ビジネスにおけるエンゲージメント メリットと日本の指標が低い原因を解説

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ビジネスにおけるエンゲージメントとは、会社と従業員のあいだに結ばれている信頼関係を指します。

エンゲージメントを高めることにより、生産性や社員の定着率、採用力の向上といったメリットが得られることから、人事領域でとくに重要視されています。ただ一方で、日本の従業員エンゲージメントは国際的にみても非常に低いことが明らかとなっています。

今回は様々なビジネスシーンで用いられるエンゲージメントの意味について解説したうえで、エンゲージメントを高めるメリットや日本の従業員エンゲージメントが低い原因について解説していきます。

エンゲージメントとは

ビジネスシーンにおけるエンゲージメントとは、会社と従業員のあいだに結ばれている信頼関係を指します。ここでいう信頼関係は「従業員は企業から期待される役割を果たして貢献することを約束し、企業は従業員の貢献に対して正当な対価を支払うことを約束する」という意味があります。

また、経済産業省ではエンゲージメントを「個人と組織の成長の方向性が連動していて、たがいに貢献し合える関係」と表現しています。

経済産業省「未来人材ビジョン」

エンゲージメントは生産性や定着率に直結することから、人事領域でもとくに重要視されており、エンゲージメント向上を目的として様々な取り組みが検討されています。

なお本来、エンゲージメントは「約束・契約」「婚約」といった意味の言葉であり、ビジネスにおいてはより幅広い意味合いで用いられているといえるでしょう。

顧客エンゲージメントとは

多くの場合、エンゲージメントは従業員を対象とした意味合いで用いられますが、マーケティング領域には「顧客エンゲージメント」という指標も存在しています。

顧客エンゲージメントとは、会社と顧客のあいだに結ばれている信頼関係を意味します。ここでいう信頼関係は「企業は顧客が満足するサービスを提供しており、顧客は企業に対して愛着を持って継続的に利用する」といった関係性を指します。

顧客エンゲージメントは、商品やサービスに対する満足度以上にブランドに対する愛着といった「付加価値」を感じている状態で、企業にとっては利益の安定化やサービスの改善などにつながる重要な指標となります。

web領域におけるエンゲージメント

近年、エンゲージメントはweb領域においても用いられています。とくにSNSやwebサイトにおける指標としてエンゲージメントが用いられており、ページや投稿に対するアクションや支持などから具体的な数値として算出されます。

SNSやwebサイトの運用において重要な指標であり、基本的には「顧客エンゲージメント」の一種と考えてよいでしょう。

従業員満足度とエンゲージメントの違い

エンゲージメントに似た言葉として従業員満足度が挙げられますが、両者は若干意味合いが異なります。

従業員満足度は、自社の従業員が福利厚生や人間関係、経営方針などにどの程度満足しているかを示す指標です。対してエンゲージメントは、会社と従業員のあいだに結ばれている信頼関係を指すので、双方向の結びつきを示す点が明確な違いといえるでしょう。

もちろん、従業員満足度の高さはエンゲージメントの向上にもつながっていきますが、従業員満足度の高さが必ずしも生産性の向上につながるわけではありません。その点、エンゲージメントの高さは従業員の貢献意欲の高さを示すため、生産性に直結しやすい特徴があります。

エンゲージメントを高めるメリット

エンゲージメントを高めることによって、具体的にどのようなメリットが得られるのか解説していきます。

生産性・業績の向上

エンゲージメントの高さは社員の生産性に直結し、ひいては業績の向上につながっていきます。

エンゲージメントの高さは単に会社への貢献意欲の高さを示すだけでなく、会社の方向性や理念にも深い理解がある状態を指します。そのため、積極的に組織の目標達成に向けて行動してくれるだけでなく、課題発見や問題解決に務めるなど、多角的に業績の向上につながるアクションを起こしてくれます。

定着率の向上(離職率の低下)

エンゲージメントが高い職場は、そのぶん定着率も高くなります。つまり、離職率が低下していくわけです。エンゲージメントが高い社員は、会社での居心地の良さや業務に対するやりがいを感じているからです。

人材の流動化が進む現在、会社への不満を感じたり、業務へのやりがいを見い出せなかったりすると、人材はより良い環境を求めて転職してしまいます。その一方で、少子高齢化による人手不足から新たな人材の獲得は年々難しくなっています。エンゲージメントの向上は、人材を確保するための最低条件といっても過言ではないでしょう。

職場の雰囲気が良くなる

エンゲージメントを高めることによって、職場の雰囲気も良くなっていきます。社員の多くが積極的に業務や課題に取り組むことによって業績が向上し、社員自身もやりがいや達成感を感じやすくなるからです。

また、前述のとおりエンゲージメントの高さは定着率の向上にもつながるため、同僚の離職による業務のしわ寄せなどが起きにくくなり、安心して仕事に打ち込めることも大きいでしょう。

採用力の向上

エンゲージメントの高さを対外的にアピールできれば、採用力の向上にもつながります。例えば離職率の低さは、求職者から見れば「働きやすい職場・長く働ける職場」の証拠となり、強い応募動機となります。

また、エンゲージメントが高ければ、リファラル採用の効果が向上します。社員の知人や友人を紹介してもらうことで採用につなげていくリファラル採用は、社員自身が「人に紹介したいほど良い会社」と思っていなければ成り立たないからです。

リファラル採用は採用コストを抑えられる上、ミスマッチのリスクも防げるため、上手く活用できれば採用活動の質を大幅に向上させます。このようにエンゲージメントの高さは、様々な面から企業の採用力の向上につながるのです。

日本の従業員エンゲージメントが低い原因

エンゲージメントの高さが様々なメリットにつながることを確認してきましたが、実は日本は世界的に見ても従業員のエンゲージメントがきわめて低い国であることが様々な調査から明らかになっています。

例えば、アメリカの調査会社ギャラップが2021年に実施した調査によれば、日本の従業員エンゲージメントを持つ社員の割合は5%に過ぎないという結果が出ています。

経済産業省「未来人材ビジョン」

日本の従業員エンゲージメントが低い原因については様々な議論がありますが、ここでは代表的な要因について解説していきます。

会社の方向性について考える風土がない

これまで日本企業の多くは、終身雇用制度と年功序列によって成り立っていました。この仕組みでは、基本的に経営層や上司の決定に従っていれば自身の待遇は上がっていったわけで、一介の社員が会社の方向性や意志決定に対して考える必要性は乏しかったわけです。

こうした風土から、自身の仕事ぶりが会社への貢献につながるイメージが持ちにくく、エンゲージメントが向上しないという指摘があります。

会社からの要求ばかりが増えている

2024年4月現在、実質賃金のマイナスは23か月連続で過去最長となっており、働き手からすると会社からの要求ばかりが増えて、対価が釣り合っていないという状況が続いています。

とくに近年は通常業務外の要求も増えており、ハラスメントやコンプライアンスへの対応、コスト削減などが大きな負担になりがちです。現状では会社からの正当な対価が支払われているとはいえず、エンゲージメントが成り立っているとはいえません。当然ながら、会社への貢献を考える人材も増えないでしょう。

日本企業独特の文化

日本企業独特の文化にエンゲージメントを低下させる原因があるとする指摘もあります。

例えば、「社内調整に時間がかかり、意志決定に柔軟性がない」「トップダウン式で権限移譲が進んでいない」「仕事内容や勤務地を会社に決定されてしまう」などは、いずれも会社側の都合を社員に押しつけるものであり、エンゲージメントの関係を築けていません。こうした旧態依然の文化を改革することがエンゲージメント向上の前提条件となるでしょう。

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