内定辞退率とは 2023年までの推移や辞退を招く原因を解説
内定辞退率は、内定を出した数に対して、それを辞退した候補者数の割合です。「売り手市場」を背景として内定辞退率は急激に上昇し続けており、企業の採用コストを膨らますだけでなく、採用予定数の充足を困難にさせています。
採用担当者は自社の内定辞退率が上昇する原因を突き止め、改善していく取り組みが求められます。
今回は、内定辞退率の推移や内定辞退につながる主要な原因、内定承諾率を上げるためのポイントについて解説していきます。
内定辞退率とは
内定辞退率とは、内定を出した数に対して、それを辞退した候補者数の割合です。近年の各種調査によれば、内定辞退率は年々上昇していることがわかっています。
内定辞退が起こることにより、最終面接までにかかる金銭的・人的コストが水の泡になってしまいます。また、内定辞退率が高いと採用予定数を満たすことも難しくなり、人員確保の計画が狂うことで後々の経営戦略にまで悪影響を与えます。
このように企業活動に深刻な影響を及ぼすことから、採用担当者の頭を悩ます課題となっています。
こうした現状を象徴するような出来事として、2019年には「リクナビ」が無断で学生の内定辞退率の予測データを企業に販売するという問題が起きました。学生に無断で確証のない予測データを販売したリクルートキャリアはもちろんのこと、データを購入した企業35社にも行政指導が行われています。
内定辞退率・内定取得数の推移
リクルートの調査によれば、2023年卒(3月卒業時点)の内定辞退率は65.8%となってます。2022年卒は61.1%、2021年卒は57.5%でしたので、顕著な増加傾向が見て取れます。
※本調査の内定辞退率は、就職内定辞退人数÷就職内定取得人数で計算されています
参考:リクルート(就職みらい研究所)「就職プロセス調査(2023年卒)2023年3月度(卒業時点)内定状況」
2023年9月現在、2024年卒の内定辞退率は63.8%と、前年同月の64.7%とほぼ同じ水準に達しています。24年卒も変わらず、内定辞退率は高水準で推移することが予想されます。
参考:リクルート(就職みらい研究所)「就職プロセス調査(2024年卒)2023年9月1日時点 内定状況」
内定辞退率が高い数値で推移する主たる原因は、少子高齢化による人口減とそれに伴う「売り手市場」です。
実際にリクルートの同調査によれば、2023年卒の内定取得数の平均は2.5社となっています。2022年卒は2.33社、2021年卒は2.25社でしたので、やはり複数内定を得る学生は年々増加しています。なかには6社以上の内定を取得する学生も5.7%存在しており、内定辞退が増えることは必然といえそうです。
内定を辞退される原因
企業規模や待遇面などの理由で他社を選ばれてしまうのは、はっきり言ってどうしようもありません。しかし、似た条件の同業他社と比較した際に内定を辞退されてしまう(他社を選ばれてしまう)場合は、その原因を解明して対策を打つ必要があります。
ここでは、内定辞退率の悪化につながる主要な原因について解説していきます。
選考スピードが遅い
内定辞退の増加につながる原因として、選考スピードの遅さが挙げられます。
中途採用ほど決定的な差にはなりませんが、先に内定を出した企業のほうが印象が良くなるのは間違いありません。また、求職者側は選考スピードから「企業全体の意志決定の早さ」を見極めている場合もあります。
プライベートのやりとりでも、レスポンスが悪い人物は信頼を損ねがちです。同様に選考時のレスポンスが悪いと、そのぶん求職者から志望度(優先度)を下げられてしまうことを肝に銘じておきましょう。
採用ターゲットの設定が不十分
採用ターゲット(人材要件)の設定が不十分だと、候補者側がミスマッチを感じて内定を辞退する可能性が上昇します。
わかりやすく極端な例を挙げると、営業の強い体育会系の企業が文系気質の候補者に内定を出しても、辞退されてしまう可能性が高いでしょう。
候補者側のキャリアプランや性格、世代ごとの価値観の違いなどを踏まえて、自社とのマッチ度が高い人材に内定を出すことが大切です。
オンライン選考しか行っていない
企業側・学生側にとっても恩恵の多いオンライン面接ですが、相互理解を深めるという点では劣る部分があります。
とくに社内の雰囲気などは、実際にオフィスへ足を運ばないと感じ取れません。仮に、同じ条件の2社から内定を得た場合、オンライン選考のみのA社と、実際に足を運んだ経験があるB社なら「自分の目で確かめたB社にしよう」と考えるのが自然でしょう。
最低でも最終面接は実地(オフライン)で行い、面接前に会社案内を行うなど、学生側の自社への理解が深まるような配慮が求められます。
