人事の仕事がつらいと感じる主な原因として「業務の複雑化」「人の醜い部分に直面する」「数値化しにくく成果が見えない」などが挙げられます。
こうした問題に対し、個人では「ストレスの原因のリスト化」、組織では「アウトソーシングの活用」「人事管理システムの活用」などの対応が考えられます。
今回は、人事の仕事がつらいと感じる原因と、それを改善する方法について解説していきます。
人事の仕事がつらいと感じる原因
人事は組織の中枢に位置づけられる職務であり、それゆえに他部署にはない「つらさ」があります。ここでは、人事の仕事がつらいと感じる主な原因を解説していきます。
業務の高度化・複雑化
近年の人事の仕事の特徴として、業務の高度化・複雑化が挙げられます。
もともと人事の仕事は採用や労務管理、人材育成、人事評価など多岐にわたりますが、日本型雇用システムが機能していた頃はこれらの業務にもテンプレートや流れが確立されていたため、十分に対応は可能でした。
しかし近年は採用ひとつを例に挙げても、スカウトやリファラル採用などの能動的な採用手法が求められ、採用ブランディングなどの広報的な業務も必要となっています。候補者のSNSの確認などは、以前であれば想像もできない業務でしょう。
このように、人事の仕事は時代の変化とともに高度化・複雑化が進んでおり、これらへの適応に「つらい」と感じる人が増えています。
人の醜い部分に直面する
人事の仕事特有のきつさとして、人の醜い部分に直面することが挙げられます。ハラスメントへの対応や、離職・休職を検討する社員への対応など、人事部では社内の人間関係の問題を扱わなければいけないからです。
必然的に人の嫌な部分や不平不満に接する機会も増えるため、精神的に滅入ってしまう人も少なくありません。また、これらの問題の多くは秘密保持の観点から周囲に話すこともできず、ストレスが蓄積しやすいという問題もあります。
問題の矢面に立たされる
人事の仕事では経営層の決断を社員に伝える役割を担い、問題の矢面に立たされることがあります。その代表例がリストラです。その判断を下すのは経営層ですが、先頭に立って業務を進めるのは人事です。社員と経営層の板挟みになるため、非常に心労の溜まる業務となります。
「人の醜い部分に直面する」とも共通する部分がありますが、経営層の決断を代弁し、嫌われ者にならなければいけないのは誰にとってもつらい仕事といえるでしょう。
数値化しにくく成果が見えない
人事の仕事の多くは数値化しにくく、わかりやすい成果が見えません。そのため、業務に対する達成感を感じにくく、周囲からの理解も得にくいという問題があります。
例えば、人事評価や人員配置は「正当に評価して当たり前」であり、不平等やミスを咎められることはあっても、適切な評価・配置で人事の働きぶりが褒められることはありません。
業務の負荷の一方で、周囲からは「人事はノルマがなくて気楽」などと見られがちです。このように、人からの感謝もなく「やって当たり前」と思われる部分につらさを感じる人は少なくありません。
繁忙期の激務
人事の仕事は繁忙期がはっきりしており、年5回ほど忙しさのピークがあるといわれています。
・採用活動(主に新卒採用)の時期
・新入社員の入社の時期
・社員の査定の時期
・社会保険算定の時期
・年末調整の時期
また、ここ数年はこれに加えて「インターン生の募集・受け入れの時期」も新たな繁忙期として加わっています。
採用活動では、候補者への対応を夜間や休日に行わなければいけないこともありますし、査定や年末調整では正確性を問われるために心労が溜まります。こうした繁忙期の過労・心労は、やりがいよりもつらさが勝りがちです。

人事のつらい仕事を改善するための方法
人事の仕事がつらいと感じる原因を見てきましたが、これらを改善するための方法はないのかと思うことでしょう。ここでは、つらい仕事の改善策について考えていきます。
ストレスの原因のリスト化
人事のつらい仕事を改善するために、まず個人単位の取り組みとして行うべきなのが「ストレスの原因のリスト化」です。
具体的には、自分が何に対してストレスを感じており、それは「自分だけで解決できるか」「組織単位でないと解決できない問題か」「解決自体が困難な問題か」を整理してみましょう。
