採用基準とは 各項目の決め方や明確化について解説

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採用基準は、自社が求める人物像を明文化したものです。採用基準の明確化は公平な評価や選考のスピードアップの実現に不可欠であり、早期離職を防ぐ意味でも重要です。

今回は、採用基準を設定する目的や具体的な決め方、採用基準を明確化する際のポイントについて解説していきます。

採用基準とは

採用基準とは、自社が求める人物像を明文化したもので、採用活動の指標として活用されます。

採用基準を設けることで担当者ごとの主観に左右されにくくなり、公平に候補者を評価することができます。また、事前に自社とマッチ度の高い人材を精査する意味合いもあり、自社での活躍の可能性が高い人材を見つけやすくなることで、早期離職のリスクを軽減させる効果もあります。

採用基準を設定する目的・メリット

採用基準を設定する目的として、大きく「公平な評価」「選考のスピードアップ」「早期離職の防止」の3つが挙げられます。それぞれ具体的なメリットを交えて解説していきます。

主観に左右されない公平な評価

採用基準を設定する目的のひとつに、担当者の主観に左右されない公平な評価を行うことが挙げられます。

採用活動では、人事部のみならず現場担当者や経営層といった様々な立場から候補者への評価が行われるため、それぞれの目線によって重視する点が異なってきます。

また選考時には、自身と似た経歴や性格の候補者を過剰に評価してしまったり(類似バイアス)、前後の候補者と比較して過大あるいは過小な評価をしてしまったりと、様々な心理的な誤認やバイアスが生じます。

こうした立場による評価ポイントの違いやバイアスの影響などを極力排除するために、採用基準を設ける必要があるのです。

選考のスピードアップ

採用基準を設けることにより、選考がスピードアップするというメリットがあります。

選考に時間がかかると、それだけ候補者の意欲や志望度は低下してしまいます。実際にThinkings株式会社が24年卒の就活生を対象に実施した調査によれば、選考の参加意欲が下がった理由として「選考ステップが多い(19.3%)」が最多となっており、「選考期間が長い(15.9%)」も3番目に多い回答として挙がっています。いずれも選考の段取りが候補者の意欲に直結することを示しています。

参考:Thinkings株式会社「選考に関する意識調査」

担当者が一から候補者を評価していくと、どうしても時間がかかります。あらかじめ採用基準を明確にしておき、チェックシートのような指標・基準に照らし合わせるような選考ができれば、自ずとスピードアップにつながるでしょう。

早期離職の防止

採用基準の設定は、ミスマッチによる早期離職の防止のためにも重要な取り組みとなります。

採用基準を考えるにあたり、募集ポジションに合わせて求めるスキル・経験を整理するのはもちろんですが、自社の社風と活躍しやすい人柄についても洗い出しておく必要があります。例えば、体育会系の人材が多く活躍する職場のなかで文系気質の人材を採用しても、人間関係を理由に離職するリスクが高まるでしょう。

「新卒者の約3割は入社後3年以内に離職する」という状況は長年にわたって続いており、厚生労働省の最新の発表(2024年3月時点)でも、新規学卒就職者(令和2年3月卒業)の就職後3年以内の離職率は、新規高卒就職者で37.0%、新規大学卒就職者で32.3%となっています。

参考:厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和2年3月卒業者)を公表します」

このようなデータからも、自社にマッチする人材を明確化しておくことは非常に重要であることがわかります。なお、早期離職については「早期離職の理由と必要な対策」でも詳しく解説しています。

関連記事:「早期離職の理由と必要な対策」

採用基準の決め方

採用基準を決める際の流れと具体的な取り組みについて解説していきます。

自社が求める人物像を明確にする

採用基準を決める際は、まず自社が求める人物像を明確にしましょう。採用活動ではよく「優秀な人がいたら採用したい」といった言葉が用いられますが、往々にして採用活動で行き詰まる企業は「優秀な人」が言語化・数値化されていません。

何をもって「優秀な人」とするのかは、募集の背景・ポジションや現場で求められているスキルなどから言語化・数値化していきましょう。なお、求める能力などをうまく言語化できない場合は、経済産業省が「職場や地域社会で多様な人々と仕事をしていくために必要な基礎的な力」として提唱する「社会人基礎力」を参照してみるとよいでしょう。