口コミサイト、SNS上の評判が悪い
そもそも口コミサイト、SNS上の評判が悪いと応募自体を控えられる恐れがありますが、その後の会社案内や面接を通じて、疑惑を払拭する機会がありました。ただ、コロナ禍以降はそうした機会が失われがちで、口コミサイトやSNS上での悪評が内定辞退率の上昇につながる可能性が高まっています。
この対策として重要なのは、口コミなどの削除に力を入れることではなく、社員のエンゲージや顧客満足度を高めて悪評自体が流れないよう努力することです。
優先度(志望度)が低かった
新卒の学生は就職活動を成功させるために、必ず「滑り止め」の企業にも応募します。学生側が「本命」からの内定を得てしまった場合は、残念ながら内定を辞退されてしまうでしょう。
ただ、ここで重要になるのが、学生が滑り止めからしか内定を得られなかった場合です。このとき内定を得た学生は「本当に滑り止めだった会社に入っていいのだろうか」と、いわゆる「内定ブルー」のような状態になります。
企業側に求められるのは、内定者に「滑り止めのつもりだったけれど、この会社も良いな」と思わせる取り組みです。こうした取り組みを続けることで、自然と内定承諾率は上昇していきます。
内定承諾率を上げるための3つのポイント
内定辞退率が上昇の一途を辿る現在、内定承諾率を上げて必要な採用人数を確保するためには、どのような取り組みが必要なのでしょうか。3つのポイントから解説していきます。
内定者フォローの刷新・徹底
少子高齢化と人口減が背景にある以上、今後も内定辞退率は高い水準で推移するでしょう。そのため、採用活動における「内定者フォロー」の重要性はより高い位置づけになります。
一例としては「先輩社員や内定者同士との懇親会を開く」「内定者研修でグループワークを行い、内定者間の連帯感を高める」など、入社までに人間関係の不安を払拭する取り組みが挙げられます。
内定者研修については「内定者研修とは 内容や違法になる例を解説」でも詳しく解説しています。
関連記事:内定者研修とは 内容や違法になる例を解説
インターンシップの導入
いま内定承諾率を上げる方法として最も注目されているのが、インターンシップの導入でしょう。法改正により、2025年卒予定の学生から正式にインターンシップと採用活動を結びつけることが認められ、新卒採用に新たな流れをもたらしています。
実際に社内で就業体験をすることからミスマッチの防止につながり、自社に魅力を感じてもらえれば早期囲い込みができるなど、大きなメリットがあります。
インターンシップの目的と受け入れ方法については「企業側に必要なインターンシップの受け入れ準備」で詳しく解説しています。
関連記事:企業側に必要なインターンシップの受け入れ準備
各フェーズの歩留まり率の改善
採用計画数を充足させるために欠かせないのが、各フェーズの歩留まり率を改善することです。採用活動における歩留まりとは、採用フローのなかで、各フェーズに進んだ人数の割合のことです。
各フェーズごとの歩留まり率を改善していけば、必然的に内定承諾率も向上していきます。歩留まり率を把握して通過者に余裕を持たせておくことでも、採用計画数にズレが生じるリスクを減らすことができます。
採用の歩留まりについては「採用における歩留まりとは」で詳しく解説しています。
関連記事:採用における歩留まりとは
まとめ
内定辞退率が年々上昇していることは、各種調査からも明らかです。とくに近年は、2021年卒の57.5%、2022年卒の61.1%、2023年卒の65.8%と顕著な増加傾向が見て取れます。
こうした状況のなかで企業は、自社の内定が辞退されてしまう原因についてしっかりと調査し、改善していかなければいけません。
また、内定者フォローやインターンシップといった新しい取り組みを導入することによって、内定承諾率の向上を目指すことも重要になるでしょう。
内定辞退率の分析に欠かせない「数字力」
内定辞退率が上昇し続けるなかで、採用担当者には「数値の実態を見極める力」が求められます。例えば、全国的な内定辞退率の平均と自社の数値の差から、自社の改善点を見出していくことが必要となります。
しかしその一方で、人事部や採用担当者のなかには「数字を扱うのが苦手」「データから情報を読み取れない」といった、数字に対する苦手意識を持つ方が少なくありません。こうした採用体制だと各種のアクションプランが感覚的なものになりがちで、「なぜこの施策が成功(失敗)したのか」の振り返りも難しくなります。
そんな状況を打破するためにおすすめしたいのが、弊社オルデナール・コンサルティングの「ビジネス数学研修」です。
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