上司などに相談するにしても、この原因のリスト化を行っておくことで焦点が定まりやすくなり、組織単位での対応も進めやすくなります。
思い切って休む
つらい仕事の受け止め方を変えるためには、思いきって休むことも大切です。これは個人の心掛けだけではなく、組織として休暇を取りやすい雰囲気を作るという話でもあります。誰が休暇を取りやすい雰囲気を作るかと言えば、それも人事部の役割でしょう。
「鶏が先か、卵が先か」のような話になってしまいますが、人事担当者としてしっかりと休むことができる雰囲気を作ることで、人事のつらい仕事を改善する糸口となるわけです。
アウトソーシングの活用
人事の業務は企業の中枢に関わるため、インハウスで進めるべきと考える方は少なくありません。しかしその一方で、研修を外部へ委託している企業が多いのも事実です。実際は、すでに多くの企業が人材育成という業務をアウトソーシングしているわけです。大手企業のなかには採用業務を一括でアウトソーシングしている事例もあります。
実際に矢野経済研究所の調査によれば、人事・総務関連業務のアウトソーシング市場の規模は右肩上がりで拡大しており、2023年度は前年度比5.9%増の11兆6,631億円(事業者売上高ベース)となっています。
参考:株式会社矢野経済研究所「2025人事・総務関連業務のアウトソーシングビジネス調査レポート」
人事担当者がつらいと感じている業務は、思いきってアウトソーシングしてしまうのも効果的な解決策となります。
人事管理システムの活用
人事の繁忙期の負担を改善するために、人事管理システムの活用も検討すべきでしょう。
人事管理システムには、人事の主要な業務に合わせて「人事管理」「労務管理」「採用管理」「給与管理」「人事評価管理」などの機能があり、それぞれの情報を管理したり、効率化してくれたりします。
アウトソーシングと同様、人事担当者がつらいと感じている業務に対して優先的に人事管理システムを導入し、負担を軽減することが望ましいといえるでしょう。

数字力を身につければ人事業務の「つらい」を減らせる
人員配置や人材育成などで人事データの活用を目指す企業が増えていますが、これらの業務を「つらい」と感じる人事担当者は少なくありません。数字やデータに対して苦手意識を持つビジネスパーソンは、意外と多いのです。
「ツールを導入して対応すればいい」と考える方もいますが、残念ながらツールを使えばボタンひとつでデータ活用ができるほど技術は進歩していません。人事データを活用するまでには、大きく「仮説設定」「データ収集」「分析と仮説の照合」の3ステップがあり、明確な目的意識を持ってデータを収集・検証していく姿勢が求められるのです。
では、人事担当者に対して統計研修やDX研修を実施すればいいのかといえば、そう簡単な話でもありません。データ活用がつらいと感じるような人にいきなり難解な研修を受けさせても、数字やデータに対する苦手意識が強まってしまうだけです。まずはそれぞれのレベルに合わせて、ビジネスにおける数字やデータの活用から慣れていくことが大切です。
弊社オルデナール・コンサルティングが提供する「ビジネス数学研修」は、こうした「数字・データに対する苦手意識」で悩むビジネスパーソンを対象としており、日々のビジネスシーンで役立つ数字力を向上させる取り組みとなっております。
例えば、「ここ数年、離職者が増加傾向にある」という課題に対処するとしましょう。この場面でのデータ活用の流れは、離職防止の策として「多様なキャリアパスを選択できるようにする」という仮説設定を行い、考案された仮説が有効であるかを証明するためにデータを収集し、分析していく……といった取り組みとなります。
こうした実践的な数字・データの活用方法を「入門編」から「実践編」の4段階で学んでいき、受講者のレベルに合わせてデータリテラシーを育んでいくことが弊社研修の強みです。 「人事業務の高度化・複雑化に置いてかれている」「データ分析・活用にまつわる研修を実施しても成果が上がらない」といった課題にお悩みでしたら、ぜひ弊社の研修プログラムをご活用ください。
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