営業は数字が全てなのか この価値観がもたらす影響を解説
「営業は数字が全て」という価値観・組織風土が行き過ぎると「顧客の課題解決が二の次になる」「リピーターを形成できない」「人材育成への悪影響」といった問題が生じやすくなります。
その一方で「ゴールが明確になる」「モチベーションの向上」「自律型人材が増える」などのメリットがあるため、一概には良し悪しを判断できません。
今回は「営業は数字が全て」という価値観・組織風土がもたらす影響と、その付き合い方について解説していきます。
営業は数字が全て
「営業は数字が全て」という言葉があります。この価値観が馴染んで営業活動にのめり込む人もいれば、逆に「営業がつらい」と感じてしまう人もいます。
そもそもこの「営業は数字が全て」という考え方が正しいのかについては、一概には答えを出せません。営業という職業の目的を考えれば、少なからず核心を突いているからです。
営業職の目的
営業職には新規営業やルート営業など様々な種類がありますが、共通する目的は「組織の利益を最大化するための活動をすること」です。その点において「数字が全て」という考え方は、利益を最大化するための「売り上げの確保(拡大)」に即した価値観といえるでしょう。
「数字が全て」は顧客志向に反する
しかし、利益を最大化するためのアプローチはひとつではありません。なかでも「顧客の課題解決」や「顧客満足度の向上」は、営業の目標として必ず重要視される要素となっています。顧客からの信頼を獲得することによって、結果的に売り上げもついてくるからです。
そして往々にして「数字が全て」という価値観は、「顧客志向」と相反すると指摘されます。数字を追いすぎると、顧客の課題解決を二の次にしてしまう恐れがあるからです。
この問題については、以下の章で詳しく見ていきます。

「数字が全て」で生じる問題やデメリット
「営業は数字が全て」という価値観や組織風土で生じる問題やデメリットについて解説していきます。
顧客の課題解決が二の次になる
「営業は数字が全て」という価値観・組織風土だと、顧客の満足度向上や課題解決が二の次になる恐れがあります。数字を追うことが一義的な目標となり、顧客の満足について考えるよりも、営業活動の効率化などが優先されてしまうからです。
そしてこの問題は、長期的に見ると営業のモチベーションの喪失にも関連してきます。営業活動がただ数字を追うだけの作業になり、とくに人間関係を重んじる人にとってはやりがいを得られないからです。
長期顧客・リピーターを形成できない
「顧客の課題解決が二の次になる」とも深く関わりますが、「数字が全て」という価値観は長期顧客・リピーターを形成しにくいというデメリットがあります。顧客よりも数字を見ているわけですから当然ですね。
商材にも依りますが、一般的に長期顧客やリピーターは企業の売り上げの大きな割合を占めます。これは「パレートの法則(2:8の法則)」としても示され、「企業の売上の8割は、2割の優良顧客から生み出される」とも言われています。
つまり、目先の数値目標を追うことにより、長期的な安定性を欠いてしまう恐れがあるわけです。
人間関係や人材育成への悪影響
「数字が全て」という組織風土は、人間関係や人材育成にも悪影響を及ぼします。仲間であるはずの同僚が蹴落とすべき競争相手になってしまうからです。
こうした環境では悩みや課題があっても気軽には相談できませんし、同僚へのアドバイスは敵に塩を送るようなものなので誰も行わなくなります。
さらに顕著な問題が生じるのが、人材育成です。新人を育てても「営業としての数字」には結びつきませんし、ライバルが増えれば競争も厳しくなります。結果として人材育成を担う人がいなくなり、新人が育たなくなってしまうわけです。
健康問題や不適切な営業等のリスク
「数字が全て」という組織風土が行きすぎると、従業員の健康問題や不適切な営業行為の横行といったリスクが生じます。過度な競争意識やノルマへのプレッシャーなどから、長時間労働を行なったり、コンプライアンスに抵触するような行動を取ったりする可能性が高まるわけです。
また、上の「人間関係への悪影響」でも解説したとおり、相談などが滞ることでメンタルヘルスの問題も生じやすくなり、離職・休職が増えるリスクも増加するでしょう。

