コンセプチュアルスキルとは 要素の一覧やスキルが高い人の特徴を解説
コンセプチュアルスキル(概念化能力)とは、正解がない状況・物事のなかで、本質を見極める能力です。
コンセプチュアルスキルは論理的思考や受容性といった複数の要素によって構成されており、コンセプチュアルスキルが高い人は「効率的な仕事ができる」「説得力がある」といった特徴を有します。
今回は、コンセプチュアルスキルの概要と要素の一覧を解説したうえで、コンセプチュアルスキルが高い人の特徴や向上させるための方法などをお伝えしていきます。
コンセプチュアルスキルとは
コンセプチュアルスキルとは、正解がない状況や物事のなかで、本質を見極める能力のことです。日本語では概念化能力と訳されます。
コンセプチュアルスキルが世に広まったのは、ハーバード大学教授のロバート・L・カッツが提唱した「カッツモデル」がきっかけです。カッツモデルは組織の役職を3階層に分類したうえで、それぞれの階層に求められる能力を示した理論であり、そのなかでコンセプチュアルスキルはトップマネジメント(社長やCEOなど)にとって重要なスキルとして定義されました。
※カッツモデルについては「カッツモデルとは スキルの一覧と活用のポイントを解説」で詳しく解説しています。
関連記事:「カッツモデルとは スキルの一覧と活用のポイントを解説」
その後、マネジメントの発明者としても有名な経営学者ピーター・ドラッカーによって、カッツモデルを発展させた「ドラッカーモデル」が提唱されます。
ドラッカーモデルにおけるコンセプチュアルスキルは、管理層のみならず一般社員層においても重要度が高いと解説されています。これには、カッツモデルの時代よりもビジネス環境の変化が急速かつ激しくなったことで、トップダウン型の指揮系統では対応が追いつかなくなり、現場の人間の自律性がより重要になったという背景があります。
近年とくにコンセプチュアルスキルの育成が重要視されるのは、このドラッカーモデルの考え方が根底にあるといえるでしょう。
コンセプチュアルスキルを構成する要素の一覧
コンセプチュアルスキルは単一のスキルを指すのではなく、複数の要素によって構成されています。ここでは、広義的にコンセプチュアルスキルに含まれる要素を10個紹介します。
論理的思考(ロジカルシンキング)
論理的思考とは、物事に矛盾のない筋道を立てて、整理して考える力のことです。ロジカルシンキングとも呼ばれます。
論理的思考にも帰納法や演繹法といった様々な手法があり、これらを身につけることで効果的に論理的思考力を伸ばすことができます。
・帰納法
複数の事象から共通点を見つけ出し、それを根拠として結論を出す手法
・演繹法
ルールや観察できる事実などを関連づけて、段階的に結論を出していく手法
水平思考(ラテラルシンキング)
水平思考とは、固定観念や常識に捕らわれず、自由な発想を行うための力です。ラテラルシンキングとも呼ばれます。
否定や客観、感情といった様々な視点に立ち、前提を疑いながら物事を捉えることによって、革新的なアイディアの創出につなげていきます。
批判的思考(クリティカルシンキング)
批判的思考とは、物事や事象を鵜呑みにせず、批判的に分析することで状況の改善を図っていく力です。クリティカルシンキングとも呼ばれます。
ここでいう「批判的」とは揚げ足を取るようなネガティブなものではなく、より深く物事を考えて本質を掴むための思考を指します。
多面的な視野
多面的な視野は、目の前の現象や物事を複数の視点から捉える力です。コンセプチュアルスキルにおいては、同僚やクライアント、消費者など、様々な人の立場から物事を捉えることの重要性を指します。
商品開発において、開発者側は改良と見ていた部分が消費者から見ると改悪になっていた……といった失敗は「多面的な視野の欠如」といえるでしょう。
柔軟性
柔軟性は、あらゆる状況に対して臨機応変に対応する力のことです。とくに近年は新型コロナウイルスによるパンデミックや生成AIの進化など、想像だにしない環境変化が立て続けに起こっているため、コンセプチュアルスキルのなかでも最も成長させるべき能力といえるでしょう。
受容性
受容性は、自身とは異なる価値観や個性を受け入れる力のことです。グローバル化やダイバーシティの推進などを受けて、あらゆる人材を受容できる力の重要性はどんどん高まっています。
しかし一方で、受容性は一朝一夕の研修で体得できるものではありません。先天的な受容性の高さは、得難いリーダーの資質といえるでしょう。
知的好奇心
知的好奇心は、未知のものを積極的かつ楽しみながら取り入れる姿勢のことです。「受容性」とも重なる部分が多く、高い行動力を合わせ持ちます。
知的好奇心は先天的な資質に寄るところが大きく、後天的に成長させるのは困難です。また多くの場合、年齢とともに減退する要素であることも注意すべきでしょう。
探求心
