オワハラとは「就活終われハラスメント」の略で、企業が学生に対し、他社の選考・内定を辞退して自社の内定を承諾するよう迫る行為です。
例としては「他社からの内定を辞退するよう強要する」「虚偽の情報によって内定承諾を迫る」「就職活動の妨害」などが挙げられ、その内容によっては違法性を問われる場合もあります。
今回は、オワハラの例や原因、生じるリスク、防止策などについて解説していきます。
オワハラとは
オワハラとは「就活終われハラスメント」の略称で、企業が学生に対し、他社の選考・内定を辞退して自社の内定を承諾するよう迫る行為全般を指します。2015年にはユーキャンが実施する「新語・流行語大賞」にノミネートされ、少子高齢化に伴う「売り手市場」のなかで問題視されているハラスメントです。
当然ながら、企業側に学生・労働者の就職活動を終わらせる権利はなく、内定の承諾を強要したり、就職活動を妨害したりする言動は、企業の信用低下、さらには刑事罰につながる恐れもあります。
オワハラの法的な解釈と違法性
そもそも内定は、法的には「始期付解約権留保付労働契約」となり、内定の段階で雇用契約が結ばれたと解釈されます。
これを根拠に企業側が内定承諾を迫るケースがありますが、実はこの契約は「企業側からの内定取り消し」について強い拘束力を持つ一方、「労働者側からの内定辞退」についてはほとんど制約がありません。労働者には「職業選択の自由」が認められており、民法の規定においても「2週間前に告知をすれば退職が認められる」と定められているからです。
そのため、企業側は内定辞退を止めることができません。同様に、内定辞退に対して損害賠償を請求しても、原則として認められないわけです。
※「学生側から内定承諾書が提出され、入社日直前まで音信不通となって突然内定を辞退された」といった悪質なケースでは、その限りではありません。
このような法的な解釈から、オワハラ全般は学生・労働者側の権利を侵害する行為となり、その内容によっては刑事罰に問われる可能性もあります。
オワハラが問題化する原因
企業からのオワハラが問題化するのは、単にその企業の体質がブラックだからというわけではなく、少子高齢化による人手不足と採用難という社会的な背景があります。
リクルートの調査によれば、2025卒大学生の内定辞退率は63.8%となっており、2024卒は63.6%、2023卒は65.8%と、きわめて高い水準で推移していることがわかります。
参考:株式会社リクルート(就職みらい研究所)「就職プロセス調査(2025年卒) 2025年3月度(卒業時点)内定状況」
また、リクルートの別の調査では、企業の「新卒採用の採用数の計画に対する充足状況」が調べられており、2025卒の採用活動で「(採用予定数に対して)未充足」と回答した企業は60.3%に達しています。こちらも2024卒は62.5%、2023卒は58.3%となっており、採用予定数を確保できない企業が過半数を超えるという状況が続いています。
参考:株式会社リクルート(就職みらい研究所)「就職白書2025」
企業からすれば、内定辞退を前提として採用活動を進めねばならず、そのぶん採用コストも増加します。採用予定数を満たすことも困難な状況が続いており、内定者をなんとか入社させようとオワハラに走ってしまうわけです。

オワハラの例
「具体的にどのような行為がオワハラに当たるのか」といった疑問を感じる方も少なくないでしょう。ここでは、オワハラと見なされる言動の具体例を解説していきます。
他社の選考・内定の辞退を強要する
まず、オワハラの例として「他社の選考・内定辞退の強要」が挙げられます。
〈例〉
・「他社の選考をすべて辞退すれば内定を出す」
・「他社の内定を受けた場合、弊社からの内定を取り消す」
虚偽の情報で内定承諾を迫る
広義の意味では「他社の選考・内定の辞退を強要する」に含まれますが、虚偽の情報で内定承諾を迫るオワハラも少なくありません。
〈例〉
・「他の人で採用枠が埋まってしまうため、明日までに内定を承諾してほしい」
就職活動の妨害をする
オワハラのボーダーラインとしてとくに注意しなければいけないのが、就職活動の妨害にあたる行為です。内定承諾率を上げるための取り組みとして悪意なく実施される場合がほとんどですが、意図的に活動を妨害をしたり、明らかに学生側の負担となっていたりする場合はオワハラと見なされます。
〈例〉
・他社の選考スケジュールに合わせて懇親会や研修を行う
・他社の選考を受けにくくするために面接や課題を増やす
内定辞退に対する脅迫行為
当然ながら、内定辞退に対する脅迫行為もオワハラとなります。暴力などによる直接的な脅しでなくとも、相手の自由を阻害するような言動は脅迫行為と見なされます。これらは刑事罰に問われる可能性もあるため、絶対に行なってはいけません。
〈例〉
・「内定を辞退されると、同じ学校・サークルの学生を採用しにくくなる」
・「内定を辞退すると違約金が発生する」
・「弊社の内定を辞退すると、業界内の評判が悪くなる」