「数字が全て」という価値観の良いところ
「営業は数字が全て」という言葉がこれほど広く知られているのは、この考えを実践することでメリットが得られるからです。「数字が全て」という価値観・組織風土のメリットについて解説していきましょう。
ゴールが明確になる
数字に重きを置くメリットとして、ゴールが明確になることが挙げられます。ゴールが明確になれば、逆算して必要となるアクションを洗い出すことができるので、最短で目標達成に向けて進むことができます。
また、ゴールに対する自分の現在地が掴みやすくなるので、「達成困難な進行度ならばソフトランディング」などの副案を検討しやすくなることも大きなメリットといえるでしょう。
モチベーションの向上
「数字が全て」という組織風土がモチベーションの向上につながる場合もあります。とくに日本企業は長く年功序列の人事評価制度を導入していたこともあり、「若いうちに結果を出しても評価されない」という不満がよく生じます。
その点で「営業は数字が全て」という価値観は、年齢を問わず成果によって評価が得られるため、とくに優秀な若手層のモチベーションが高まるわけです。
自律型人材が増える
「数字が全て」という組織風土のなかでは、自律型人材が増えます。より高い成果を上げるために自ら考え、ときには自発的にスキルアップに励むことが期待されるためです。
これは「人間関係や人材育成への悪影響」の別側面のメリットと言えます。「指示がないなら自分で考えるしかない」と、半ば強制的に自発的な行動を促す環境になるわけです。もちろん、これは離職率の向上などを伴うため、諸刃の剣といえるでしょう。

「数字が全て」という価値観との付き合い方
最後に、「数字が全て」という価値観とどう付き合えばいいのか解説していきましょう。
別基軸の目標を掲げる
「数字が全て」という考え方が行きすぎないように、別基軸の目標を掲げることが大切です。
例えば、「商談をクライアントにとって有意義な時間にする」「クライアントの悩みを1つは引き出す」など、数字には直接つながらないような定性的な目標をもってみるとよいでしょう。
とはいえ「数字が全て」と「顧客第一主義」の両輪を掲げても、営業のスタイルが食い違うため、迷走してしまう恐れがあります。売り上げ・数字を大切にしつつも、顧客に寄り添った目標をひとつ掲げるといったバランスを大切にしましょう。
転職する
「数字が全て」という組織風土に馴染めないのであれば、その組織を抜けることが一番手っ取り早い解決策となります。
「数字を追わない」「顧客志向に切り替えた」といった成功談を耳にすることも多いと思いますが、基本的にそれらは組織のなかで決定権を持っているからこそ出来る判断です。「数字が全て」という組織風土のなかで、一介の営業が「数字は追いません」といっても白い目で見られるだけでしょう。
組織風土を変えることは、経営層の立場からでも非常に難しい取り組みとなります。一ビジネスパーソンの立場であるならば、自分が「顧客主義」の組織に移るほうが遙かに簡単です。
ノルマの数字に売上以外の要素を盛り込む
部下が「数字が全て」の価値観で営業をしていて困っているという方は、ノルマとして課す数字に売上以外の要素を盛り込んでみるとよいでしょう。
そもそも「営業は数字が全て」は「結果(売上)が全て」という意味であり、売上を最優先にすることで顧客対応が蔑ろにされる点に問題があります。
ですから、評価対象の数字(ノルマ)に売上以外の要素を盛り込めば、日々の行動も変化するわけです。例えば「リピート率」を目標値として盛り込めば、自然と「どうすればクライアントにリピートしてもらえるか」と考えるようになり、顧客主義の営業活動に切り替わっていくでしょう。

「ビジネス数学研修」で数字に振り回されない人になろう
「ビジネス数学研修」をご提供する弊社のもとには、時折「数字が一番信用できますよね!」という数字至上主義の方が訪れます。
確かに、数字は客観的な事実を示し、物事を判断する際には信頼できる指針となります。ただ一方で「数字が全て」と盲信している人ほど定性的な要素を軽視する傾向があり、上でも解説したような様々な問題へとつながっていきます。数字を使っているつもりが、いつの間にか数字に振り回されているわけです。
数字を信用するのであれば、前提として数字を使いこなさなければいけません。そんなビジネスにおける数字の扱い方を学ぶための研修が、弊社オルデナール・コンサルティングがご提供する「ビジネス数学研修」なのです。
具体的に弊社の研修では、実際のビジネスシーンを想定したうえで、提案資料におけるデータの活用方法や、数字を根拠とした意思決定のプロセスなど、実務に直結するプログラムで演習を繰り返していきます。なお、プログラムは「入門編」から「実践編」の4段階をご用意しておりますので、数字に対して苦手意識を持つ方でも安心してステップアップできます。
また、弊社ではオンライサロン「社会人の数字力向上サロン」を運営しており、「数字に対する苦手意識を克服したい!」「数字を使いこなして、いつかは独立したい」といった悩みや目標を持つ方々が互いに高め合う場を提供しています。
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