ソフト老害とは、主に40代が組織のなかでバランスを取りつつも、下の世代から「老害だ」と思われるような言動を取ってしまうことです。「無自覚に若い世代の芽を摘む」「二枚舌で上の世代と下の世代のバランスを取る」などの言動を取っていたら、あなたもソフト老害かもしれません。
今回はソフト老害の概要と老害との違いを解説したうえで、ソフト老害の具体例やソフト老害からの脱却に必要な心構え・トレーニングなどをお伝えしていきます。
ソフト老害とは
ソフト老害とは、主に40代が上の世代と下の世代のあいだでバランスを取りつつも、下の世代から「老害だ」と思われるような言動を取ってしまうことです。元放送作家・脚本家の鈴木おさむ氏が著書『仕事の辞め方』で用いた言葉で、2024年の流行語大賞にもノミネートされて話題となりました。
この世代は自身の発言力の高まりに無自覚的であり、知らず知らずのうちに若手の意見や成長を妨害している場合があります。ハラスメントに注意してバランスを取っているつもりでも、そのバランスを取る行為自体が「老害」と見なされているわけです。
老害とは
ソフト老害を理解するためには、そもそも老害という言葉がどういう意味なのかを整理しておく必要があるでしょう。
老害を辞書でひくと「企業や政府などの組織で、中心人物が高齢化しても実権を握り、若返りが進まない状態」とあります。ただ近年はもう少し幅広く解釈され、「組織や社会で幅をきかせる高齢者」「若者に対して負担や迷惑をかける高齢者」といった意味合いで用いられています。
これに対してソフト老害は、本来なら高齢者と呼ばれる年齢ではないのにも関わらず、老害と同じように若い世代の妨害をしているという点が最大の特徴といえるでしょう。

ソフト老害の特徴と具体例
ソフト老害といってもなかなかイメージが湧きにくいと思いますので、ソフト老害と見なされるような言動の具体例を挙げていきましょう。
無自覚に若い世代の芽を摘む
ソフト老害の特徴的な言動として、無自覚に若い世代の芽を摘むことが挙げられます。
ソフト老害になりうる40代前後のビジネスパーソンは、役職も上がって組織全体のことを考えて働き始める世代となります。ただその一方で、現場の中心人物として発言力が上がっていることについては無自覚な面もあります。
一先輩の気持ちで後輩を叱ったつもりが、下の世代からすると「組織の総意として否定された」と感じてしまうわけです。
二枚舌で上の世代と下の世代のバランスを取る
ソフト老害は上の世代と下の世代のあいだでバランスを取ろうとして、二枚舌を使う傾向があります。
例えば、上の世代の前では「最近の若い子は忍耐がない」と話し、下の世代の前では「年寄りは頭が固くてダメだ」と話すといった態度を取るわけです。
なにより問題になるのはただ共感するだけで、下の世代の指導をするわけでもなく、上の世代に意見するわけでもない風見鶏なスタンスを取ることです。
諦めさせようとする言動
ソフト老害は、老害のように組織で幅をきかせたり、直接的に周囲へ迷惑をかけたりする言動は取りません。下の世代をたしなめるときも、オブラートに包んで相手を諦めさせようとする傾向があります。
例えば「うちの会社も昔よりマシになったんだよ」「業界の慣習だから」など、若い世代が納得して諦めるように大きな問題を引き合いに出します。「経験不足の若造には任せない!」といった、いかにも老害な物言いはしないわけです。
ハラスメントにならないよう気を配りつつも、保守的で若い世代の意見はほとんど通さないのがソフト老害の特徴といえるでしょう。

ソフト老害からの脱却に必要な心構え
ここでは、ソフト老害から脱却するために必要な心構えをお伝えしていきます。
嫌われる勇気を持つ
ソフト老害から脱却するために最も必要なのは、嫌われる勇気を持つことです。バランスを取ろうとする言動がソフト老害と見なされるわけですから、嫌われる勇気を持って正面から若手と向き合わなければいけません。
実際に自身の若手時代を振り返っても、回りくどく否定されるよりも竹を割ったような物言いのほうが納得できたのではないでしょうか。嫌われる勇気を持つことで、結果的に下の世代からの支持を集められる場合もあるのです。
半端な共感はしない
「嫌われる勇気を持つ」とも深く関わりますが、ソフト老害から脱却するためには半端な共感をしないことも大切です。「部長の性格には私も困っているから、どうしようもないね」といった半端な共感は、「この人に相談しても何も変わらない」といった諦めにつながるからです。
共感の姿勢を見せるのであれば半端に終わらせるのではなく、相手の意見を傾聴して実現可能な解決案を考えるところまで並走することが大切です。
変革に挑戦する
ソフト老害から脱却するためには、変革に挑戦する姿勢も欠かせません。
「うちはそういう会社だから」「これでもだいぶ良くなったんだよ」といった柔らかい言い方でも、結局は下の世代の意見・行動を封殺していることに変わりありません。こうしたバランスを取る態度は、むしろ「直属の上司がこんな弱腰では成長できない」といった見切りにつながり、離職リスクを高める恐れがあります。
本当に必要なのは「一緒に掛け合ってみよう」「もっと良くなるように考えてみよう」と、若手とともに変革に挑戦する姿勢なのです。