探求心は、物事の本質を追い求めて、調査や分析、研究に惜しみなく労力を割ける姿勢のことです。コンセプチュアルスキルにおいては、「知的好奇心」が未知のものを幅広く取り入れる姿勢であるのに対し、探求心は物事を深堀りすることができる姿勢と分けられています。
「物事は広く浅く」というスタイルの人がいるように、探求心も先天的な資質といえるでしょう。また、探求心を発揮する対象は人によって異なる点も留意しておく必要があります。
応用力・抽象化
応用力は、持っている知識やスキルを別の物事・分野に活用する力のことです。これには、様々な事象から注目すべき要素や法則性を見つけ出す「抽象化」の能力が深く関わります。
応用力は経験を重ねるごとに培われる側面があり、抽象化も訓練によって伸ばせるため、時間をかければ多くの人が身につけられる能力といえるでしょう。
先見力
先見力は、過去の経験や現在の状況を踏まえて、将来的な問題やニーズを予測する力のことです。
現在は「VUCAの時代」と呼ばれ、一ヶ月先のことであっても予測が難しくなっている一方で、データやAIを活用した予測技術は進化が続いています。先見力はデータリテラシーの有無によって、今後最も格差が生じてしまう能力といえるかもしれません。
コンセプチュアルスキルが高い人の特長
コンセプチュアルスキルが高いことによって、具体的にどのような場面で役立ち、活躍できるのでしょうか。コンセプチュアルスキルが高い人に表れる特長を通じて、解説していきましょう。
効率的かつ効果的な仕事をする
コンセプチュアルスキルが高い人は、効率的かつ効果的な仕事をします。様々な視点から物事を観察し、成功の法則性などを分析したうえで課題に取り組むことから、その仕事ぶりは自然と効率的で、最も効果を発揮するものとなるのです。
根拠が明確で説得力がある
コンセプチュアルスキルが高い人は、話や提案の根拠が明確で、説得力があります。伝えたいことが論理的に整理されているためわかりやすく、研究熱心であることからも信頼性のある根拠を提示できるためです。
発想力が高い
コンセプチュアルスキルが高い人は論理的であることから、堅実で常識的な発想力と思われがちです。しかし「要素の一覧」で見てきたとおり、固定観念に捕らわれずに様々な視点からアイディアを生み出すという能力を持っていることから、クリエイティブな仕事でも力を発揮できます。
コンセプチュアルスキルを向上させる方法
コンセプチュアルスキルは複数の要素が絡み合っているため、トレーニングの方法も様々です。ここでは、コンセプチュアルスキルを向上させるための基本となる方法をお伝えします。
抽象化の訓練
コンセプチュアルスキルを向上させるためには、まず抽象化の訓練を行いましょう。抽象というと「抽象的な言い方」といったネガティブな意味合いで用いられることが多いですが、前述のとおり抽象化は、様々な事象から注目すべき要素や法則性を見つけ出す取り組みを意味します。
具体的には、成功した仕事を細分化してどのような行動で構成されていたかを探ったり、これまで難航した問題の共通点を探ってみたり、「本質」を掴むための訓練に取り組んでみましょう。
具体化の訓練
抽象化の訓練とは正反対の取り組みになりますが、具体化の訓練を行うこともコンセプチュアルスキルの向上には欠かせません。
例えば、なぜ成功(失敗)したのか自分でもわからない取り組みについて、成功(失敗)に至った原因や背景を探ったり、過去の成功(失敗)体験との類似性を探ったりして、言語化や法則化を試みてみましょう。
表現の訓練
具体化の訓練の延長として表現の訓練を行うことで、実際のビジネスシーンでも役立つ成果物が生み出せます。
例えば、具体化の訓練を通じて言語化したものをマニュアル化して、第三者に伝えるプロセスを踏んでみましょう。他の人にもわかりやすい表現を心がけることにより、さらに具体化が洗練され、「多面的な視野」の獲得にもつながります。実際にマニュアルができあがれば、ビジネス上の価値も生み出せるので一石二鳥の訓練となるでしょう。
コンセプチュアルスキルを育む「ビジネス数学」
「ビジネス数学」と聞くと、多くの方はテクニカルスキルの向上につながる研修を想像されます。
しかし弊社オルデナール・コンサルティングの研修は「把握力、分析力、選択力、予測力、表現力」によって構成される「数字力」の向上を目指しており、コンセプチュアルスキルの育成にもつながる内容となっています。
また、単に能力向上を目指すのではなく「実務で活きる能力向上」に特化し、営業報告資料や事業計画書などの作成に活きる数字力向上プログラムをご用意しております。数字やデータをコミュニケーションに活かすことができれば、コンセプチュアルスキルが高い人の特徴として挙げた「根拠が明確で説得力がある」も体現できるでしょう。
管理職の能力向上や自律的な若手社員の育成にお悩みでしたら、ぜひ弊社の研修プログラムをご活用ください。
お問い合わせはこちらから