ポータブルスキルとは 具体例やテクニカルスキルの違いを解説
ポータブルスキルとは、業種や職種が変わっても持ち運びができる職務遂行上のスキルです。リサーチ力や分析力、コミュニケーション能力といった、どんな仕事に就いても役立つスキルが例として挙げられます。
抽象的な能力が多いため、ポータブルスキルの鍛え方に正解はありませんが、言語化や抽象化などを通して、自身の強み・弱みを明確にしていくことが大切です。
今回は、ポータブルスキルの具体的な内容や、ポータブルスキルとテクニカルスキルの違いを解説したうえで、その鍛え方についてもお伝えしていきます。
ポータブルスキルとは
厚生労働省ではポータブルスキルを「職種の専門性以外に、業種や職種が変わっても持ち運びができる職務遂行上のスキル」と示しています。簡単にいえば、どんな仕事に就いても役立つスキルといえるでしょう。
では、具体的にどのようなスキルがポータブルスキルとなるのでしょうか。厚生労働省ではポータブルスキルの要素として、「仕事のし方(対課題)」を5要素、「人との関わり方(対人)」を4要素で示しています。以下、具体例を交えて解説していきます。
参考:厚生労働省「ポータブルスキル見える化ツール(職業能力診断ツール)」
仕事のし方
・現状の把握
現状を知るための情報収集力(リサーチ力)と、手に入れた情報を分析する力を指します。ビジネスでは情報を手に入れて終わりではなく、そこから「次の一手」を考えるための分析力も求められます。
・課題の設定
情報収集とその分析結果を踏まえて、取り組むべき課題を設定する力です。時間やリソースは有限であるため、事業内容や仕事の進め方などを検討する際には、解決すべき課題を取捨選択することも重要なスキルとなります。
・計画の立案
設定した課題や、課せられた業務を遂行するための計画を立てる力です。指示通りに業務をこなすだけでなく、コストやゴール(納期など)を意識しながら方法論を考え、自律的に業務を遂行する力が業界・業種を問わず求められています。
・課題の遂行
実際に課題・業務を遂行するにあたって必要になる力です。具体的には、スケジュール管理や、計画上に生じた障害の排除、プレッシャーに耐える精神力などが問われます。
・状況への対応
予期せぬトラブルが発生したときの対応力や、リーダーシップを発揮して場を治める力です。ビジネスシーンではどれだけ念入りに立てた計画でも予想外の出来事が起こり得るため、臨機応変な対応だけでなく、ときには責任を持つ勇気が求められるのです。
人との関わり方
・社内対応
経営層や他部署とのコミュニケーション能力です。同じ組織であっても立場が異なれば対立する関係になることもあるため、社内調整をはじめとした求心力も求められます。
・社外対応
クライアントやステークホルダーとのコミュニケーション能力です。双方が納得できる利害の調整や合意の引き出し方といった、高度な駆け引きも求められます。
・上司対応
上司への報告や意見の出し方といったコミュニケーション能力です。業務の課題を分析し、改善案を挙げることなども含まれます。
・部下マネジメント
人材育成や人員配置、モチベーション管理といった、部下をマネジメントするにあたって必要となるスキル全般を指します。

ポータブルスキルとテクニカルスキルの違い
テクニカルスキルは業務遂行能力と訳され、与えられた職務を遂行するために必要な知識や技術を意味します。例えばエンジニアであれば、プログラミングスキルや論理的思考力がテクニカルスキルとなります。
どんな仕事に就いても役立つポータブルスキルとテクニカルスキルは、一見すると対極の存在に思えます。実際、エンジニアの例でいえば、プログラミング言語の知識をポータブルスキルとして役立てるのは難しいでしょう。ただ一方で、論理的思考力は職種や業種を問わず役立つスキルとなります。
このように、ポータブルスキルとテクニカルスキルは言葉の意味としては別物ですが、重なる部分もあるスキルとなります。

ポータブルスキルが注目される背景
これまでスキルアップは「手に職をつける」という言葉があるように、専門的な知識や技術を身につけることに重きが置かれていました。なぜその対極ともいえるポータブルスキルが注目されるようになったのかを解説していきます。
終身雇用制度の崩壊と人材の流動化
ポータブルスキルが注目されるようになった主たる背景として、終身雇用制度の崩壊が挙げられます。ひとつの会社でキャリアを終える時代ではなくなったことにより、どんな職場でも通じる能力を磨いておく必要性が高まったわけです。
また「人生100年時代」といわれるなかで、定年後の選択肢を増やす意味でもポータブルスキルの重要性が高まっています。
専門的技能の価値が暴落する可能性がある
ポータブルスキルが注目されるのは、急速な技術革新によって専門的技能の価値が暴落する恐れがあることも大きいでしょう。つまり、手に職をつけても、それがあっという間に「誰でもできる仕事」になってしまう可能性があるわけです。
なかでもAIの進化のスピードは著しく、次々と専門的技能がAIに代替されています。そんななかでAIに代替できない、あるいはAIを使う側でいるためのスキルとして、ポータブルスキルが求められているのです。

