サバティカル休暇とは メリット・デメリットや企業の事例を解説

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サバティカル休暇とは、長期勤続している従業員に与えられる長期休暇のことです。もともとは欧米の文化であり、休暇の理由を問わず、年単位の休暇も取得できるという従来の日本企業にはない制度です。

社員の成長や離職防止といったメリットが期待されますが、導入にあたっては人手不足や職場復帰の問題など課題も多い取り組みです。

今回は、サバティカル休暇のメリット・デメリットや導入時のポイント、国内の導入事例などについて解説していきます。

サバティカル休暇とは

サバティカル休暇とは、長期勤続している従業員に与えられる長期休暇のことです。サバティカル休暇の特徴は、休暇の理由を問わず、1ヶ月〜1年以上の休暇を取得できることにあります。ただ、サバティカル休暇の内容は企業によって異なる部分が多く、全社員を対象としていたり、休暇の理由を指定してレポートの提出を求めたりする場合もあります。

サバティカルの語源はラテン語で、旧約聖書の「安息日」に由来します。サバティカル休暇は1880年代にアメリカの大学で教員を対象に広まったとされ、その後1990年代になって、ヨーロッパの企業のあいだで離職対策として導入されました。

国内においてサバティカル休暇の検討が始まったのは、2004年の「職業生活活性化のための年単位の長期休暇制度等に関する研究会報告書」(厚生労働省)からで、意外にも働き方改革法案が成立する14年も前から検討は始まっていました。

近年では、2022年6月に閣議決定された「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画~人・技術・スタートアップへの投資の実現~」にて、企業のサバティカル休暇の導入を促進することが明記されています。

サバティカル休暇のメリット

従業員にとってのサバティカル休暇のメリットは言うまでもありません。一方で、企業にとってもサバティカル休暇は「社員の大きな成長」「離職防止」といったメリットをもたらしてくれます。

社員の大きな成長につながる可能性

サバティカル休暇によってしか得られないメリットとして、社員の大きな成長につながる可能性が挙げられます。

従来の日本企業には、年単位の長期休暇という考え方自体がありません。そのため、海外留学や大学院進学といった高度な学習の機会を得るためには、会社を退職することが一般的です。

その点でサバティカル休暇は、従来の日本企業の体制では得られなかった成長の可能性を広げる制度であり、企業側にとっても高度な専門人材を育成する方法になり得るわけです。

離職防止・採用力向上

サバティカル休暇を導入することによって、離職防止や採用力向上につながります。

前述のとおり、社員が海外留学や大学院進学の夢を持っている場合、従来の日本企業の体制では離職を選ぶのが一般的ですが、サバティカル休暇制度があれば離職を引き留めることができます。介護や育児を理由にした離職に対しても、サバティカル休暇は効果を発揮するでしょう。

また、サバティカル休暇制度を福利厚生のアピールとして用いれば、企業イメージが高まり、優秀な人材を獲得しやすくなります。

イノベーションの創出

サバティカル休暇は、イノベーションの創出につながることが期待されます。

技術革新やグローバル化によってビジネスシーンは目まぐるしく変化しており、業務を処理しながらスキルアップを図るのは至難の業になりつつあります。

また、核家族化や単身世帯の増加などが進むことによって、育児や介護の問題を抱え込んでしまう社員が増えており、実は土日も休めていないという人も少なくありません。

こうした環境では働き手も日々すり減っていくばかりで、新しい発想や挑戦は生まれません。サバティカル休暇で一度リセットを図ることは、イノベーションの創出を目指すうえでも非常に効果的といえるでしょう。

サバティカル休暇のデメリット・課題

サバティカル休暇は働き方を大きく変える制度であり、そのぶん「人手不足の問題」や「職場復帰(ブランク)」といったデメリット・課題も多く生じます。

人手不足の問題

現在の日本において、サバティカル休暇導入の最大の障壁となるのが人手不足でしょう。

サバティカル休暇の主な対象者は長期勤続者ですので、社内においても相応のポジションに就いているはずです。そうした人材が長期で不在となれば、生産性の低下は避けられません。

