「働き方改革のために打ち合わせを短くしたい」「会議の発言者がいつも同じ」といった課題を抱える企業に注目されているのが、ファシリテーション研修です。会議や商談を円滑に進めるためのスキルとして、管理職やリーダー候補を中心に受講が進んでいます。
今回はファシリテーションとはなんなのかを確認したうえで、ファシリテーション研修の目的や内容、そのメリットについて解説していきます。
ファシリテーションとは
ファシリテーション(facilitation)とは、人々の集合的な活動が円滑に進むよう、舵取りをすることです。ビジネスにおいては、会議や商談を円滑に進めるためのスキルを指し、ファシリテーションによって場を主導する役を「ファシリテーター」と呼びます。
ファシリテーションが注目される背景としては、ダイバーシティや働き方改革の推進により、職場に多様な価値観が共存するようになったことが挙げられます。いま企業では、年齢や立場に捕らわれず多様な意見をくみ取り、問題解決や新しいアイディアの創出を目指すことが求められているのです。
とはいえ、ファシリテーションは異なる価値観を持つ人々とのやり取りにのみ必要となるわけではありません。日々の会議や打ち合わせにも密接に関わる能力であり、社員の納得感やコミュニケーションの促進などにも繋がっていきます。
ファシリテーション研修の目的
ファシリテーション研修は、ファシリテーションスキルを磨いていくことで、ビジネスシーンで活躍できるファシリテーターを養成することが目的となります。
研修の対象は管理職やリーダー候補などが中心ですが、ファシリテーターは必ずしもリーダーが勤めるものではありません。広くビジネスパーソンに求められる能力となります。
オンライン会議の増加とファシリテーション
新型コロナウイルスの感染拡大以降、オンライン会議の導入が進み、直接顔を突き合わせることなく議論が交わされるようになりました。
オンライン会議は通常の会議よりも参加者の感情が読みとりにくく、発言の譲り合いが起きやすいため、ファシリテーションスキルの重要性がさらに高まっているといえるでしょう。
ファシリテーションを学ぶ3つのメリット
ファシリテーションを学ぶことによって、どのような業務に活用でき、役立てることができるのでしょうか。ここでは3つのメリットとして、解説していきます。
会議や打ち合わせの生産性向上
ファシリテーションを学ぶことで最も成果が表れやすいのは、会議や打ち合わせでの生産性向上です。日々の会議や打ち合わせにおいて「事務的な報告会となっている」「いつも同じ社員しか発言しない」といった課題を抱える企業は少なくないでしょう。
そうした場にファシリテーターが配置されることで、多くの参加者から意見が挙がるようになり、議論の質が向上することが期待されます。
新たな意見・アイディアの創出
ファシリテーションを活かすことで、今までであれば埋もれていたであろう意見を拾うことでき、議論の活発化によってアイディアが生まれやすくなります。
また、ファシリテーションによって意見が挙がりやすい雰囲気になることで、社内の風通しも良くなるでしょう。
意見の要約・整理
ファシリテーターの役割として重要なのが、議論中に挙がる意見の要約や整理です。
意見を出すことに慣れていない人の言葉や、ジャストアイディア(思いつき)は、議論のなかで軽視されがちです。しかし、こうした意見は無価値なわけではなく、核心を突いていたり、今までにない意見だったりします。
これらをファシリテーターの要約で活かすことができれば、議論はさらに価値あるものになるでしょう。
また、会議や商談で多くの意見が乱立した際、それぞれの意見を整理するのもファシリテーターの大切な仕事です。議論の紛糾・迷走を防げば、それだけ長時間の会議も減り、業務効率も向上していくでしょう。
ファシリテーターに必要な4つのスキル
ファシリテーションには、骨組みとなる4つのスキルが存在します。ここでは、それぞれのスキルの概要について解説していきます。
場のデザインスキル
場のデザインスキルは、有益な議論を行うために環境を整えるスキル・知識を指します。
ファシリテーターの仕事は、議論を始める前から始まります。会議の目的の明確化や参加者の選定、打ち合わせの段取り、終了時間の設定など、有益な議論のための準備は数多くあります。
例えば、管理職が多く参加する会議のなかに新人を参加させても、なかなか発言できません。こうした参加者の関係性をあらかじめ「デザイン」することで、意見を出しやすい「場」が作られるわけです。
対人関係スキル
対人関係スキルは、話を引き出すスキルや傾聴力など、参加者の議論を活発化させて納得感を生み出すために必要となります。
議論のなかで多くの参加者が意見を出すべきなのは、アイディアを集めるだけでなく、結論に対する納得感を向上させるためでもあります。意見を言いたかったのに発言機会が得られなかった場合、その参加者の議論に対する納得感は大きく低下してしまいます。
また、発言したのに理解されなかった場合なども同様です。
ファシリテーターはすべての参加者の発言を引き出し、意見を傾聴して、納得感のある結論へ導いていく役割が求められるわけです。
構造化スキル
構造化スキルは、論点を絞り込んでいくために、議論のポイントを整理したり、可視化したりするためのスキル・知識です。
ときには意見の取捨選択を行うため、ファシリテーターのさじ加減で議論の方向性が変わってしまう責任重大な役回りです。そのため、明確な意図や根拠を持ち、フレームワークなどを活用しながら構造化を図る必要があります。
合意形成スキル
合意形成スキルは、参加者の合意を取り付けて結論を導き出す技術です。
参加者全員の合意を得るためには、それぞれの意見を融合させたり、最も合理性の高い結論を導き出したりする力が必要となります。
納得感のある結論へたどり着ければ、参加者の結束力も高まり、組織活動の活性化にも繋がっていきます。
ファシリテーション研修で学ぶ内容
ファシリテーション研修では、具体的にどのような内容を学んでいくのか解説していきます。
ファシリテーションについて
導入として、ファシリテーションの意味や必要となる場面、具体的な事例などについて解説が行われます。
優れた研修では、ファシリテーションを実務に結びつけて理解できるように解説が行われます。社員自身が抱えている課題とうまく合致すれば、研修の効果も高まっていくでしょう。
ファシリテーションスキル
前述の「場のデザインスキル」「対人関係スキル」「構造化スキル」「合意形成スキル」を中心に、ファシリテーションスキルの知識について学んでいきます。
模擬会議(ロールプレイ)
ファシリテーション研修で重要になるのが、模擬会議(ロールプレイ)です。
実際の議論は机上のとおりには進まず、参加者の性格や立場によって思いがけない方向へ転じてしまうこともあります。ファシリテーターは、知識を得ただけで担えるものではなく、実践的な演習によって初めて経験を積むことができるのです。
模擬会議で様々なテーマや参加者の性格を想定することで、より実践的なファシリテーションスキルが培われていきます。
合意形成に役立つ「数字力」
会議や商談のなかで、参加者の納得を得るために役立つのが「データ」です。数字は誰の目から見ても平等な事実であることから、合意形成に欠かせない要素となります。
しかし、数字を根拠とした意思決定を行えるビジネスパーソンは、多くありません。それどころか、学生時代の数字に対する苦手意識を引きずり「数字を見るのも嫌」という方も少なくないのが実情です。
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