初心者必見!財務諸表の読み方

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財務諸表とは、企業の一会計期間の財務状況をまとめた書類のことです。財務諸表には馴染みのない言葉と細かい数字が並んでいるため、多くの初心者は「どこから手をつければいいのかわからない」と途方に暮れてしまいがちです。

今回は、経理部門以外の一般的なビジネスパーソンに向けて、財務三表からわかることや財務諸表を読み取るためのコツについて解説していきます。

財務諸表とは

財務諸表は一般的に決算書とも呼ばれ、企業の一会計期間の財務状況をまとめた書類のことです。投資家や債権者(金融機関など)といった利害関係者に向けて、経営状態を開示する目的で作成されます。

なお、財務諸表は以下の5つの書類で構成されます。

・貸借対照表(BS)

・損益計算書(PL)

・キャッシュフロー計算書(CS)

・株主資本等変動計算書(SS)

・附属明細表

このなかでもとくに重要なのが、貸借対照表(BS)、損益計算書(PL)、キャッシュフロー計算書(CS)の3つによって構成される「財務三表」です。

初心者のビジネスパーソンが財務諸表を学ぶべき理由

多くのビジネスパーソンは「財務諸表=経理部門の仕事」と捉えているのではないでしょうか。営業や販売部門は売上目標などが設定されるのでまだ財務に馴染みがあるほうですが、開発や管理部門は自身の仕事と利益目標がつながりにくいため、関係のない話に思えてしまうはずです。

その一方で、「一般社員にも財務諸表について理解してほしい」と考える企業は少なくありません。週刊ダイヤモンドが実施した調査によれば、約3割の企業が「一般の従業員であっても、財務三表を理解していて欲しい」と回答しています。

参考:『週刊ダイヤモンド 2021年6月26日号「決算書100本ノック!2021夏」』

「会計やファイナンスの話は難しい」と苦手意識を持つ人は多いですが、役職が上がるとそうも言っていられません。管理職になれば部門の業績目標の作成などが求められるため、自社の業績を読み解く力が不可欠となります。管理職になってから「数字は苦手だから……」とは言っていられないのです。

また、例えば営業職の方であれば商談時にお客様企業の財務諸表から経営課題を読み解くことができれば、効果的な提案を行うことができるのではないでしょうか。この様に、経理部門以外の方であっても、財務諸表を読み解く力を身に付けることで実務に活用することが出来ます。

財務三表からわかること

財務諸表に含まれる財務三表を読み解くことで、どのような情報が得られるのでしょうか。ここでは、財務三表からわかることについて解説していきます。

貸借対照表(BS)

貸借対照表(BS:Balance sheet)には企業がどうやってお金を集めて、何に投資をしたかが記載されており、企業の財政状態がわかります。

初心者が貸借対照表で着目すべきなのが、自己資本比率です。自己資本比率とは、総資産のうち自己資本で占める割合のことです。そもそも総資本は、金融機関からの借入金等である他人資本と、株主から集めた資金等である自己資本によって構成されます。

他人資本は返済の義務があるため、総資産のうち他人資本で占める割合が高ければ(自己資本比率が低い状態)、経営を他人の資本に依存する不安定な状況といえるわけです。

損益計算書(PL)

損益計算書(PL:Profit and Loss Statement)は企業の利益と損益についてまとめられており、企業の経営に関する成績がわかります。

初心者が損益計算書で理解すべきなのが、以下の3つの利益についてです。ここから、その企業がどれくらいの収益・利益を上げて、どれくらいの費用を使っているのかがわかります。

・売上総利益

一般的にいう「粗利」。売上高から売上原価(仕入れや製造にかかった費用)を引いたもの。

・営業利益

企業が本業によって得た利益のことで、売上総利益から販売費と一般管理費を引いて計算します。

・当期純利益

一般に最終利益や純利益と呼ばれる、会社の最終的な利益。営業利益から営業費用や税金などを差し引いて計算します。

キャッシュフロー計算書(CS)

キャッシュフロー計算書(CS:Cash Flow Statement)には、営業活動・投資・財務にまつわる現金の流れがまとめられており、企業の資金の状態がわかります。

初心者はキャッシュフロー計算書の「営業キャッシュフロー」「投資キャッシュフロー」「財務キャッシュフロー」から、会社の状態や経営者の意図・戦略を読み取ることを目指しましょう。

・営業キャッシュフロー

営業キャッシュフローがプラスであれば、業績が良い証です。新規の投資や借入金の返済を行う力があり、健全な状態にあるといえるでしょう。

一方で、営業キャッシュフローがマイナスの場合は、業績が良くない状態です。営業活動を行うほど、会社のキャッシュが減っている状況にあるからです。ただ、業績拡大期においては一時的に支出が増えて営業キャッシュフローがマイナスに転じることもあります。