ソフト老害化を防ぐトレーニング
ソフト老害にならないためには、心構えだけでなく行動に移すことも大切です。ここでは、ソフト老害化を防ぐためのトレーニングをご紹介します。
アンラーニング
アンラーニングとは、現状にそぐわない知識やスキル、価値観などを整理し、より有用なものにアップデートする取り組みです。ソフト老害の問題は若手とのジェネレーションギャップも原因のひとつとなっているため、アンラーニングによる価値観のアップデートが求められます。
とくに近年は「静かな退職」や「タイパ志向」のように、仕事に臨む価値観も激変しています。ミドル世代がこうした考え方に対して理解を示すことが、本当の意味でのバランス調整といえるでしょう。
なお、アンラーニングについては「アンラーニングとは やり方や具体例を解説」でも詳しく解説しています。
バイアスについて学ぶ
バイアスは「先入観・偏見」といった意味で、人間が意志決定を行う際に少なからず生じてしまう思考の偏りのことです。近年では、災害時などの異常事態で生じる「正常性バイアス」や、自分に都合のいい情報ばかりを集めてしまう「確証バイアス」などが有名です。
ソフト老害においては、とくに「現状維持バイアス」が深く影響しています。現状維持バイアスとは、非合理的であってもリスクや変化を避けて、現状を維持しようとする心理傾向のこと。若手からの斬新な提案や改革案などに対し、「こんな提案をしたら上に睨まれるかも」と考えたら、それは典型的な現状維持バイアスです。
バイアスは人間が物事を考えるうえで必ず生じてしまうものです。ですからバイアスについて学び、「自分の考えは偏っているかもしれない」と自問自答することでソフト老害化を防げるわけです。
なお、バイアスについては「ビジネスにおけるバイアスの種類とその対策」でも詳しく解説しています。
数字やデータを根拠にしてソフト老害化を防ごう
ソフト老害が嫌われる原因は、慣習などの抽象的なルールを押しつける点にもあります。「うちはそういう会社だから」と言われるのと、「過去5年のデータを見ても勝算が低い」と言われるのでは説得力が全く違いますよね。
ただ、数字やデータを示せば必ず納得してくれるかといえば、そう単純な話でもありません。例えば、下の表は弊社の「ビジネス数学研修」で出題している課題で「この5店舗のなかから優秀店をひとつ選び、報奨金を与えるとします。あなたはどの店舗を選びますか」というものです。

単純に「最も売上高の良い店舗」で選んでしまうと、従業員数や総床面積で劣っている店舗が不利になってしまうので、他の店舗の納得感を引き出せません。では「従業員が効率的に働いている店舗」と「店舗面積で効率的に売り上げている店舗」であれば、どちらが納得感を引き出せるでしょうか。これも正解はありませんよね。
このように、データを参照しても評価基準が変わると、結果(選ぶ店舗)は異なるわけです。ですから相手を説得したいのであれば、より納得感のある評価基準を選択し、それをわかりやすく示す能力が求められるわけです。
そして、それを実現するための能力こそが弊社の研修でお伝えしている「数字やデータから素早くポイントを見つけだし、相手にわかりやすく伝える力ーー数字力」なのです。
弊社の研修プログラムは「入門編」から「実践編」の4段階をご用意しておりますので、「昔から数学やデータが苦手で……」といった苦手意識を持つ方でも、「部下に納得感のある指示を出したい」という方でも、受講者のレベルや職位に合わせた研修をご提供いたします。
なお、個人で「数字力を身につけたい!」という方には、弊社が運営するオンラインサロン「社会人の数字力向上サロン」をおすすめしております。サロンでは時事ネタなどをテーマとして、楽しみながら数字やデータに触れてスキルアップできる環境が整っていますよ。
弊社の「ビジネス数学研修」や「社会人の数字力向上サロン」について、少し興味を持っていただけたのではないでしょうか。「もっと詳しく知りたい!」と思っていただけましたら、お気軽に以下のリンクからお問い合わせください。
