企業のデータ活用を阻む課題 解決に必要な4つの取り組みとは
多くの企業がデータ活用の重要性を認識し、実際に予算を投下しているのにも関わらず、現実にはデータを上手く活用できないまま頓挫する事例が後を絶ちません。
データ活用で成果を上げるためには、事前にどのような課題が立ちはだかるのかを把握し、綿密な準備を整えておく必要があります。
今回は、各種調査から企業のデータ活用に関する課題を整理していき、課題解決のためにどのような取り組みが必要なのかを解説していきます。
企業のデータ活用の動向
日本情報システム・ユーザー協会が実施した「企業IT動向調査2022」によれば、企業のIT予算は19年度~21年度計画でいずれも増加傾向を示しており、主な増加理由としては「業務のデジタル化対応(49.3%)」「基幹システムの刷新(48.1%)」、「基盤整備・増強(45.4%)」などが挙げられています。
※%は22年度予測値
データ分析基盤への投資は今後も堅調していくと見られており、実際に新規事業の創出や生産性の向上を目的として、データ活用に予算を割いている企業も多いのではないでしょうか。
しかし予算が増えても、データ活用の推進が実現するわけではありません。
「企業IT動向調査2022」では企業のデジタル化の実施レベルも調べられており、「ワークスタイルの変化に伴うコミュニケーションツールの展開(35.2%)」「紙媒体で管理されている情報の電子データ化(24.5%)」については成果が出ていると一定の回答が集まる一方、そのほかの項目では成果を感じている企業はごく少数という結果が出ています。
このような調査結果からも、多くの企業はデータ活用の推進に対して課題を感じていることが伺えます。
※%は「具体的に取り組んでおり成果が出ている」と回答した割合
引用:総務省情報流通行政局情報通信政策課情報通信経済室「国内外における最新の情報通信技術の研究開発及びデジタル活用の動向に関する調査研究の請負成果報告書(2023年3月)」
データ活用の課題に関する調査結果
データ活用に関する各種調査の結果から、実際に企業が抱えているデータ活用の課題をまとめていきます。
日本情報システム・ユーザー協会の調査
日本情報システム・ユーザー協会が実施した「企業IT動向調査2022」によれば、「個人データ以外のデータの取扱いや利活用において想定される課題や障壁」について、以下のような結果が出ています。
・データの収集・管理に係るコストの増大 25.6%
・データを取り扱う(処理・分析等)人材の不足 24.1%
・データの利活用方法の欠如、費用対効果が不明瞭 23.9%
・データの管理に伴うインシデントリスクや社会的責任の大きさ 21.7%
・特に課題・障壁はない 24.9%
この調査では欧米諸国での調査結果も明らかになっており、「データを取り扱う(処理・分析等)人材の不足」については米国が7.1%、ドイツが9.1%と、欧米諸国と比べて高い数値になっていることがわかります。
また「特に課題・障壁はない」が突出して高い点も注目すべきでしょう(米国14.2%、ドイツ12.9%、中国10.4%)。前述の「企業のデジタル化の実施レベル」を見る限り、本来であれば課題や障壁として捉えるべき事柄すら認識できていない可能性があるからです。
引用:総務省情報流通行政局情報通信政策課情報通信経済室「国内外における最新の情報通信技術の研究開発及びデジタル活用の動向に関する調査研究の請負成果報告書(2023年3月)」
ITmediaの調査
ITmediaが2023年に実施した調査によれば、「データ収集・蓄積・活用・管理について、課題に感じている点」として、以下のような結果が出ています。
・大量データを扱える技術者がいない 38%
・システム間のデータ連携ができていない 33%
・大量データを分析できるツールがない 26%
・リアルタイムにデータを扱えない 23%
・運用保守における人的負荷やコスト 23%
選択肢の傾向からデータ分析基盤に関する課題や悩みに回答が集まるなかで、最も回答を集めたのは人材についての課題だった点は特筆すべきでしょう。
引用:アイティメディア株式会社「本当に進んでいる? 調査から見えてきた「データ活用」の今」
メンバーズデータアドベンチャーの調査
メンバーズデータアドベンチャーが『日経クロステックActive』で2023年に実施した調査によれば、「データ利活用に課題を感じていますか?」という設問に対して、66.9%の担当者が「はい」と回答しています。
実際にデータ利活用を阻んでいるハードルとしては、以下のような回答が挙げられています。
・データ活用人材がいない(不足している) 64.4%
・データ基盤が構築(整備)できていない 43.6%
・データ分析結果をビジネスに活かせていない 43.0%
・データの部署横断利用ができていない 42.5%
・データの形式が揃っていない 37.2%
やはり突出して人材不足がハードルとなる一方、「データ分析の結果をビジネスに活かせていない」「データの部署横断利用ができていない」といった組織体制の問題にも回答が集まっている点に着目すべきでしょう。
引用:株式会社メンバーズ「データ利活用の取り組み「内製化」では不十分? 約7割がデータ利活用に課題を感じているという結果に」
データ活用の課題解決に必要な4つの取り組み
各種調査から明らかになったデータ活用にまつわる課題を解決するためには、どのような取り組みが必要となるのでしょうか。ここでは、4つの取り組みをご紹介します。