この点について諸外国では、サバティカル休暇の実施中は代わりに失業者を雇い入れることがルール化されるなどの対策が取られています。しかしメンバーシップ型雇用が主流の日本においては、代わりの人材を雇っても同じ職務を果たせるわけではないため、非常に解決が難しい課題となります。

職場復帰・ブランクの問題

社員側にとっても深刻な課題となるのが、職場復帰時のブランクの問題です。とくにIT業界のように短いスパンでトレンドや業務内容が移り変わる業界では、復帰後の環境の変化についていけない恐れがあります。

サバティカル休暇制度は、復職後のフォロー体制までを含めて設計する必要があるといえるでしょう。

収入の問題

社員側にとって最大の課題となるのが、休暇中の収入面の問題です。諸外国のなかには、有給休暇のようにサバティカル休暇中も手当を出す例もありますが、多くの企業にとってあまり現実的な対応とはいえないでしょう。

サバティカル休暇の申請時にはライフプランの提出を義務化するなど、休暇中に社員の生活が破綻しないような仕組みづくりも欠かせません。

サバティカル休暇を導入する際のポイント

現状、サバティカル休暇に対応する法整備は進んでいないため、導入時には社内で独自にルール作りを進める必要があります。最後にサバティカル休暇導入時のポイントをお伝えします。

休暇を取得しやすい環境・雰囲気作り

サバティカル休暇を導入する際の基本であり、究極的な目標となるのが休暇を取得しやすい環境・雰囲気作りです。

サバティカル休暇はまだ浸透していない文化・制度であり、制度を導入しても同調圧力が働いてしまい、活用が進まない可能性のほうが高いでしょう。

そのため導入にあたっては、まず「長期休暇を取得することの後ろめたさ」を払拭することが求められます。これを実現するためには「休暇を怠慢としない文化」「同僚に負担をかけないで済む体制」などを作っていかなければいけません。

ルールの明確化

下の「企業の事例」でも紹介しますが、サバティカル休暇の内容は企業によって異なります。そのため、手当(支援金)の有無や休暇期間、社会保険に関しての取り決めなど、運用にあたってルールを明確化しておかなければいけません。

例えば、スキルアップを目的にサバティカル休暇を取得する場合、レポートの提出を義務づける企業もあります。こうした独自の運用を検討するのもよいでしょう。

復帰後のサポート

サバティカル休暇の課題として「職場復帰・ブランクの問題」を挙げたとおり、制度を導入する際には復帰後のサポート体制を整えておく必要があります。

休暇の期間や職務内容によっては、復帰後は異なる業務・部署に就くことも検討しなければいけません。また、スキルアップを目的としたサバティカル休暇の場合、身につけたスキル・知識を活かすことも想定すべきでしょう。

モデルケース自体が少ないため、復帰後のサポートに正解はありません。自社の状況や本人の意欲などを含めて、最適な復職のかたちを検討しましょう。

サバティカル休暇を導入している企業の事例

まだまだ日本国内では普及していないサバティカル休暇ですが、一部の大企業では導入が進んでいます。

LINEヤフー株式会社

LINEヤフー株式会社では、ヤフー株式会社時代の2013年よりサバティカル休暇を導入しています。

「自らのキャリアや経験、働き方をみつめなおし、考える機会をつくることで、本人のさらなる成長につなげること」を目的に掲げ、勤続10年以上の正社員を対象として、2~3ヶ月の範囲で休暇を取得することが可能となっています。

また、休暇中には「休暇支援金」として給与1ヶ月分が支給されることも、ヤフーのサバティカル休暇の大きな特徴といえるでしょう。

ANAグループ

ANAグループは、コロナ禍で逆風に晒されていた2021年より、サバティカル休暇を導入しました。

「自律的なキャリア育成」「ダイバーシティ&インクルージョン」「ワーク&ライフバランス」の推進を目的に掲げ、コロナ禍の時限措置として導入されました。

対象は全社員で年齢制限もなく、休暇中は無給となりますが、最大で2年間の休暇を取得できるという国内でも珍しい内容となっています。なお、休暇期間中の社会保険料は会社が負担し、1年以上の休暇を取得する場合は補助金として20万円が支給されます。

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