参考:経済産業省「社会人基礎力」

採用市場の状況を踏まえた評価項目の整理

自社が求める人物像を明確にできたら、採用市場の状況を踏まえて評価項目を整理していきます。

とくに近年は人手不足の影響から採用競争が激化しており、あらゆる点で理想通りの人材はまず獲得できません。そこで必要となるのが、MUST条件(必須項目)とWANT条件(あると望ましい項目)による評価項目の整理です。

例えば、就業にあたって特定の資格が必要になるのであれば、その資格はMUST条件となります。一方、ポテンシャル採用で必ずしも実務経験を求めないのであれば、実務経験はWANT条件となります。

当然ながら、採用市場において希少な経験・スキルをMUST条件にすると成功難度は高くなります。そのため、評価項目の優先順位を決める際は、採用市場の動向を調査・把握しておく必要があるのです。

評価基準の設定

評価項目を設定できたら、それぞれの項目に評価基準を設定しましょう。「TOEIC◯点以上」といった項目ならば一目瞭然ですが、定量化しにくい項目は評価基準がないと選考担当者ごとに評価のバラツキが生じてしまうからです。

例えば主体性という評価項目について、何をもって「主体性がある」と判断するかは非常に曖昧です。この場合、以下のような基準を設定しておくことで、選考担当者が変わっても公平に候補者を評価することができます。

主体性の評価基準の例

・入社後にどのような成果を目指すか、明確なプランを持っている

・実践的に主体性を発揮したエピソードを話すことができる

・成功体験において、自身の主体性がどのように作用したかを分析して話すことができる

就職差別につながる項目はないか確認する

最後に、採用基準のなかに就職差別につながる項目はないかを確認します。

採用基準を決める際に「ペルソナ設定」を行う場合が多いですが、詳細に人物像を作り込むと、年齢や婚姻状態、思想・信条などが含まれてきます。こうした情報は候補者のイメージを明確にするのには役立ちますが、面接等では「就職差別につながる事柄」として扱われるため、質問すること自体が禁止されています。

「ペルソナ設定」が評価項目に落とし込まれていないか、念入りに確認しておきましょう。

採用基準の項目を明確化する際の3つのポイント

採用基準の各項目を明確化する際に行うべき3つのポイントを解説していきます。

コンピテンシーモデルの設定

採用基準の項目を明確にする際、コンピテンシーモデルを活用すると効果的です。コンピテンシーモデルとは、社内で成果を上げている人(ハイパフォーマー)の行動特性や性格を洗い出し、お手本として共有することです。

社内で活躍する人材を複数名選定し、共通する行動や思考パターンを採用基準として設定することで、同様の活躍を期待できる人材が集まりやすくなるわけです。

現場と経営層の声を統一する

求める人物像や採用基準の項目を決める際は、経営層の意向だけでなく、現場の声をくみ取ることが大切です。とくに専門的な知識を要する部署であれば、実際に求められる能力とスキルレベルは現場担当者でないと判断できません。

大局的に必要となる人材と、局地的に求められている人材が合致するとは限らないため、双方の意見ばかりが大きくならないよう注意しましょう。

歩留まり率と照らし合わせて改定する

採用基準には明確な正解があるわけではなく、社会情勢や技術革新などの影響を受けて刻々と変化するため、定期的に見直して改定する必要があります。その際の指標となるのが、歩留まり率です。

具体的には「書類通過数が少ない」「1次面接の通過率が高すぎる」などの問題点を見つけて、MUST条件とWANT条件を見直すなどの対応が必要となります。

なお、採用における歩留まりについては「採用における歩留まりとは」でも詳しく解説しています。

関連記事:採用における歩留まりとは

適切な採用基準を定めるために役立つ「数字力」

人事・採用担当者のなかには数字やデータの扱いに対して苦手意識を持つ方が一定数おり、採用基準が勘や経験に基づいて設定されることも少なくありません。

しかしここまでの解説のとおり、適切な採用基準を定めるためには、採用市場の状況を様々なデータから読み解き、応募数や歩留まり率といった社内に蓄積されたデータを分析する「数字力」が不可欠です。

弊社オルデナール・コンサルティングがご提供する「ビジネス数学研修」では、ビジネスシーンで必要となる「数字力」を理解し、数字・データを根拠としたアクションを実践形式で学んでいきます。

研修は受講者のレベルに合わせて「入門編」から「実践編」の4段階で学べるので、数字に対する苦手意識を持つ方でも安心してステップアップしていくことができます。数字やデータからつい目を背けてしまうという方でも、素早くデータからポイントを見つけだせるようになるでしょう。

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