ポータブルスキルの鍛え方
ポータブルスキルは抽象的な能力が多いため、鍛え方もこれといった正解がありません。ここでは、ポータブルスキルを鍛えるために取り組むべきことについて解説していきます。
言語化する
ポータブルスキルを鍛える際にまず行うべきなのが、言語化です。尊敬する上司や、仕事ができる同僚が周囲にいたら、その人のどこが魅力的なのかを言語化してみましょう。
仮に、その尊敬する人の行動から「タスクを必ず5分前倒しで終わらせる」という特徴を見つけだしたら、それはどの業界でも通じる理想的なポータブルスキルといえるでしょう。
さらに、そこから「タスクを5分前倒しで終わらせるために何が必要なのか」を突き詰めて考えていけば、そのポータブルスキルを自分のものにする方法が明らかになります。
うまく言語化できないときは、思い切って本人に「仕事に取り組む前に心がけていること」「何を目標にスキルアップに取り組んだか」などを聞いてみるのもよいでしょう。
抽象化する
自分のなかから強みとなるポータブルスキルを見つけたいのであれば、自分の仕事や経験を抽象化してみましょう。
例えば、システムエンジニアとして「営業支援システムの要件定義と設計を担当した」という実績は、そのままではエンジニアの世界でしか評価されません。しかし、この実績を抽象化すれば「顧客へのヒアリングや要望の反映」「チームメンバーへの指導」といった、他業種・他職種でも通じるポータブルスキルを抽出できるはずです。
さらに、これらのポータブルスキルをもっと鍛えていきたいのであれば、別の仕事でも再現できるように言語化していくとよいでしょう。
異なる環境に飛び込む
ポータブルスキルを鍛えるためには、異なる環境に飛び込むことも大切です。
例えば未経験の職務に就いたときは、どれだけ猛勉強をしてもテクニカルスキルを身につけるには時間がかかります。とはいえ、そんななかでも自分にできる役割を探さなければいけません。まさにそんな場面で役立った知識やスキルこそが、ポータブルスキルなのです。
また、自分にできないことが多い環境だからこそ、上司や部下に頼る必要があります。自然とポータブルスキルにおける「人との関わり方」を伸ばすきっかけとなるでしょう。

ポータブルスキルを身につけたいなら「数字力」を伸ばそう
弊社が研修やオンラインサロンを通じてお伝えしている「数字力」は、ポータブルスキルとしてどんな業界・職種でも活きるスキルです。「把握力、分析力、選択力、予測力、表現力」の5つによって構成される数字力を身につければ、厚生労働省が定めるポータブルスキルの要素も効率良く伸ばしていくことができるでしょう。
例えば把握力です。弊社ではデータやグラフを読み解くプログラムを通じて、ビジネスで求められる現状把握の力を伸ばしていきます。仮に、グラフから「競合B社の売上が下がり続けている」と読み取ることに成功したら、ビジネスではその事実から「B社は業界から撤退するかもしれない」という仮説が立てられます。
さらに弊社の研修では、そうした仮説から具体的にどのようなアクションを取るかまでを考えていく訓練を行いますので、ポータブルスキルにおける「現状の把握」「課題の設定」「計画の立案」までを一気に高めることができます。
また弊社では「数字を活用したコミュニケーション能力の向上」も大切にしています。コミュニケーションのなかに数字を用いれば、曖昧さがなくなって共通認識を得やすくなります。これは「人との関わり方」の要素である「報告のし方」や「提案力」に直結し、社内外問わずコミュニケーションの質が向上するでしょう。
弊社事業の取り組みについて、少し興味を持っていただけたのではないでしょうか。弊社では企業向けの「ビジネス数学研修」だけでなく、個人の方でも気軽に数字力を学ぶことができるオンラインサロン「社会人の数字力向上サロン」も運営しております。弊社の研修プログラムやオンラインサロンについて「もう少し知りたい!」と思った方は、お気軽にお問い合わせフォームよりご連絡ください。
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