オンライン研修のメリット・デメリット
オンライン研修はインターネットを通じて行う研修のことで、従来の研修と比較して場所を選ばず実施できるメリットがあり、コストカットの効果も期待されます。
新型コロナウイルスの感染拡大を背景として、各企業が急速に導入を進めるオンライン研修について、メリット・デメリットや実施の流れ、eラーニングとの違いなどを解説していきます。
オンライン研修とは
オンライン研修とは、インターネットを通じて実施する研修です。パソコンやスマートフォンを活用することで、ネット環境があればどこにいても受講できる特徴があります。ウェビナー(web+seminarの造語)と呼ばれることもありますが、両者に大きな違いはありません。
オンライン研修が急速に広まった背景としては、新型コロナウイルスの感染拡大が直接的な契機となりました。受講者の密集を避ける意図や在宅勤務への対応のため、多くの組織が導入を進めています。
パーソル総合研究所が2021年に公表した「コロナ禍における研修のオンライン化に関する調査」によれば、オンライン研修を増やした企業の割合は全体の75%にも達しています。
また、オンライン研修で成果を得ている企業の90%は、今度も既存の研修をオンラインに置き換えていきたいと考えていることがわかっています。
参考記事:パーソル総合研究所「コロナ禍における研修のオンライン化に関する調査」
オンライン研修とeラーニングの違い
eラーニングとは、インターネットを活用して、パソコンやスマートフォンによって行う学習を意味します。この定義からもわかるように、言葉の意味としてはオンライン研修との違いはありません。
ただ多くの場合、eラーニングはオンデマンド型で、サーバーに格納されている教材によって学習を行うことを指し、オンライン研修はライブ配信型で、リアルタイムで行う研修を指すことが多いようです。
オンライン研修の種類
オンライン研修は大きく「録画型・オンデマンド形式」と「ライブ型・リアルタイム形式」の2種類に分けられます。
録画型・オンデマンド形式のオンライン研修
録画型・オンデマンド形式のオンライン研修では、あらかじめ録画しておいた研修の様子を視聴します。そのため、受講者が各々自由なタイミングで視聴でき、講師のスケジュールを押さえる必要もありません。
ただ、質疑応答ができず、受講者間のコミュニケーションも取れないため、新人研修などには不向きな側面もあります。
ライブ型・リアルタイム形式のオンライン研修
ライブ型・リアルタイム形式のオンライン研修は、主にweb会議用のツール(Zoom・Webex・Teamsなど)を活用して、同時に研修を受講します。
通話・チャット機能を活用すれば講師や他の受講者ともコミュニケーションが取れるので、簡単なグループワークやディスカッションも可能です。基本的には、オフラインの集合研修に近いかたちで実施できるでしょう。
ただ、講師側のインターネット回線が切れるなどの不都合が生じると、受講者全体に影響を及ぼすといった不安要素もあるため、事前の準備が重要となります。
オンライン研修のメリット
ここからは、オンライン研修ならではのメリットについて解説していきます。
場所を選ばず受講できる
オンライン研修の最大のメリットは、場所を選ばず受講できることでしょう。在宅勤務時にも受講でき、地方などに複数拠点を持つ企業でも同時に受講できるのは、大きなメリットです。
受講者の負担軽減
「場所を選ばず受講できる」と共通しますが、オンライン研修は移動の手間を省き、感染症対策にもなるため、総じて受講者の負担軽減に繋がります。
さらにオンデマンド型であれば時間も問わないため、受講者がそれぞれ手の空いたタイミングで受講できるメリットもあります。
コスト削減
オンライン研修と聞くと「お金がかかりそう」と思うかもしれませんが、基本的にはコスト削減に繋がります。場所代や受講者の交通費が必要なくなるためです。
ただ、自社内から配信を行う場合は、カメラやマイクの購入、インターネット回線の見直しなどのイニシャルコストが発生する場合もあります。
繰り返し確認できる
録画されたオンライン研修は、内容を繰り返し確認できるメリットがあります。ライブ配信もアーカイブ放送で、後から繰り返して確認できる場合があります。
とくにオフラインのセミナー形式の研修では、話が難解で理解できず、受講費が無駄になってしまうといった問題がよく起こります。その点で繰り返し確認できるオンライン研修は、受講者の理解度向上につながるでしょう。
