言語化力とは、頭のなかで形になっていない思いや意見などを相手にわかりやすく伝える力で、大きく「語彙力」「伝える力(伝達力)」「イメージ力」によって構成されています。
言語化力を伸ばすことで提案の成功率が上がったり、内省の質が上がったりと、ビジネスにおける重要な場面でのパフォーマンスが向上します。
今回は言語化力の構成要素や重要性が高まる背景を解説したうえで、言語化力を伸ばすメリットや鍛え方についても解説していきます。
言語化力とは
ビジネスにおける言語化力とは、頭のなかで形になっていない思いや意見などを相手にわかりやすく伝える力のことです。優秀なビジネスパーソンは職種を問わず、自分の言いたいことをわかりやすく伝える力を持っています。とくに経営層や管理職ならば、部下にビジョンを共有するための言語化力は必須スキルといえるでしょう。
一方で言語化力は、何を鍛えることで伸びていくのかがわかりにくいスキルでもあります。国語の成績が良ければ言語化力も高いというわけでもありません。
ですからまずは、言語化力がどんな要素で構成されているのかについて確認していく必要があります。
語彙力
言語化は、頭のなかの形になっていない感情や意識を言葉に当てはめる作業です。ここで重要になるのが、言葉に当てはめるときの選択肢の多さ、つまり語彙力です。
例えば、クライアントが怒っていたことを表現する際、「すごく怒ってました」と報告してもどこか緊張感が伝わりません。一方、語彙力が豊富であれば「烈火のごとくお怒りでした」といった表現ができ、重要性や緊急性が伝わりやすくなります。
語彙力については国語の成績や読書習慣などが直結する要素なので、残念ながら一朝一夕で身につくものではなく、地道に伸ばしていくしかありません。
伝える力(伝達力)
言語化力における伝える力(伝達力)とは、相手にとって適切なかたちで情報を届けることを意味します。
語彙力が豊富でどれだけ難解な言葉を扱えても、それが相手に伝わらなければ意味がありません。小さな子どもに対して「烈火のごとく」と表現しても、どれだけ怒っているかは伝わらないわけです。
とくにビジネスにおいては、事態の前後関係や背景などを補足することも伝達力のひとつに含まれます。「クライアントが怒っている」と事情を知らない上司に報告するのであれば、「なぜ怒っているのか」も伝える必要があるわけです。相手に状況を理解してもらうために必要な情報を取捨選択することも、言語化に欠かせない要素なのです。
イメージ力
イメージ力は伝達力に直結する要素であり、「相手にとって伝わりやすい表現となっているか」「話の構成が適切な順番になっているか」などを自分の中でシミュレーションする力です。
言語化力というと自身の頭のなかだけで完結するように思えますが、言語化の目的は「相手に伝達すること」にあります。つまり言語化を行う際には、「相手はこの問題の背景を知っているだろうか」「相手はこれを聞いて、どのように受け取るだろうか」といったことをイメージすることが重要になってくるわけです。

ビジネスで言語化力が重要となっている背景
「言語化力」という言葉をよく耳にするようになったのは、ここ数年のことだと思います。ここでは、ビジネスシーンにおいて言語化力の重要性が高まった背景について解説していきます。
非対面コミュニケーションの定着
言語化力が重要となる背景としてまず挙げられるのが、非対面コミュニケーションの定着です。
コロナ禍をきっかけにチャットツールやweb会議など、物理的な場所を共有しないコミュニケーション方法が普及しました。これにより、仕草や目線、姿勢などの非言語コミュニケーションが読み取りにくい場面が増えたため、思いや意見をしっかりと言語化する力の重要性が増しています。
以前まで言語化力は「部下にビジョンを共有する」という目的で、経営層や管理職に求められるスキルでしたが、現在ではあらゆるビジネスパーソンに求められているわけです。企業側はオフィス回帰を求めてはいますが、web会議やリモートワークはすでに新たな文化として定着しています。今後も言語化力は、重要度の高いスキルに位置づけられていくでしょう。
