アカウンティングとは その目的やファイナンスとの違いを解説
アカウンティングとは、企業の経済活動を数字で記録・管理することです。その目的としては「経営状態を正確に把握する」「自社の課題の明確化」「ステークホルダーへの報告・説明」が挙げられます。
ファイナンスと混同されることもありますが、ファイナンスは「未来へのお金」を扱うのに対し、アカウンティングは「過去・現在のお金」を扱う点が異なります。
今回は、アカウンティングの目的やファイナンスとの違い、アカウンティングを理解するうえで欠かせない財務三表や企業会計原則の概要について解説していきます。
アカウンティングとは
アカウンティング(accounting)は直訳すると「会計・経理」で、ビジネスシーンでは「企業の経済活動を数字で記録・管理すること」という意味で用いられます。
企業が経済活動を行うということは、そこには提供する物やお金の流れが存在します。アカウンティングはこうした物やお金の流れを数字として記録・管理し、経営状態を可視化する目的で行われます。
アカウンティングとファイナンスの違い
アカウンティングに似た言葉として、ファイナンスがあります。ファイナンスには「財源・財務・金融・資金調達」といった幅広い意味があるため混同されがちですが、アカウンティングは「過去・現在」を扱うのに対し、ファイナンスは「未来」を扱う点が明確に異なるといわれています。
例えば「資金調達」ですが、なぜ企業が資金を調達するのかといえば、その資金によって企業の価値を高めていくために投資する必要があるからです。ファイナンスはこの「資金をどうやって集めるか」「どこに投資をするか」などについて考える取り組みなのです。

アカウンティングの目的
アカウンティングの目的として「経営状態を正確に把握する」「自社の課題の明確化」「ステークホルダーへの報告・説明」が挙げられます。それぞれ解説していきましょう。
経営状態を正確に把握する
アカウンティングは、企業の経営状態を正確に把握するために欠かせません。
私たちの日々の暮らしでも給料が入ってきた後、家賃や食費、光熱費など様々なお金が出ていきます。それは会社も基本的に同じであり、物やサービスを提供することでお金を得る一方、人件費や仕入れ料、オフィスの賃料といった様々なお金が出ていきます。
ただ、家庭では家計簿をつけなくてもなんとかなりますが、企業活動ではお金や物の流れが多種多様であるため、それらを数字で記録し、経営状態を可視化する必要があるのです。これにより事業戦略などの重要な意志決定を行う際も、勘や経験といった抽象的な根拠に頼らず、数字に基づいたスピード感のある経営判断を下すことが可能となります。
自社の課題の明確化
アカウンティングの「経営状態を正確に把握する」は、自社の課題の明確化にもつながってきます。
例えば、事業計画の進捗や年間予算の達成状況などの実績を定量的に把握することで、誰の目から見ても公平に現状把握ができます。遅れや不足が明らかになれば改善策も立案しやすくなりますし、どこにリソースを投下すればよいかも明確になります。
ステークホルダーへの報告・説明
アカウンティングは、ステークホルダーへの報告・説明のために実施されるものでもあります。ステークホルダーは「利害関係者」を意味し、具体的には株主や取引先、従業員といった、自社の利害の影響を直接的に受ける人たちを指します。
なかでも株主や銀行などは投資・融資を決める際の判断材料として、必ず会社の経営状態を確認します。アカウンティングはステークホルダーからの信頼を獲得するために必要な手段と言い換えることもできるでしょう。

アカウンティングに欠かせない財務三表
アカウンティングを理解するためには、財務三表……貸借対照表(BS)、損益計算書(PL)、キャッシュフロー計算書(CS)の内容や見方を知っておく必要があります。
貸借対照表(BS)
貸借対照表(BS:Balance sheet)は企業の財務状態を示す書類で、これを読み解くことで企業がどうやってお金を集めて、何に投資をしたかがわかります。
例えば貸借対照表の自己資本率を見ることで、経営状態の健全さがわかります。企業の総資本は金融機関からの借入金等である「他人資本」と、株主から集めた資金等である「自己資本」によって構成されており、他人資本が占める割合が高いと「経営を他人の資本に依存する不安定な状況」となるわけです。
損益計算書(PL)
損益計算書(PL:Profit and Loss Statement)は企業の経営成績を示す書類で、利益と損益についてまとめられており、以下の5つの利益の項目があります。
・売上総利益
・営業利益
・経常利益
・税引前当期純利益
・当期純利益
これらを読み解くことで、その企業がどれくらいの収益・利益を上げて、どれくらいの費用を使っているのかがわかります。
キャッシュフロー計算書(CS)
キャッシュフロー計算書(CS:Cash Flow Statement)は企業の資金の状態を示す書類で、営業活動・投資・財務にまつわる現金の流れがまとめられています。
「営業キャッシュフロー」「投資キャッシュフロー」「財務キャッシュフロー」それぞれを絡めてお金の流れを読み解くことで、業績や設備投資、借入金の返済などの状況がわかります。