データ活用の目的を明確かつ具体的にする
各種調査でも、データ分析をビジネスに活かせていない企業が多いことが明らかになっています。そのため、まずはデータ活用の目的を明確かつ具体的にすることが最初の取り組みとなります。
データによってどのような目標を達成したいのか、どんな課題を解決したいのかが明確になっていれば、データ分析の方向性や分析環境の規模も自ずと明らかになります。「AIを活用しないと取り残される」「ビッグデータを活用すれば社内の課題は解決できる」といった曖昧な目的意識ではなく、自社の状況に見合った具体的な目的を掲げなければいけません。
なお、ビジネスにおけるデータ活用とそのメリットについては「ビジネスにおけるデータ活用とは」でも詳しく解説しています。
関連記事:「ビジネスにおけるデータ活用とは」
データ活用人材を育てる
データ活用にあたって人材面で課題を感じている企業は、データ思考力を持った「データ活用人材」を育てることから始めてみましょう。
データ活用人材とは、データの収集と分析、データを用いた仮説立案から意志決定までを行うことができる人材です。簡単に言えば、データをビジネスに活かせる人材のことです。
データサイエンティストのような専門家は一朝一夕で育成できるものではなく、採用市場においても希少な存在です。そのため、データにまつわる専門家の確保には多額のコストと時間を要します。また、そもそもビジネスにおけるデータ分析は、自社のビジネスモデルとデータ分析をリンクさせて考える必要があります。
つまり、単に統計やプログラミングなどのスキル・知識を有しているだけでなく、自社や業界全体の課題を深く理解している必要があるわけです。このような人材の確保は、非常に困難と言わざる得ません。
そこで必要となるのが、データ分析で解決すべき社内の課題を整理し、アウトソーシングまでの導線を結べる人材です。データ分析の実務は担えなくとも、課題の整理と分析後のデータを施策に落とし込む力があれば、企業としてデータ活用を推進していくことは可能です。
社内にデータ活用人材が増えれば、自ずとビジネス上の課題とデータ活用を結びつける文化が根付き、データ活用がさらに進んでいくでしょう。
なお、データ活用人材については「データ活用人材とは データサイエンティストとの違いや育成に必要なこと」で詳しく解説しています。
関連記事:「データ活用人材とは データサイエンティストとの違いや育成に必要なこと」
データ分析基盤の整備
データ活用を推進するためには、データを収集・蓄積・加工・分析するための基盤が必要となります。各種調査でもこれらの環境を整えることが大きな課題として挙げられています。
データ分析基盤は、収集した生データを保管する「データレイク」、加工したデータを保管する「データウェアハウス」、目的に応じて活用するデータを保管する「データマート」の3層構造によって成り立っています。
これらを整備する際には「直感的に扱えるツールを採用する」「初期投資を抑える(クラウドの活用等)」など、いかに各所の負担を減らせるかが重要になります。
小さな成功体験を積み重ねる
データ活用の推進に欠かせないのが、小さな成功体験の積み重ねです。データ活用推進を阻害する原因として「費用対効果が不明瞭」「データの部署横断利用ができていない」といった課題が挙げられます。
こうしたデータ活用に対する不安や懸念を払拭するためには、最初から大きな成功を目指すのではなく、小さな成功体験を積み重ねるのが最も効果的です。
例えば「ホームページのアクセス履歴から購買者の属性を割り出し、営業部へ共有する」といった取り組みから実際に成約に至れば、データ活用に対する信頼が増していきます。
こうした成功体験を増やしていけば、「データ分析基盤を整備する」「データ活用人材の育成を強化する」といった取り組みも承認されやすくなるでしょう。
データ活用人材を育成するなら「ビジネス数学研修」
データを取り扱う人材の不足は、今後も企業のデータ活用を阻む最大の課題として立ち塞がり続けるでしょう。これには「データサイエンティスト」や「DX人材」といった専門職の不足だけでなく、そもそも「数字を上手く扱える人材」が少ないという根深い問題があります。
実際、数字やデータに苦手意識を持つビジネスパーソンは多く、実は「データを活用した戦略が描ける」「数字を根拠とした意志決定ができる」といった人材すら貴重な存在なのが現状です。経営層や人事担当者はAIやDXといった流行の言葉に惑わされず、段階を踏んでデータ活用人材を育成していくことが求められるでしょう。
しかし、世間の育成機関が提供する研修カリキュラムは専門職の育成を目指すものばかりで、身近なビジネスシーンでのデータ活用について学べる研修はほとんどありません。
そんな状況を打破すべく弊社オルデナール・コンサルティングが取り組んでいるのが、「数字に苦手意識を持つ普通の人」に向けた教育――「ビジネス数学研修」です。
弊社の研修では、数字やデータの扱い方を「入門編」から「実践編」の4段階で学んでいき、受講者のレベルに合わせてデータリテラシーを育んでいきます。
「データ活用に際して人材育成が上手くいかない」「全社的にデータを取り扱うことができる人材を増やしたい」といった課題にお悩みでしたら、ぜひ弊社の研修をご検討ください。
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