VUCA時代における根拠の必要性
VUCA時代と呼ばれる現代のビジネスシーンでは「明確な根拠」が求められるため、言語化力の重要性が高まっています。
現代のビジネスシーンは変化が激しく、将来の予測が困難な状況にあります。そんななかで行動や施策の承認を得るためには、明確な根拠が必要となります。いくら熱意があっても、上司やクライアントが納得しなければビジネスは進みません。自分のやりたいことをわかりやすく伝え、周囲から納得感を引き出すために言語化力が求められているわけです。

言語化力を伸ばすことで得られるメリット
言語化力を伸ばすことにより、ビジネスシーンでどのようなメリットが得られるのかについて解説していきます。
提案の成功率が上がる
ビジネスシーンのなかでとくに言語化力を求められるのが、提案です。社内での何気ない提言や取引先へのプレゼンなど、ビジネスでは自身の意見やアイディアを伝える場面が多々訪れます。
そんなとき、どれだけ良い意見やアイディアを持っていても、伝えるべき内容が曖昧なままでは受け入れてもらえません。「提案が上手くいかない」と感じる人は、言語化力を伸ばすことによって、物事が円滑に進むようになるでしょう。
振り返り・内省の質が上がる
言語化力を伸ばせば、自身の曖昧な感情を整理することができ、振り返りや内省の質が上がります。
例えば、プレゼンの度に必要以上に緊張してしまうことに悩んでいるのなら、その原因を言語化していくことで解決に近づきます。失敗や悩みを言語化し、その原因を解決していけば、成長スピードも飛躍的に高まるはずです。
判断力が高まる
言語化力を鍛えることで曖昧になっている事柄の整理や、対人関係のシミュレーションが上手くなり、様々な場面での判断力が高まってきます。
VUCA時代とも呼称され、変化が激しく将来の予測が難しい現代において、判断力は非常に重要な能力となっています。とくにリーダーとしてメンバーを引っ張る立場にあるならば、周囲の納得感を引き出す意味でも必須の能力といえるでしょう。
コミュニケーションの活性化
組織の視点で見ると、社員の言語化力を伸ばすことでコミュニケーションの活性化につながります。
うまく言葉にできないことを提案したり相談したりするのは躊躇われるものです。「うまく伝わらないだろうし、言わなくていいや」と言葉を飲み込んだ経験は、誰しも一度はあるでしょう。こうした躊躇いも言語化力があれば解消され、報連相が活発に行われる風通しの良い組織になります。
逆に言えば、社員の言語化力が欠如していると報告や相談が滞り、トラブルが発生しやすい環境となる恐れがあるわけです。
なお、報連相の重要性については「報連相の重要性 やり方や定着させるための基本を解説」でも詳しく解説しています。
組織風土の改革が進む
組織視点での言語化を伸ばすメリットとして、組織風土の改革が進みやすくなることが挙げられます。
組織風土は「組織の構成員のあいだで共通認識となっている価値観」という意味で、簡単に言うなら「社内に根付いている雰囲気や空気感」と言ってもいいでしょう。就業規則のように明文化されているわけではないため、改善しようと思っても一筋縄ではいきません。
そこで求められるのが、言語化力です。組織で働く人たちの思いや意見が言語化されることで、目には見えないソフト面を可視化しやすくなるわけです。
なお、組織風土については「組織風土とは 構成要素や改革の手順を解説」でも詳しく解説しています。
言語化力の鍛え方
ここからは、言語化力を鍛えるための3つの方法について解説していきます。
伝えたいことの優先順位を整理する
言語化が下手な人は、往々にして「感情が先走っている」「相手の状況を配慮していない」といった問題を抱えています。そのため、まずは一拍おいて、伝えたいことの優先順位を整理することがポイントとなります。