オワハラがもたらすリスク
オワハラはリスクしか生み出さない行為です。ここでは、オワハラによって生じる具体的な問題・弊害について解説していきます。
内定辞退
皮肉な話ですが、オワハラは内定辞退を招きます。「売り手市場」のなかでは複数内定を得る学生も多く、優秀な学生ほど「ハラスメントが横行するような会社などお断り」と考えるからです。
企業優位の「買い手市場」であれば、「他の選考を辞退すれば内定を出す」という誘いも効果があったかもしれませんが、現状ではただ学生側の心証を悪くするだけなのです。
早期離職
オワハラは早期離職のリスクを高めます。本来であれば、就職先の選択は熟考の末に決められるものですが、オワハラはその機会を奪ってしまうことになり、ミスマッチの可能性が高まります。
そもそもオワハラによって入社の段階から会社に対する不信感があることも、早期離職につながる原因といえるでしょう。
炎上・ブランドイメージの低下
オワハラの最大のリスクは、炎上とブランドイメージの低下です。
企業の問題行動はSNSや口コミサイトなどを通じて、すぐに拡散されてしまいます。オワハラを行なったことが広まれば、将来的に求人への応募数が減少するのは間違いなく、消費者や取引先、投資家からの信用も損ねることになるでしょう。

オワハラの防止策
最後に、オワハラを防止するための対策について解説していきます。
オワハラの定義やリスクを周知する
まず取り組むべきは、オワハラの定義やリスクの周知です。とくに前述の「虚偽の情報で内定承諾を迫る」「就職活動の妨害をする」などは、採用担当者の「これくらいなら問題にならないだろう」といった心理から横行します。
どのような行為がオワハラに当たるのかを社内で共有し、そのリスクを周知することがオワハラ防止の第一歩となります。
柔軟性のあるスケジュール設定
採用計画を策定する段階で、柔軟性のあるスケジュールを設定しておくこともオワハラ防止に欠かせません。
内定の承諾期限や内定者研修(入社前研修)のスケジュールなどは、学生側からすれば企業側の都合に過ぎません。学生側に配慮して柔軟に対応することで、結果的に印象・ブランドイメージの向上にもつながります。
好印象の記憶が残れば、仮に新卒では内定を辞退されたとしても、将来的に中途採用で縁が結ばれることもあるでしょう。

適切な目標値の設定がオワハラ防止につながる
オワハラの原因のひとつに、入社予定数の未達成を始めとした「数字に対するプレッシャー」が挙げられます。つまり「目標を達成できていないから、何としても人材を確保しなければ」と追い詰められ、オワハラに走ってしまうわけです。
多くの企業が採用予定数の充足に至っていない現状では、現実に即した採用計画と目標値の設定がオワハラ防止のポイントとなるでしょう。
では、適切な目標値を設定するために何が求められるかというと、データに基づいた現状把握です。「採用担当者の経験と勘」に頼るのではなく、明確な根拠に基づいて採用計画を立案していく必要があるのです。
ただその一方で、人事部や採用担当者のなかには「データ活用の経験がない」「データを読み解くのが苦手」といった、数字やデータに対する苦手意識を持つ方も少なくありません。実際、なんとなくデータを見て、あとは経験則で施策を立案しているという企業様がほとんどです。
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