アシミレーションとは、リーダーと部下の相互理解を深めるための組織開発手法です。
ファシリテーターを立てたうえで、上司がいない場で部下たちに意見を出し合ってもらい、その結果を上司へフィードバックするという流れとなり、「チームの一体感が高まる」「心理的安全性の構築」といったメリットが得られます。
今回は、アシミレーションのメリットや具体的なやり方、効果を上げるためのポイントについて解説していきます。
アシミレーションとは
人事領域におけるアシミレーション(assimilation)とは、上司(リーダー)とその部下の相互理解を深めるための組織開発手法です。日本語では「同化」と訳され、様々な学問で「異なる要素が統合されて、同じ性質を持つようになる現象」といった意味合いで用いられています。
大まかな方法としては、上司がいない場で部下たちに上司について意見を出し合ってもらい、その結果を上司へフィードバックするという内容になります。
欧米企業では、新任のマネージャーの着任後3~6ヶ月でアシミレーションを実施してチームの結束を深めており、近年になって日本企業のあいだでも注目されています。
アシミレーションの特徴はファシリテーター
アシミレーションの特徴は、ファシリテーターを立てることにあります。ここでいうファシリテーターとは、ディスカッションのなかで部下側の本音を引き出すために働く「第三者」のことです。
ファシリテーターはディスカッションを進行しつつ、中立の立場で部下側の意見を引き出す重要な役割を担います。また、ディスカッションの結果を上司へ伝えるのもファシリテーターの仕事となります。
中立性・公平性を保つために、外部の人材にファシリテーターを任せる場合もあります。
アシミレーションのメリット
アシミレーションのメリットとして「チームの一体感の向上」「トラブルの早期発見」「心理的安全性の構築」が挙げられ、それぞれが組織全体の生産性の向上へとつながっていきます。それぞれ確認していきましょう。
チームの一体感の向上
まずアシミレーションのメリットとして挙げられるのが、チームの一体感の向上です。
部下の本音を引き出し、相互理解が深まることによって、チームの結びつきが強まります。課題や方針転換に直面した際も、お互いの考え方を理解できていれば、柔軟に対応できるでしょう。
トラブルの早期発見
トラブルの早期発見も、アシミレーションによる重要なメリットのひとつです。
上司に対する不満や改善してほしい点などは、なかなか直接は伝えられないものです。こうしたトラブルの種が膨らむ前にファシリテーターを通じて率直に伝えることで、ミスマッチの解消につながります。
心理的安全性の構築
アシミレーションの取り組みは、心理的安全性の構築に寄与します。心理的安全性とは、意見・アイディアを発信しても拒絶や罰則を受けない状態を指します。
アシミレーションを通じてなかなか口にできない本音を吐き出し、実際に部下側の要望が叶えられれば、心理的安全性が大きく高まることでしょう。
なお、心理的安全性については「職場における心理的安全性の高め方 メリットや低下を招く要素を解説」で詳しく解説しています。
関連記事:「職場における心理的安全性の高め方 メリットや低下を招く要素を解説」
アシミレーションのやり方とその流れ
ここからは、アシミレーションのやり方とその流れについて解説していきます。
アシミレーションについての説明
多くのビジネスパーソンは、アシミレーションの名前すら知らないことでしょう。まずはアシミレーションがどのような取り組みで、どういった目的で実施するのかを従業員に対して説明する必要があります。
また、アシミレーションは原則として部署やチームの全員が参加するため、必然的に業務の手が止まってしまいます。そのため実施日については、現場主導で調整してもらいましょう。
ファシリテーターの選定
次に、ファシリテーターを選定します。ファシリテーターの条件として「部署・チーム外の第三者であること」「公平かつ平等に意見をくみ取れること」の2つが挙げられます。
ファシリテーターはディスカッションの進行役であり、部下側の本音を引き出す重要な役回りです。事前に「アシミレーションを通じて何を達成したいのか」「上司側から部下に確認しておきたいこと」などを共有し、有益なディスカッションとなるように準備を整えておきましょう。
部下側のディスカッション
いよいよ、アシミレーションを始めていきます。まず上司・リーダーには席を外してもらい、部下側とファシリテーターだけでディスカッションを進めていきましょう。
一般的には、以下のようなテーマで意見を集めていきます。
・上司にやってもらいたいこと
・上司に改善してほしいところ
・上司に知っておいてほしいこと
また、事前に上司側が気になっていることなどを預かり、部下側に回答してもらうのもよいでしょう。
上司側へのフィードバック
部下側からの意見が出尽くしたら、今度は部下側に退室してもらい、上司・リーダーとファシリテーターだけでフィードバックを行います。
ポイントは部下側の意見を匿名とすることで、誰の意見かは伏せつつ、内容だけを伝えましょう。
また、ときには上司側がショックを受けるような指摘などもあるでしょうが、できるだけ本音のままで伝えることが大切です。オブラートに包んで真意が伝わらないと、アシミレーションの意味がなくなってしまうからです。
上司側のコメント
最後に、フィードバックに対して上司側がコメントを出します。部下側の意見に対して誤解されている部分があると感じれば、その言動の意図や真意を伝えましょう。また、今後についての具体的な決意表明を行うのもよいでしょう。
なお、コメントを部下側に直接伝えるか、ファシリテーターに伝達を頼むかは状況を見て判断します。フィードバックに対して感情的に反論してしまいそうであれば、ファシリテーターを通じて伝えてもらうほうがよいでしょう。
アシミレーションの効果を高めるポイント
最後に、アシミレーションの効果を高めるための2つのポイントをお伝えしていきます。
着任から時間を置いて実施する
上司と部下の相互理解を深めようと、上司・リーダーの着任後すぐにアシミレーションを行う場合がありますが、これはあまり効果が得られません。
関係性が深まっていない状態であれば、わざわざファシリテーターを間に挟む意味がありません。アシミレーションは、業務を通じて蓄積した不満やトラブルの種などを汲み取ることに意義があるため、着任後3~6ヶ月頃を目安に実施しましょう。
建設的な意見を出す
部下側のディスカッション時のポイントは、建設的な意見を出すことです。とくにリーダー・上司に対する不満が多い場合は愚痴や文句ばかりで、具体的な要望や改善点が挙がらないことがあります。
部下側から不満が多く挙がったときは、ファシリテーターがしっかりと場をなだめて、「どのように改善してほしいか」「どのような行動を求めているのか」といった建設的な意見を求めることが大切です。
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