・投資キャッシュフロー

投資キャッシュフローがマイナスなのは、事業拡大を目指して設備投資などにお金を使っていると読みとれます。

逆に投資キャッシュフローがプラスなのは、実はあまり良い状態ではない可能性を示唆します。投資キャッシュフローがプラスになるのは、保有する株式や土地などの資産を売却することでお金を得たためです。「営業キャッシュフローがマイナスで、投資キャッシュフローがプラス」の状態を例えるなら、給料が入って来ないため、身の回りのものを現金化して生活しているようなものなのです。

・財務キャッシュフロー

財務キャッシュフローがマイナスの場合は、借入金の返済などが進んでおり、会社の状態が健全であることが読みとれます。

一方、財務キャッシュフローがプラスなのは、金融機関から資金調達を行なった状態です。ただし、財務キャッシュフローからだけでは、資金調達の意図までは読みとれません。

設備投資を目的に資金調達をしたのであれば、財務キャッシュフローのプラスは戦略的に行われており、ネガティブな借入金ではありません。財務キャッシュフローの評価は、営業・投資キャッシュフローと合わせて分析する必要があります。

財務諸表を読むことが難しく感じる理由

数字に苦手意識を持つビジネスパーソンは多く、ほとんどの方が会計やファイナンスを必要以上に難しく感じています。何が財務諸表を難しく感じさせるのか考えてみましょう。

細かい数字がたくさん並んでいる

財務諸表には細かい数字がたくさん並んでいるため、どこから、どのように読めばよいかがわかりにくいという問題があります。数字が苦手な人は、細かな数字がたくさん並んでいるとより難しさを感じるため、財務諸表への苦手意識が強まる傾向にあります。

日常で使わない言葉がある

財務諸表の勉強に挑戦し、「流動資産」「固定負債」「純資産」といった言葉に馴染めず挫折した人も多いのではないでしょうか。弊社の研修を受講された方からも「損益計算書は何となく理解できるが、貸借対照表とキャッシュフロー計算書はわからない」という声がよく挙がります。

実際、損益計算書は、売上や利益が各部門の予算として設定されることも多いため、まだ一般的なビジネスパーソンにも馴染みのある内容となっています。

一方で、貸借対照表の「固定負債」や「利益剰余金」といった科目は現場で見かけることが少ないため、難しさを感じやすい傾向があると思われます。

財務諸表を読むためのコツ

やはり財務諸表には、どうしても難しく感じてしまう部分があります。そこで、一般のビジネスパーソンが財務諸表を読み解くためのコツをお伝えします。

完璧を求めない

財務諸表を読むために最も重要なことは、完璧を求めないことです。財務諸表を理解しようと1円単位で正確に数字を把握しようとする方は多いですが、それは大きな間違いです。

確かに財務諸表を作る経理部門には、1円単位で正確な数字が求められます。一方で、それ以外の部門の方には財務諸表を「読み解く力」があればよいため、正確な数字を求める必要はありません。財務諸表を「作る」能力と、「読み解く」能力は別物だからです。

ざっくりと掴んで行動につなげる

一般のビジネスパーソンに求められることは、財務諸表からポイントをざっくりと掴み、次の行動につなげるスキルです。

営業部門の方が財務諸表を読み解く場合で考えてみましょう。営業活動でわざわざ「御社の昨年売上は、12億5,891万1,056円でしたね」と言うことがないように、細かな数字まで把握する必要はありません。重要なのは「御社の昨年売上は約12億円と一昨年から減少傾向にあるため、改善が必要です」と、次のアクション(提案)につなげることです。

一般のビジネスパーソンは、財務諸表をざっくりと自身の業務に役立つ範囲で読み解ければよいのです。

まとめ

財務諸表は企業の一会計期間の財務状況をまとめた書類であり、一般的なビジネスパーソンの多くは、財務諸表を「縁のないもの」「難しくて手を出せないもの」と考えているのではないでしょうか。実際、財務諸表には馴染みのない言葉と細かい数字が並んでおり、難しく感じるのも無理はありません。

しかし、経理部門以外のビジネスパーソンであれば財務諸表のすべてを理解する必要はなく、求める情報を読み解く能力があればよいのです。初心者はまず自身の業務に関連する範囲で、ざっくりと財務諸表について学んでいきましょう。

初心者向けの「”ざっくり”学ぶ財務諸表」研修

数字を苦手とするビジネスパーソンが財務諸表についてしっかり学ぼうとすると、ほとんどの方が途中で挫折してしまいます。ここまで解説してきたとおり、初心者は肩肘を張らずに”ざっくり”と財務諸表を学ぶことが大切です。

弊社が企画運営する「ビジネス数学研修」では、一般のビジネスパーソンが財務諸表を学ぶための研修プログラムとして「”ざっくり”学ぶ財務諸表」をご用意しています。

研修紹介動画:「”ざっくり”学ぶ財務諸表」

まずは数字や会計に対する苦手意識を克服し、会社の数字に興味を持つことから始めてみましょう。財務諸表を自分の仕事に活かせることに気づければ、一気に解像度が上がって学ぶことが楽しくなるはずです。