報連相における 「おひたし」 「こまつな」 「チンゲンサイ」とは

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報連相における「おひたし」とは、報連相を受ける側(上司)の心得であり、「怒らない」「否定しない」「助ける」「指示する」の頭文字によって構成されています。

「おひたし」はマネジメントの基本となり、コミュニケーションの活性化やトラブルの防止といったメリットもあります。

他にも報連相には「こまつな」や「チンゲンサイ」といった派生語があり、いずれも報連相の活発化などに役立ちます。今回は、そんな報連相における「おひたし」「こまつな」「チンゲンサイ」について解説していきます。

報連相のおひたしとは

報連相は「報告」「連絡」「相談」の頭文字から成るビジネス用語で、ビジネスにおけるコミュニケーションの基本として定着しています。

報告:上司や利害関係者に対し、業務の進捗や結果を伝えること

連絡:同僚や利害関係者に対し、業務に関連した情報や共有すべき重要事項を伝えること

相談:上司や同僚などに対し、業務上の不明点や解決困難な問題などについて意見を求めること

※報連相の基本については「報連相の重要性 やり方や定着させるための基本を解説」で詳しく解説しています。

この報連相には、「おひたし」という派生語があります。おひたしは「お:怒らない」「ひ:否定しない」「た:助ける」「し:指示する」によって構成されており、報連相を受ける側である上司の心得となっています。

怒らない

おひたしにおける「怒らない」の最大のポイントは、「叱る」と分けて考えることです。

部下からのネガティブな報連相に対して感情的に怒りをぶつけてしまうと、部下が萎縮してしまい、以降の報連相が滞る原因になります。怒ったところで問題は解決しませんし、信頼関係を損なうだけです。

ただ、「怒らない」は失敗や問題のある言動を見過ごすという意味ではありません。必要に応じて「理性的に問題点を指摘する」「改善を促す」といった、「叱る」という対応を取ることが大切です。

否定しない

とくに「相談」に対して重要になるのが「否定しない」です。報告や相談をした相手の応答が否定ばかりだったら、その人にはもう報連相を行いたくないと思うはず。「否定」は「怒る」と同様、報連相を滞らせる原因となるわけです。

もちろん、部下からの報連相の内容のなかには、否定が必要なものもあるでしょう。しかし、そういった場合でも頭ごなしに否定するのではなく、報連相を受け取ったうえで問題点を指摘することが大切です。

とくに時間に追われている上司ほど、ばっさりと否定して話を短くしようとする傾向があるので注意しましょう。

助ける

報連相に対する「助ける」のポイントは、そのさじ加減です。部下からの報告や相談に対して、助け船を出すのは当然の対応です。問題は「どこまで助けるか」で、業務やトラブルを全て引き取ってしまうと部下の成長につながりません。

助言を与えるにしても、改善策を細かく伝えるのと、自分で考えるようにヒントだけ出すのとでは、部下の得る経験値が大きく異なります。納期や課題の難易度、部下の実力などを踏まえて、適切な「助ける」を選択することが上司の腕の見せ所といえるでしょう。

指示する

「おひたし」における「指示する」は、権限委譲の度合いがポイントとなります。

1から10まで指示すると部下側に考える余地がなくなり、「やらされている」感覚が強まるだけでなく、部下が「指示待ち型」になってしまう恐れもあります。

では、部下に常に裁量権を与えればよいのかというと、時と場合に依ります。極論ですが、未経験の新人にすべての裁量権を与えるのは放置と変わらず、ハラスメントになりかねません。

部下のスキルや経験を見極め、適切な裁量権を与えて、必要に応じて指示を行う……「おひたし」のなかでも「指示する」は、最も難しいマネジメントといえるでしょう。

おひたしで対応するメリット

報連相に「おひたし」で対応することは、「マネジメントの基本となる」「コミュニケーションの活性化」「トラブルの防止」といったメリットにつながります。それぞれ解説していきましょう。

指導方針・マネジメントの基本となる

「おひたし」の心得は、とくに新任上司にとって指導方針やマネジメントの基本となります。

初めて報連相を受ける側になると、部下にどのようなフィードバックをすればいいか悩んでしまうもの。その際、怒らない・否定しないを徹底し、助ける・指示するのさじ加減を意識するだけで、フィードバックの質が担保されます。また、「おひたし」はハラスメントの防止にもつながるため、近年その重要性はさらに高まっています。

