研修内製化とは メリット・デメリットや外注すべき研修を解説

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研修内製化とは、外部の機関や人材に委託していた研修を社内で実施・完結させることです。

研修内製化のメリットとして「コストカット」「研修の改善がしやすい」「ノウハウの蓄積」などがある一方、デメリットとして「新たな知見を獲得できない」「社員の負担が増える」「講師育成の手間」などが問題となります。

今回は、研修内製化の状況やメリット・デメリット、外注すべき研修などについて解説していきます。

研修内製化とは

研修内製化とは、外部の教育訓練機関や人材に委託していた研修を社内で実施・完結させることです。

高度経済成長期頃の企業の研修は、ビジネスマナーを始めとした全ての社員が身につけるべき知識・スキルを外部研修で一括で学び、それぞれの専門的な職務についてはOJTで学んでいくことが一般的でした。

しかし、グローバル化や技術革新が進むことで、自社にはないノウハウの取得が次々と求められるようになり、外部研修の内容は段々と専門化・高度化していきます。また、年功序列や終身雇用といった日本型雇用システムが崩れるなかで、管理職や次世代リーダー向けの階層別研修の需要も高まってきました。

その一方で、少子高齢化による国内市場の縮小や原材料の高騰、世界的な経済変動を背景として、コストカット等を目的に研修内製化を進める企業も増えてきています。

各企業の研修内製化の状況

厚生労働省の「能力開発基本調査」では「実施したOFF-JTの教育訓練機関の種類」について調べられています。これによれば、回答の割合が最も高いのが「自社」で、正社員では75.2%、正社員以外では83.5%となっています。

次いで高いのが「民間教育訓練機関(民間教育研修会社、民間企業主催のセミナー等)」で、正社員では42.0%、正社員以外では20.6%という結果となっています。※複数回答

参考:厚生労働省「令和6年度能力開発基本調査」

この結果からも、研修を社内で完結させている企業の割合は非常に高いことがわかります。

研修内製化のメリット

研修内製化によって「コストカット」「研修の改善がしやすい」「ノウハウの蓄積」「講師担当者のスキルアップ」といったメリットが期待されます。それぞれ見ていきましょう。

コストカット

研修内製化を進める多くの企業がコストカットを目的としています。外部の教育訓練機関への依頼やスクール型研修への参加など形式によって相場は異なりますが、OFF-JTでは社員一人あたり数万円の費用が必要となります。

研修内製化を進めることにより、これらのコストをそのまま削減することができるわけです。

研修の改善・アップデートがしやすい

研修内製化のメリットとして、研修の改善・アップデートがしやすいことが挙げられます。

外部の教育訓練機関では提供されるプログラムが決まっているため、内容を細かく変更することはできません。仮に対応してもらえても、多くの場合は別料金が発生します。しかし研修を内製化すれば、社内からの要望や問題点をすぐにプログラムへ組み込むことができます。

また、実際に業務で直面するシチュエーションなどを設問に反映させることで、より実践的な研修プログラムにできることも研修内製化のメリットといえます。

ノウハウの蓄積

研修内製化には、人材育成に関するノウハウの蓄積という大きなメリットがあります。

外部研修に依存していると、社内に人材育成のノウハウが蓄積されません。またそれだけでなく、研修に参加した人材が離職してしまうと、社内から研修で得た知識・スキルまで失われることになります。

その点で研修内製化は、研修の内容とその効果を財産として積み重ねていくことができ、先々の人材育成にもつながっていきます。長く継続するほど蓄積が増え、より効果的な育成ノウハウとなっていくでしょう。

講師担当者のスキルアップ

研修内製化は、講師を担当する社員のスキルアップにつながります。研修を内製化するのであれば研修講師は社内から選任することになりますが、この経験がキャリアの棚卸しやインストラクションスキル向上の機会になるわけです。

例えば、ビジネス上のコミュニケーションに関する研修の講師を務めるためには、まず自分の知識・スキルを整理し、他の社員にわかりやすく伝えるために平易化する必要があります。これによって知識・スキルのアップデートが進むだけでなく、自身の仕事の改善点などに気付くきっかけとなるのです。

この経験は後々のキャリアアップ後にも活きるものであり、次世代リーダー候補の育成につながることが期待されます。

研修内製化のデメリット・問題点

研修内製化には「新たな知見を獲得できない」「社員の負担が増える」「講師育成の手間」といったデメリット・問題点があります。それぞれ見ていきましょう。

新たな知見・ノウハウを獲得できなくなる

研修内製化の最大の問題点は、新たな知見・ノウハウを獲得できなくなることにあります。社員が講師を務める性質上、もともと社内に存在する知識・ノウハウを他の社員に広める以上のことができなくなるからです。

