業務改善の進め方 フレームワークとポイントを解説

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業務改善とは、「ヒト・モノ・カネ」などの社内リソースを商品やサービスといった「価値」に変換する行程で、発生している無駄や課題を見つけだしてより良い状態へと高めることです。

今回は業務改善の進め方を5つのステップで解説したうえで、業務改善に活用できるフレームワークをご紹介します。

業務改善とは

企業活動における業務とは「ヒト・モノ・カネ」、あるいは「情報」や「時間」などを用いて、顧客が望む商品やサービスを提供することです。つまり業務改善とは、社内のリソースを商品やサービスといった「価値」に変換する行程で生じる無駄や課題を見つけだし、より良い状態へと高めることと言えるでしょう。

業務改善の方向性はひとつではなく、効率化やコストカット、人員の配置転換など様々な方法があります。そのため、課題の種類や社内の状況に合わせて適切な施策を考案しなければ、業務改善の成果は思うようにあがりません。しっかりと業務改善の進め方を理解しておきましょう。

5ステップでわかる業務改善の進め方

業務改善の進め方について、5つのステップで順を追って解説していきます。

業務の全体像を可視化・把握する

業務改善の最初のステップとして、業務の全体像を可視化して把握することから始めましょう。業務を担当する部署・人員、使用しているツール・システム、部署間の連携など、様々な観点から把握を進めていきます。

方法としては、アンケートやヒアリングが一般的です。ただ、業務の無駄や問題点を探るためにヒアリングを行うと、そのまま評価につながると懸念され、本音を聞き出すことが難しくなります。匿名性のアンケートを活用するなど、工夫を凝らしましょう。

また、社員の能力や経験、資格などをスキルマップとして可視化し、定量的に把握できるような体制を整えておくことも大切です。なお、スキルマップについては「人材育成を加速させるスキルマップとは」で詳しく解説しています。

関連記事:「人材育成を加速させるスキルマップとは」

課題の抽出

業務の全体像を掴めたら、課題の抽出を行います。課題は多角的に捉えていくことを徹底しましょう。例えば、業務上の遅延を洗い出す際には、「社員のスキル不足」「ツールの性能が低い」といった表層的な結論に落ち着きがちです。

しかしここで立ち止まらず、周辺の状況に問題点がないかなどを見直していく必要があります。視野を広げることにより、「担当者へのタスク過多」「関連部署の連携不足」といった原因が見つかりやすくなります。

またこのとき、課題を「コミュニケーション」「マネジメント」といった属性ごとに分類しておくと、後々に改善策を検討しやすくなります。

このフローで正しく課題を抽出しないと、その後の取り組みが無駄になってしまうので念入りに取り組みましょう。

改善計画

課題の抽出が済んだら、改善のために必要な施策・取り組みをタスクとして設定していき、改善計画として組み立てていきます。

具体的には、タスクごとに影響の大きさや解決の難易度を測定し、優先順位を決めてからスケジュールを立てていきます。基本的には、解決の難易度が低く、影響の大きいものから処理していくとよいでしょう。

改善の実践

改善計画を立てたら、いよいよ実践です。改善策を実行する際は、同時に複数のタスクを走らせず、一つひとつ取り組むようにしましょう。業務の内容や流れを変えると、往々にして予期せぬ問題が発生するためです。

また、施策の実践中は、進捗状況とその効果をモニタリングすることも大切です。これは後々の効果測定で用いる重要なデータとなります。

効果測定

改善策を実行したあとは、必ず効果測定を行いましょう。課題が解決されたのかを確認するのは当然ながら、想定と結果の比較や、別部門にしわ寄せが発生していないかなども確認していきます。

改善に成功した場合はその取り組みをノウハウとして、他の業務の改善にも活かしていきましょう。

業務改善に役立つ代表的なフレームワーク

業務改善には、様々なフレームワークが考案されています。「業務改善といっても、何から、どのように手をつけたらいいかわからない」という方に向けて、業務改善の基本となるフレームワークを2つ紹介します。

PDCA

PDCAはビジネスシーンのみならず、目標達成や行動改善のために広く活用されるフレームワークですが、もともとは品質管理・業務改善のために提唱されたモデルです。実は上で解説した「業務改善の進め方の5ステップ」も、PDCAサイクルをベースとしています。

・Plan(計画)

Plan(計画)では、取り組みの目標を設定し、目標達成に必要なアクションプランを作成していきます。

・Do(実行)

Do(実行)は、Planで取り決めたアクションプランを実行するフェーズです。このとき、アクションによって生じた変化やかかった時間など、定量的に評価できる情報を記録しておくことが大切です。

・Check(評価・測定)

Check(評価・測定)では、「アクションによって目標を達成できたか」「プラン通りに進行できたか」などを評価していきます。このとき重要になるのが、成功要因または失敗要因について分析を行うことです。

・Action(改善)

Action(改善)では、Checkによって得られたデータを分析して、次のアクションプランを検討していきます。計画の変更・改善のみならず、中止を含めて柔軟にサイクルを回していくことが大切です。

ECRS

ECRS(イクルス)は、「Eliminate(排除)」「Combine(結合)」「Rearrange(入れ替え・再配置)」「Simplify(簡略化)」の頭文字で構成される、業務改善のフレームワークです。主に課題の抽出と改善の方向性を決める際に役立ちます。