コミュニケーションの活性化

報連相に「おひたし」で対応することは、チームのコミュニケーションを活性化させます。

報連相に対していつも気持ちの良いレスポンスや、役立つアドバイスが得られれば、自然と部下も「まずは上司に聞いてみよう」と考えるようになります。

良好な人間関係が構築されれば、離職率の低下や生産性の向上などにもつながるでしょう。

トラブルの防止

報連相に対して「おひたし」を徹底することは、トラブルの防止にもつながります。

「理不尽に怒る」「適切なアドバイスをくれない」といった上司に対しては、部下側もミスやトラブルに関する報連相を躊躇してしまい、対応が遅れて被害が拡大する恐れがあります。

感情的になりそうなことがあってもグッと堪えて、「おひたし」によって部下の心理的安全性を構築すれば、結果的に将来の自分を助けることになるのです。

報連相とこまつな

報連相とセットで重要視されるビジネス用語として、「こまつな」という言葉があります。

・こま:困ったら

・つ:使える人に

・な:投げる

つまり「困ったときは、手の空いている人やわかる人に頼む」という心得で、報連相を促す意味合いがあります。

困ったときに一人で抱え込んでしまう人は少なくありません。しかし、一人でわからないことやキャパシティを超えた問題に対応していても、失敗や時間の浪費につながるだけです。

手の空いている人や、その問題のプロフェッショナルに依頼・相談することが仕事を円滑に進めることにつながり、結果的には周囲の評価を高めることになるのです。

「こまつな」は上司・管理職にこそ重要

「こまつな」は、報連相を促すための「部下側の心得」として語られることが多いですが、実は上司側・管理職にとっても重要な心得となります。リーダーの役割として、課題に直面した際、メンバーのリソースや得意分野を把握したうえで業務を割り振ることが求められるからです。

働き方の多様化や人手不足が進む現在においては、より重要性が増している心得といえるでしょう。

報連相とチンゲンサイ

「チンゲンサイ」は報連相と対になる言葉で、部下側が報連相を行うべき場面でやってはいけないことを指します。

チン:沈黙する

ゲン:限界まで言わない

サイ:最後まで我慢

※「沈(チン):沈黙して」「言(ゲン):言わないまま」「済(サイ):済ませる」とする場合もあります。

「報告すべき場面で沈黙してしまう」「連絡すべきことを限界まで言わない」「相談すべき問題を最後まで我慢する」……このように「チンゲンサイ」は、報連相を破綻させる原因となります。

部下側が「チンゲンサイ」に陥れば、コミュニケーションが滞って業務効率が落ちるだけでなく、問題や失敗が隠蔽されているあいだに事態が深刻化し、被害の拡大を招く恐れもあります。

「チンゲンサイ」は組織や上司に問題がある証拠

部下側に「チンゲンサイ」が表れるということは、会社の雰囲気や上司の対応に問題がある証拠と考えるべきでしょう。

「最後まで我慢してしまう」などは、当人の性格にも難があることは確かです。しかし、心理的安全性を確保して報告や連絡がしやすい環境を作り、1on1などの相談を促す仕組みがあれば、「チンゲンサイ」は防げるはずです。

数字力の向上が「おひたし」の質を高める

「おひたし」の「怒らない・否定しない」は心がけひとつで実行できますが、「助ける・指示する」についてはさじ加減が重要となります。そこで求められるのが、定量的な目標や基準の設定です。

例えば、提案資料が必要な場面で「資料を良い感じにまとめておくといいよ」とアドバイスを送っても、「良い感じとは具体的に何をすべきなんだ?」と、かえって部下を混乱させてしまいます。こうした抽象的なアドバイスや指示をしてしまう人は意外と多く、誤解やすれ違いの原因になります。

そこで求められるのが、定量的な表現です。上のアドバイスも「提案資料はスライド5枚以内で、◯日までにまとめておくといいよ」と言い換えれば、「いつまでに(期限)」「どれくらい(量)」が明確になり、誰が聞いてもわかりやすいアドバイスになります。

こうした「数字を用いたコミュニケーション」は、弊社がご提供する「ビジネス数学研修」で大切にしている取り組みのひとつ。「ビジネス数学」というとテクニカルスキルの取得を目指すものと思われがちですが、実はコミュニケーションスキルに重きを置いた研修プログラムなのです。

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