研修には「社内にない専門的な知識や最新のノウハウを取り入れ、組織の競争力を高める」という目的もありますが、研修を100%内製化してしまうと新たな知識・ノウハウを獲得する機会が減少します。引いては組織の停滞につながる重大なデメリットといえるでしょう。

社員の負担が増える

研修内製化は多くの場面で、社員の負担を増やすことになります。研修プログラムの作成や会場の手配・設営など、それまで外部に任せればよかったものを全て社内で用意しなければいけないからです。

金銭的コストを削減できたとしても、人的・時間的コストが増大し、結局外部に任せたほうが安上がりだったという事例も少なくありません。

研修講師の質や講師育成の手間

研修内製化を進める際には、研修講師の質の確保や講師育成の手間が問題となります。

例えば「社内のエンジニアにツールの使い方を指導してもらう」という特別な準備のいらない研修内容だったとしても、講師には受講者への共感力や明瞭な指導力などが求められます。

より本格的な研修内容となればファシリテーションスキルや資料作成能力など、求められる能力がさらに増えていくため、「研修講師を育てるために外部研修が必要になる」という本末転倒な結果になりかねません。

また、講師に指名しても「人前に立つのは嫌」「業務で手一杯」などの理由で断れることもあるでしょう。

なお、研修講師に向いている人の特徴や講師に求められるスキルなどについては「研修講師とは 社内講師として失敗しないコツや外部講師への依頼について解説」でも詳しく解説しています。

外注すべき研修の特徴

「研修内製化のデメリット・問題点」のとおり、研修を100%内製化することにはリスクが伴います。研修内製化のメリットを活かすためには何でも内製化できると思わず、外注すべき研修を見極めることが大切です。

社内に知見がない・高度な内容についての研修

社内に知見やノウハウがない分野や、高度な内容についての研修は外注すべきです。とくに専門的な内容や最新の知見についての研修は、外部に依頼するしかありません。

仮に、ある分野の専門家が社内におり、初歩的な内容を他の社員に指導する場合でも内製化は避けるべきでしょう。専門的な内容を初心者にもわかりやすく伝えるのは非常に難しいミッションとなるからです。また、研修講師を任せることで本来の業務が疎かになってしまい、生産性が低下してしまう恐れもあります。

大人数を対象とした研修

大人数を対象とした研修は、優先的に外注すべきでしょう。社内でも実施できる一般的なスキル・知識に関する研修であっても、参加者が多いと管理や準備の難易度が一気に上昇するからです。

例えば、参加者が多いとそれぞれの理解度合いを管理することが難しくなるだけでなく、挙がってくる質問の数・種類も増えるため、経験の浅い社内の講師では対応が難しくなります。

また、研修資料の準備や会場の確保なども参加者が増えるごとに手間となります。このように、研修内製化は社内のリソースも勘案して進める必要があるわけです。

苦手意識の克服は研修のプロに任せよう!

研修を内製化した際によく問題となるのが、できない人に対する指導です。社内研修では基本的に「できる人」が講師を務めますが、彼らはプロの講師ではないので「なぜできないか」について考え、指導するスキルに欠けています。

近年はDX化やデータ活用などを目的として社内研修を実施する企業が増えていますが、データに対する苦手意識を持つ人と研修講師のあいだに隔たりがあるため、効果の乏しい研修になりがちです。

とくに「社内に新たな文化を根付かせたい」「社員の苦手意識を克服させたい」といった目的がある場合は、やはり外部の研修のプロに任せる必要があるでしょう。

弊社オルデナール・コンサルティングがご提供する「ビジネス数学研修」は、「ビジネスシーンで役立つ数字力の向上」を目的とした研修であり、とくに数字やデータに対する苦手意識の克服に力を入れております。

数字やデータに対して苦手意識を持つビジネスパーソンは多く、こうした社員にいきなりデータ分析や統計に関する研修を実施しても効果は上がりません。まずは「数字=難しい」という思いこみを払拭し、ビジネスにおける数字やデータの使い方に慣れていくことが大切なのです。

「社内でデータ分析などの研修を実施しているが、なかなか効果が出ない」「統計やAI活用の文化を根付かせたい」といった課題にお悩みでしたら、ぜひ弊社の「ビジネス数学研修」をご検討ください。