アカウンティングのルール「企業会計原則」
企業会計原則は1949年に大蔵省によって公表された、財務諸表を作成する際に守るべき原理原則です。企業会計における慣習のなかで公正妥当とされる基準をまとめたものであり、法的な拘束力はありませんが、現在においても企業会計に携わるうえで知っておきたい知識となっています。
企業会計原則は「一般原則」「損益計算書原則」「賃借対照表原則」の3つから成り立っており、ここでは企業会計原則の最高規範とされる「一般原則」の7つの原則について解説していきます。
真実性の原則
真実性の原則は、企業会計にまつわる報告は真実でなければならないという原則であり、企業会計原則の最上位に位置づけられています。簡単にいえば、不正や不当な利益操作があってはならないということです。
ただ、ここでいう真実は絶対的ではなく「相対的事実」が要請されています。例えば、固定資産の減価償却の算出法は「定額法」と「定率法」があり、どちらの基準を選ぶかで金額が変化します。企業会計においては真実がひとつであるとは限らないため、相対的事実という考え方が採用されているのです。
正規の簿記の原則
正規の簿記の原則は、「網羅性」「立証性」「秩序性」の要件を備えた、正確な会計帳簿の作成を要請するものです。
複式簿記と明記されているわけではありませんが、3つの要件を満たすためには一般的に複式簿記であるべきと解釈されます。
資本取引・損益取引区分の原則
資本取引・損益取引区分の原則は、資本を増減させる取引と、収益や費用が生じる取引は明確に区分しなければならないという原則であり、とくに資本剰余金と利益剰余金を混同しないよう要請しています。
資本取引は株式の発行など、損益取引は商品の売買などを指します。
明瞭性の原則
明瞭性の原則は、ステークホルダーの誤解を招かないよう、わかりやすい明瞭な表示や情報開示を要請するものです。
上で挙げた固定資産の減価償却方法を例にすると、注記としてどちらの方式を採用したのか明記することが求められます。
継続性の原則
継続性の原則は、会計の方針・処理の方法は原則として変更せず、毎期継続して適用するという原則です。
例えば、固定資産の減価償却方法を毎期ごとに変更することは認められません。恣意的な利益操作が可能となり、ステークホルダーに対しても誤解を招く行為となるからです。
保守主義の原則
保守主義の原則は、リスクや収益の反映は保守的に行うことと要請するものです。
簡単にいえば、プラスの項目は慎重に時間をかけて計上し、マイナスの項目は早めに漏れのないよう計上することが求められます。とはいえ、これはあくまでも「真実性の原則」を歪めない範囲で要請されるものとなります。
単一性の原則
単一性の原則は、目的に合わせて異なる形式の財務諸表を作成する場合でも、もとになる会計帳簿は1つでなければならないという原則です。二重帳簿を禁止する原則と言い換えてもよいでしょう。
財務諸表は金融機関へ提出するためのもの、税申告のためのものなど、異なる形式で作成されることもあります。金融機関用であれば利益を大きく、逆に税申告であれば利益を抑えて作成したいところですが、その内容は単一でなければいけません。

アカウンティングの一歩目は”ざっくり”と財務諸表を学ぶこと
個人による資産運用や起業が身近になったことで、ビジネスパーソンのあいだでもアカウンティングへの関心が高まっています。一会社員として昇進を目指す方にとっても、役職が上がれば部門の業績目標の作成などが求められるため、アカウンティングの知識はいずれ必要となるものです。
しかし、いざアカウンティングについて学ぼうとすると、多くの方が途中で挫折してしまいます。財務諸表には細かい数字がずらっと並び、用語から理解しようと思っても「流動資産」「固定負債」といった日常的に馴染みのない言葉が多いからです。
そこで弊社がおすすめしているのが、「ざっくり」と財務諸表を学んでみることです。もちろん、経理や財務といった財務諸表を「作る側」の職業を目指す方であれば、財務諸表はしっかりと学ぶ必要があります。
ただ、アカウンティングに実務として携わるのではなく「企業の経営状態を把握したい」といった目的であれば、財務諸表の内容を1円単位で正確に把握する必要はありません。
実際、営業活動でアカウンティングを活かすとしても、営業先でわざわざ「御社の昨年売上は、11億5,672万4,145円でしたね」と細かく言う人はいません。ざっくりと「御社の昨年売上は約11億円でしたね」と触れて、「一昨年から売上が減少傾向にあることから、弊社のサービスが改善のお役に立つと思います」と、アカウンティングを具体的な提案に活かすことが重要になるのです。
このように弊社がご提供する研修プログラム「”ざっくり”学ぶ財務諸表」は、会計や財務諸表に苦手意識を持つ方にとってもアカウンティングの解像度が上がるきっかけとなり、一般のビジネスパーソンがアカウンティングを学ぶ一歩目となる内容になっております。
また、個人で会社の数字について学びたいという方には、オンラインサロン「社会人の数字力向上サロン」をおすすめしております。「数字やデータを活用して、ビジネスシーンで活躍したい!」という方々がお互いに高め合っておりますので、楽しみながら会計や財務諸表に触れるきっかけとなるはずです。
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