自己資本比率とは 高い・低いとどうなるかや基準について解説
自己資本比率とは、企業の総資本における自己資本の割合のことです。自己資産は「返済義務のないお金」であり、この割合が高いということは経営が安定している根拠のひとつになります。
自己資本比率が高ければ、社会情勢の変化などが起きても持ちこたえることができ、融資・投資を受けやすくなるというメリットもあります。逆に自己資本比率が低ければ「不安定な経営による倒産リスク」「金融機関等からの信用低下」といった問題を招きます。
今回は、自己資本比率が高いことによるメリットや、自己資本比率が高い場合に確認すべき点、自己資本比率が低いことによる問題、低いと見なされる基準などについて解説していきます。
自己資本比率とは
自己資本比率とは、企業の総資本における自己資本の割合のことです。
そもそも総資本は、自己資本と他人資本によって構成されています。自己資本は利益剰余金や株主から調達した資本金といった、返済義務のないお金。他人資本は銀行からの借入金や社債といった、返済義務のあるお金です。
つまり自己資本比率は、総資本のうちで返済義務のないお金がどれくらい占めているかを示しているわけです。ですから一般的に、自己資本比率が高ければ健全性が高く、経営が安定していて倒産しにくいことになります。
逆に自己資本比率が低いということは、他人資本に依存していることから独立性が低く、経営が不安定ということになります。
自己資本比率の計算方法
自己資本比率は以下の計算式で導き出すことができます。
自己資本比率=自己資本÷総資本×100
※総資本=他人資本+自己資本
自己資本率の目安
自己資本率の目安については、一般的に30%以上で経営が安定した状態と言われ、50%以上であれば良好な状態と見なされます。
ただ、自己資本率は業界によって大きな差があります。例えば、IT企業は設備投資が少なくても事業を行えることが多く、自己資本率が高まりやすい傾向にあります。反対に飲食店は初期投資が高額になりがちで、人件費や仕入れ代などのランニングコストも高騰しやすいため、自己資本率の平均値も低めとなります。

自己資本比率が高いことによるメリット
自己資本比率が高いということは、どのような状態を示すのでしょうか。ここでは、そのメリットを解説します。
安定した経営
自己資本比率が高いことによるメリットとして、安定した経営が挙げられます。他人資本に頼っていないということは、借入金の返済負担が少ないということであり、そのぶん経営も安定するわけです。
これは、金融危機やパンデミックといった社会情勢の大きな変化が起きても、倒産に追い込まれずに持ちこたえる体力があるという意味でもあります。
融資・投資を受けやすくなる
「安定した経営」にもつながりますが、自己資本比率が高いと融資・投資を受けやすくなるというメリットもあります。金融機関や投資家からみても、堅実で安定した経営をしている企業には融資・投資がしやすいからです。

自己資本比率が高いときに確認すべき点
基本的に自己資本比率の高さは、経営の安定性を示すものです。ただ、自己資本比率が高ければ必ず理想的な状況といえるのかといえば、そうではありません。
消極的な無借金経営
個人の話であれば、無借金は評価されることです。ただ企業においては、無借金経営が消極的姿勢と見なされる場合が少なくありません。
とくに事業拡大のチャンスが巡ってきているのに無借金経営を続けている場合、投資家からの評価を落とす原因となります。設備投資や人材確保に大きく予算を割かないために成長が鈍化し、後々に事業停滞のリスクになるからです。
現金がないために資金繰りがショートする可能性
自己資本比率が高くても、その内訳が現金化しにくいもので構成されている場合、後々に資金繰りがショートする恐れがあります。
これは個人の話に置き換えるほうがイメージしやすいでしょう。仮に、手持ちには10万円しかないけれど無借金で、友人に50万円を貸しているという状態にあったとします。このとき、財産としては60万円を所有していることになり、借金もないので安定した状態に思えます。
しかし、急なトラブルが発生し、即金で50万円が必要になったとしたらどうなるでしょうか。当然ながら、友人からすぐにお金を返してもらえるとは限りません。
この個人の例であれば、貸金業者からお金を借りることで乗り切れるでしょうが、企業の場合はそう上手くいくとは限りません。似た状況で融資を受けることができなかったら資金繰りがショートしてしまい、倒産リスクが大きく高まります。

自己資本比率が低いと何が問題になるのか
自己資本比率が低いと、具体的にどのような問題があるのでしょうか。直面するデメリット・リスクについて解説していきます。
不安定な経営による倒産リスク
自己資本比率が低い状態で最も懸念されるのが、不安定な経営による倒産リスクです。
自己資本比率が低いということは、返さなければいけないお金が多いということであり、それに加えて利子も発生します。
返済額が多ければ現預金も増えにくくなり、設備投資や人材確保への資金投入も後手に回ってしまうため、経営がますます不安定となって倒産のリスクが高まるという悪循環に陥ってしまうわけです。
金融機関や取引先からの信用低下
自己資本比率が低い、つまり他人資本に依存する経営は、金融機関や取引先からの信用低下につながります。個人の話で考えても、借金が多い友人にお金を貸すことは躊躇われるでしょう。
取り引きの継続や融資を受けることが難しくなれば、ますます倒産リスクが高まってしまいます。

自己資本比率が低いと見なされる基準
自己資本比率が低いことによる問題について解説しましたが、そもそも自己資本比率が何%以下だと「低い」と見なされるのかについて解説していきましょう。
30%以下で低い・20%以下で危険水域
一般的に自己資本比率の安定性のラインは、30%が目安とされています。これを下回ると自己資本比率が低い状態と見なされます。
また、自己資本比率20%を下回ると危険水域と言われ、自己資本が乏しい経営状態と見なされます。
業界によっては平均値20%以下の場合もある
「自己資本比率20%以下だと危険水域」とされる一方、自己資本比率は業界によって平均値が大きく異なります。実は業界によって平均値が20%を下回っている場合もあります。
〈自己資本比率の平均値が低い業界の例〉
・宿泊業、飲食サービス業
・電気、ガス業
・不動産業
もちろん、業界の特色として自己資本率が低いからといって、自己資本率が低いことによるデメリットを受けないわけではありません。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、飲食業の倒産件数が過去最多を記録したことからもわかるように、自己資本率の低さがリスクになることには変わりありません。

自己資本比率を見る際のポイント
最後に、自己資本比率を通じて企業を評価する際のポイントについて解説していきます。
同業他社と比較する
ある企業の経営状態を評価する目的で自己資本比率を確認する場合、同業他社との比較を行いましょう。自己資本比率の平均は業界によって大きく異なるからです。仮に自己資本比率30%を下回っていたとしても、業界の特性を鑑みて評価することが大切です。
成長ステージを考慮する
自己資本比率を確認する際は、その企業の成長ステージを考慮しましょう。例えば創業期にあたる企業であれば、設備投資や人材確保を融資で賄う場合が多いため、必然的に自己資本率が低くなるからです。
自己資本利益率(ROE)を確認する
「成長ステージを考慮する」と関連するのが、自己資本利益率(ROE)の確認です。
例えば、自己資本比率が高くともその企業が成長期にある場合、発展のための投資を怠り、成長機会を逸している可能性があります。そこで確認すべきなのが、自己資本利益率です。
自己資本利益率は、自己資本を元手にしてどれだけの利益を上げているかを測る数値です。自己資本利益率が高ければ「効率よく稼げている企業」であり、自己資本利益率が低ければ「経営効率の悪い企業」ということになります。

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