。

伝え方が下手な人は、思いついたままに意見を伝えてしまう傾向があります。これには「時系列がバラバラになる」「優先度の低い情報まで伝えてしまう」といった問題があり、相手の誤解や混乱を招きます。

まずは20~30文字程度で本当に伝えたいことをまとめて、コミュニケーションのゴールを設定してみましょう。

話の構成を組み立てる

伝えたいテーマや優先順位をまとめられるようになったら、話の構成を組み立てるトレーニングに移りましょう。話の構成を整えることで、自然と聞き手にとって理解しやすい伝え方になります。

なお、話の構成にはいくつかの「型」があり、フレームワークとしてまとめられています。伝え方のフレームワークについては、次の章で解説していきます。

比喩(例え)を取り入れる

構成の組み立てまで進んだら、細部の表現をブラッシュアップしていきます。まずは、比喩・例え話を取り入れてみましょう。

とくに専門用語や聞き手にとって馴染みのない事柄を解説したいときは、積極的に比喩や例え話を取り入れてイメージしやすい話に置き換えることが重要となります。

例えば、難解な戦略について解説する際に「『うさぎと亀』のように、着実に進むことで成果につながる戦略です」と誰もが知る昔話に例えることで、聞き手の理解が早まります。

視覚的な情報を作成する

伝え方のトレーニングは、言葉や話し方に関することだけではありません。人間は視覚から8割以上の情報を得ていると言われるように、視覚的な情報を作成することも、相手にわかりやすく伝えるための重要なテクニックとなります。

例えば、ずらっと細かい数字が並ぶ表を資料として添付しても、多くの人はそこから情報を読み取ってくれません。こうした表はグラフ化することで、相手にとって親切な「伝え方」となります。

また、災害などの被害を伝えたいのであれば、言葉を尽くすよりも1枚の写真を用意するほうが確実でしょう。

このように、視覚的な情報を用意することは「どの方法が最もわかりやすく伝わるか」をイメージするトレーニングでもあるのです。

自分の伝え方を客観的に確認する

仕上げとして、自分の伝え方を客観的に確認してみましょう。とくにプレゼンなどの発表の機会がある場合は、録音・録画をして自分の伝え方を確認するのも効果的なトレーニングとなります。

ただ、出版社にも校正・校閲の人がいるように、文章だけは客観的に振り返るのが非常に困難です。自分で何度も確認するより、第三者に自分の文章を読んでもらい、わかりにくい部分を指摘してもらうほうが確実です。

伝え方のスキル・フレームワーク

伝え方にはいくつかの「型」があり、これを活用することで自然と相手が理解・納得しやすい伝え方となります。ここでは、代表的な伝え方のフレームワークを5つご紹介します。

空・雨・傘

空・雨・傘は、論理的な流れを組み立てるのに役立つフレームワークです。空・雨・傘は、それぞれ以下のような意味を持ちます。

空:事実「空が曇っている」

雨:解釈・仮説「雨が降るかもしれない」

傘:行動「傘を持って行こう」

非常に単純なフレームワークですが、日々のコミュニケーションではいずれかの要素を省略しがちです。例えば、上司への報告で「売り上げが下がっています」と事実だけを伝える人は少なくありません。しかしビジネスでは、その事実からどのような仮説を立て、具体的にどのような行動を起こすかが重要なのです。

ビジネスシーンで役立つ伝え方を磨きたいのであれば、「空・雨・傘」は必ず身に付けるべきフレームワークといえるでしょう。

3点法

3点法とは、話の冒頭で「ポイント(根拠)は3つです」と提示する手法です。話し手からするとテーマを絞ることで話の脱線を防ぎやすくなり、聞き手からすると「3つ聞けばいいのか」と聞く姿勢を取りやすくなるというメリットがあります。

なぜ「3点」が良いのかは、近年の記憶にまつわる研究のなかで明らかになってきました。その根拠となるのが、アメリカの心理学者ネルソン・コーワンが2001年に提唱した「マジカルナンバー4」です。氏によれば、人間の短期記憶の限界は「4±1チャンク」だといいます。身近な例では、電話番号や郵便番号が3または4で区切られています。

※チャンク:情報のかたまり。認知心理学では人間が一度に記憶できることの単位を指す。

根拠やポイントは多いほど納得してもらえると思いがちですが、残念ながら根拠を増やしても聞き手の記憶には残らないのです。3点法は人の記憶のメカニズムから見ても、理にかなった手法といえるでしょう。