なおECRSは、頭文字の並びのとおりに進めていくと効果的です。

・Eliminate(排除)

最初に行う「Eliminate(排除)」では、業務のなかで廃止または省略できる行程がないかを検証します。金銭的・人的コストを用いずに実行できる取り組みであり、廃止・省略した分のリソースがまるまる浮くので、その効果も明快です。

例としては「形式的に行っている定例会議の廃止」「作成の労力に見合っていない報告書の省略」などが挙げられます。

・Combine(結合)

次に行う「Combine(結合)」では、社内に存在する似通った業務をひとつにまとめることができないかを検証します。Eliminateと同様に業務自体を省略できる取り組みなので、やはり効果は明快です。

例としては「一次面接と二次面接でほとんど同じ内容を質問していたため、1回にまとめる」「部門ごとに行っていた研修を合同で行う」などが挙げられます。

・Rearrange(入れ替え・再配置)

「Rearrange(入れ替え・再配置)」では、担当者を配置転換したり、アナログな設備をICTツールに入れ替えたりすることで効率化を図れないかを検証します。上の2つの取り組みに比べてコストがかかるため、実施の際にはある程度の根拠が求められます。

例としては「採用面接を二次面接までweb会議ツールで行う」「新人研修を外部講師に委託する」などが挙げられます。

・Simplify(簡略化)

「Simplify(簡略化)」では、省略や結合が難しい業務について、テンプレート化や自動化ができないかを検証します。業務をテンプレート化・自動化する際に大きな人的・金銭的コストが発生しますが、その後の業務を大幅に効率化させることが期待できます。

例としては「毎年作成している資料をテンプレート化する」「データ入力をシステム化して、入力の手間を最小限にする」などが挙げられます。

業務改善を進める際の2つのポイント

業務改善を進める際に注意すべき2つのポイントについて解説します。

「QCD」を意識する

QCDは、Quality(品質)、Cost(コスト)、Delivery(納期)の頭文字からなる言葉で、製造業における重要な要素として知られています。業務改善においては、この3つの要素をより高いレベルに押し上げることが基本的な指針となります。

QCDの最大の特徴は、それぞれの要素が相互に作用して成り立っている点です。「コストを下げれば品質が落ちる」「品質を落とせば納期を短くできる」といった具合にそれぞれが影響を受け合うため、3つの要素を同時に向上させるのは非常に困難です。

そのため、業務改善を進める際はあらかじめ目的を明確にしておき、目標達成に最適なQCDバランスを目指すことがポイントになります。

例えばコストカットが目的であれば、品質への影響をどの程度まで許容するかを決めておく必要があります。逆に品質向上を目指すのであれば、コストや時間(納期)をどこまで割けるかを決めておくことで、具体的な改善策が見えてくるでしょう。

ITツールにアンテナを張る

効果的なITツールやシステムを導入すれば、劇的に業務改善が進みます。とくに近年はAIの進化によって、目を見張るスピードで新たなITツールやシステムが誕生しているため、常にアンテナを張り巡らせておく必要があります。

ただ注意しておきたいのは、ITツールやシステムを導入しても社員が使いこなせなければ意味がないということです。使いやすさや業務内容とのマッチ度、コストパフォーマンスなどを勘案して導入を検討しましょう。

まとめ

業務改善の進め方は、業務の全体像の把握、課題の抽出、改善計画の立案、実践、効果測定と、言葉にするだけなら難しいことではありません。

しかし、自社に存在するあらゆる取り組みが対象となり、企業活動が続く限り改善の余地は生まれるため、業務改善には終わりがありません。そのため、短期間での改善を目指すばかりではなく、長期的に成果を観測していく姿勢も重要となります。

また、DX化のような劇的な変化をもたらす施策は、社員の反応にも目を向ける必要があります。場合によっては、社員がDX化に対応できるように「データリテラシー研修」を行うなど、段階的な変化を促す計画作りも大切にしましょう。

業務改善に必要なスキルは「数字力」

現代の複雑化する業務を改善するためには、とくに「Check(評価・測定)」や効果測定の精度を上げなければいけません。しかし、測定や分析の重要度が上がる一方で、多くのビジネスパーソンはデータを表層的にしか見ることができないため、せっかく集めたデータが持ち腐れになる事例が後を絶ちません。

つまり、業務改善を進めるためには数字やデータから正しく情報を読み取り、アクションプランを立案できる「数字力」が必要となるのです。

弊社オルデナール・コンサルティングでは、「数字に苦手意識を持つビジネスパーソン」を対象とした、実務で活きる「ビジネス数学研修」をご提供しております。

弊社の研修プログラムは、数字やデータの扱い方を「入門編」から「実践編」の4段階で学んでいき、受講者のレベルに合わせてデータリテラシーを育んでいきます。数字やデータから改善策を立てる力が身につけば、業務改善の精度が一気に向上するでしょう。

「業務改善でなかなか成果が出ない」「データからアクションプランを立案できる人材を増やしたい」といった課題にお悩みでしたら、ぜひ弊社のビジネス数学研修をご検討ください。

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