例えば、職場の残業時間の長さに対して「他の会社よりも残業時間が長いせいでプライベートの時間を持てないし、会社は努力を評価してくれないし、仕事にやりがいを感じない」と感情のままに不満を伝えても、受け手は問題の焦点がどこにあるかを掴めません。
まずは自身のなかで不満点を整理して、自身が最も不満を感じているのは「プライベートの時間が持てないこと」なのか、「会社が評価してくれないこと」なのか、優先順位を整理してみましょう。
本質を探る習慣を身につける
伝えたいことの優先順位が整理できたら、本質を探る習慣を身につけましょう。
職場の残業時間の長さに対する不満も、本質を探ることで別の側面が見える場合があります。残業によってプライベートを削られることに不満を感じる人もいれば、同業他社と比べて残業が多いこと自体に不満を感じる人もいます。一口に「残業の長さ」といっても、突き詰めていくと不満を感じている部分は異なるのです。
仮に、同業他社と比べて残業が多いことに不満を感じている場合、実は残業自体よりも、作業効率の悪さや生産性の低さに憤りを覚えている可能性があります。
このように本質を探ることによって、「作業効率の悪さによって、同業他社と比べて明らかに仕事量が多い現状に不満を感じている」と、明確に言語化ができるわけです。
数字を交えて伝える
言語化における伝達力を高めたいのであれば、数字を交えて表現してみましょう。数字は誰の目にも公平な事実であり、共通認識を得やすくなるからです。
例えば「今月の営業成績では目覚ましい成果が出ました」と表現しても、具体的にどの程度の成果を上げたのかが伝わりません。これを「今月の営業成績は先月比で50%も上がりました」と数字を交えて表現することで、明確に成果の度合いが伝わるようになります。
言語化力は豊富な語彙があれば優れているというわけではなく、相手にとってわかりやすい表現を選ぶことがポイントとなります。その点で数字は、誤解なく情報を伝達するために欠かせない表現といえるでしょう。
このように、ビジネスにおいて上手く数字を活用できる人については「数字に強い人とは その特徴と数字に強くなるためのコツ」でも詳しく解説しています。
言語化力を高めるために欠かせない「数字力」
言語化力を高めるための「数字力」と聞くと、対極のイメージでミスマッチに感じるかもしれませんね。しかし前述のとおり、数字は相手にわかりやすく情報を伝えるための効果的な表現方法でもあります。
「ビジネス数学研修」を企画運営する弊社では、数字力を「数字やデータから素早くポイントを見つけだし、相手にわかりやすく伝える力」と定義しています。つまり、言語化の目的である「自分の思いや意見などを相手にわかりやすく伝えること」と共通する部分のある能力なのです。
実際に「自分が思い描いている施策を上司やクライアントにわかりやすく伝えたい」と思うのであれば、語彙力を鍛えるよりも根拠となるデータを探すほうが効果的な場面も多いでしょう。
また、現代のビジネスシーンでは「数字やデータから言語化する」という能力が求められます。前述のとおり、VUCA時代においては「明確な根拠」が必要となるため、「このデータを根拠として示せる」「データからどんなアクションを起こせるか」など、数字やデータから言語化していく力が重要になるのです。
この点でも弊社の研修は、実際のビジネスシーンを想定した「データを意思決定に結びつけるためのプログラム」を多数ご用意しておりますので、VUCA時代に即した実践的な言語化を伸ばすことができます。
なお、弊社では企業向け研修だけでなく、オンラインサロン「社会人の数字力向上サロン」を運営しておりますので、個人でも気軽に数字力について学ぶことができます。
サロンでは時事ネタで扱われる数字・データの裏側などをテーマとして、楽しみながら数字の使い方を学んでいく環境を整えておりますので、ぜひお気軽にご参加ください。
弊社の研修やオンラインサロンについて「もっと詳しく知りたい!」と思っていただけましたら、お気軽に以下のリンクからお問い合わせください。
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