SDS法

SDS法は、Summary(話の要点・結論)→Details(詳細)→Summary(話の要点・結論)という構成で、聞き手の理解を促す手法です。

最初の「要点」でテーマを明確にして、その要点を具体的にするために「詳細」を伝え、最後に「結論」をまとめることで、内容が記憶に残りやすくなります。心理学では、最初に提示された情報が記憶に定着しやすい(初頭効果)、最後に与えられた情報が印象に残りやすい(新近効果・終末効果)と言われており、SDS法はこの二つを満たす理にかなった手法といえます。

SDS法はスピーディーにわかりやすく伝える手法で、短時間のプレゼンや報告などに向いています。

PREP法

PREP法は、Point(結論)→Reason(理由)→Example(例)→Point(結論)という構成で、聞き手の理解を促す手法です。

構成を見てわかるとおり、基本的にはSDS法と似た手法となります。SDS法の「Details(詳細)」にあたる部分を「Reason(理由)」と「Example(例)」に分けることで、より丁寧で説得力のある構成となります。

SDS法よりも時間的に余裕があるシチュエーションで選ばれ、論文の執筆などでも活用される手法です。

DESC法

DESC法は、Describe(描写する)、Explain(説明する)、Specify(提案する)、Choose(選択する)の4ステップによって構成されるコミュニケーションスキルです。とくにアサーティブコミュニケーション(相手の意見を尊重しつつ、自身の主張を伝える)に欠かせないフレームワークと言われています。

※アサーティブコミュニケーションについては「アサーティブコミュニケーションとDESC法による実践」で詳しく解説しています。

関連記事:「アサーティブコミュニケーションとDESC法による実践」

例えば、上司から「見積もりは明日の何時頃に提出できるか?」と報告を求められたとしましょう。このとき「Describe」では、「朝からクライアントとの打ち合わせがあるので、お昼に提出します」と、相手から提示された課題に対して、客観的な事実や状況を描写しながら意見を伝えます。

次の「Explain」では「Describe」を踏まえて、「早めに提出できず申し訳ないですが、朝からクライアントとの打ち合わせがあるので、お昼に提出します」と、自身の意見や気持ちを上乗せします。

「Specify」ではさらに代替案などを提案します。「もし昼の提出だと遅いようでしたら、今日のうちに残業をして作成します」と、具体的かつ現実的な案を出すことがポイントです。

最後の「Choose」は、「Specify」に対する反応から新たなアクションを検討します。「Specify」の代替案で「今月は残業が多いから、そこまでしなくていい」と返されたとしたら、「では、Aさんに見積もりを任せてみましょうか」と新たな代替案を提案するという流れになります。

「ビジネス数学研修」は伝え方のトレーニングに最適

弊社オルデナール・コンサルティングがご提供する「ビジネス数学研修」は、伝え方のトレーニングに最適なプログラムをご提供しております。意外に思われるかもしれませんが、「ビジネス数学研修」で学ぶ数字力は「数字やデータから素早くポイントを見つけだし、相手にわかりやすく伝える力」であり、伝える力を磨くための研修なのです。

その代表例ともいえるのが、「数字を用いたコミュニケーション」。数字を用いて伝えることで表現に曖昧さがなくなり、共通認識を得やすくなります。例えば、ビジネスシーンではよく「なるべく早く提出します」と報告する人がいますが、聞き手からすると「具体的にいつ提出するの?」と疑問を感じてしまいますよね。

ですから報告時には、意識して数字を用いてみましょう。すると、「20日の12時までに提出します」といった具合に、誰が聞いてもわかりやすい報告となります。

また、弊社の研修では「視覚的な情報を作成する」でも解説した、伝わりやすい視覚的情報のポイントもお伝えしています。例えば、資料作成の際に「棒グラフ、円グラフ、折れ線グラフ……どれがベストなのだろう」と悩んだ経験はないでしょうか。弊社の研修では、こうした悩みを解消するために「表(データ)からグラフへの変換」をプログラムに組み込んでいます。

「Excelやパワーポイントのグラフ作成ならできる」という人は多いと思いますが、グラフごとの特徴を理解し、最も伝わりやすいグラフを選択できる人はなかなかいません。自信を持って「なぜ◯◯グラフを選んだか」を説明できる人になれば、自ずとわかりやすい視覚的な情報を作成できるようになるでしょう。

なお、個人で「伝え方を磨きたい!」という方には、弊社が運営するオンラインサロン「社会人の数字力向上サロン」をおすすめしております。弊社の「ビジネス数学研修」やオンラインサロンに少しでも興味をお持ちいただけましたら、まずはお気軽にお問い合わせください。

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