オンライン研修のデメリット
オンライン研修には、オフラインの集合型研修と比べた際のデメリットも存在します。
受講者側の環境整備の必要性
ビジネスパーソンのほとんどはパソコンまたはスマートフォンを持っているはずですが、研修に適した環境まで整備されているとは限りません。
とくに「スマートフォン・タブレットで受講したため、細かい文字の資料が読みにくい」「自宅のネット回線が脆弱」といった問題が発生しがちで、社員の自宅のネット環境を整備するためにコストが発生する場合もあります。
受講態度の把握が難しい
オンライン研修は、受講者が真面目に研修に取り組んでいるかなど、受講態度を把握するのが難しいデメリットがあります。
ライブ配信で受講者側もカメラで映す場合はある程度把握できますが、在宅勤務でeラーニングを始めとしたオンデマンド型を受講する場合は、受講態度の把握が困難となります。
技能の体得・実技は難しい
オンライン研修は、専門機器の操作や肉体的な動作の習得といった技能の体得には向きません。営業などの会話形式のロールプレイは可能ですが、実際の動作が伴うと、体得は難しいでしょう。オンライン研修は知識や思考法など、座学形式での研修で実施すべきといえます。
オンライン研修を実施する際の流れ
オンライン研修は難易度が高いと思われがちですが、さほど難しい点はありません。ここでは、オンライン研修を実施する際の流れをお伝えします。
研修の形式を決定する
まずは、どの形式でオンライン研修を実施するか決定しましょう。受講者の状況や研修内容によって、適した形式のオンライン研修を選ぶ必要があります。
例えば、新人研修のマナー講座を行う場合、受講者同士の交流を深める意図があればライブ型が適しています。単に知識を得るだけであれば、eラーニングでコンテンツを購入するのもよいでしょう。
形式に合わせた準備
研修の形式を決定したら、それに合わせて準備を進めましょう。
ライブ型であれば、配信環境の整備やオンライン会議用ツールの導入などを進めます。オンデマンド形式であれば、教材の選定と契約が必要になります。
社員のテクニカルトレーニング
オンライン研修を行う際に必要となるのが、社員へのテクニカルトレーニングです。ツールの操作方法や自宅のネット環境の確認など、社員が滞りなく研修を受けるための事前準備を整えます。
テクニカルトレーニングは高年齢層の人材に必要と思われがちですが、若手人材でもスマートフォン中心の生活を送り、パソコンに慣れていない場合があるので注意しましょう。
受講後のフォローアップ
オンライン研修は受講中の態度の把握が難しく、とくにオンデマンド型の場合は閉鎖的な環境での受講となるため、受講後のフォローアップが必要です。
研修後には、理解度を把握するためのレポートやテスト、研修の内容を評価するためのアンケートなどの実施が欠かせません。
※研修後のアンケートについては「研修後のアンケートに必要な質問例や項目」で詳しく解説しています。
関連記事:「研修後のアンケートに必要な質問例や項目」
オンライン研修を成功させる3つのポイント
ここまでの解説を踏まえて、オンライン研修を成功させるための3つのポイントをお伝えします。
能動的または双方向の取り組み
人は興味のある映像なら集中して視聴できますが、研修のように課せられた映像に対してはどうしても集中力が散漫になりがちです。
オンライン研修では講師からの一方通行にならないよう、質疑応答や受講者同士のディスカッションなど、受講者が能動的かつ双方向で取り組める内容にしましょう。
顔出し受講を基本とする
オンライン研修では顔出し受講を基本として、受講態度の確認や緊張感の維持、受講者間のコミュニケーションの活性などを図りましょう。
ただ、「自室を映したくない」と考える人も少なくないため、プライバシーへの配慮は大切です。web会議ツールには背景を設定できる機能もあるので、テクニカルトレーニングで設定方法を伝えておくとよいでしょう。
ブレンディッドラーニングを心がける
ブレンディットラーニングとは、様々な学習方法を組み合わせて行う育成手法のことです。集合研修やeラーニング、OJTなどを並行して実施して、それぞれのメリットを掛け合わせることで、育成効率を上げる狙いがあります。
とくにオンライン研修では、実技・肉体的な技能の体得が難しいデメリットがあるため、実地での研修やOJTを並行して実施する必要があります。
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