成果主義のメリット・デメリット 向いている人の特徴とは
成果主義とは、仕事の成果に基づいて評価を行い、報酬等を決定する人事制度です。
成果主義には「適正な人件費の実現」「若い世代のモチベーション向上」「優秀な人材の確保」といったメリットがある一方、デメリットとして「評価基準の設定が難しい」「評価項目以外の業務の軽視」「離職率の増加」などが指摘されます。
今回は、成果主義の概要や年功序列との違いを踏まえたうえで、メリット・デメリットや、成果主義に向いている人の特徴について解説していきます。
成果主義とは
成果主義とは、仕事の成果や成績に基づいて評価を行い、報酬や昇格などを決定する人事制度のことです。言い換えるならば、会社への貢献度に応じて平等に評価する制度であり、年齢や在籍歴、学歴などは評価に加点されません。
成果主義と年功序列
成果主義とよく対比される人事制度として、年功序列が挙げられます。年功序列は、勤続年数や年齢に応じて報酬や昇格が決定される制度です。成果を上げても評価と連動しにくい点は、成果主義の対極ともいえるでしょう。
これまで日本企業は、「新卒一括採用」「終身雇用」「年功序列」を軸とする「日本型雇用」と呼ばれるシステムによって成り立っていました。
ただ、これらは右肩上がりの経済成長を前提としたシステムであり、とくに少子高齢化による人口ピラミッドの変化によって、構造的な限界を迎えています。ですから、年功序列が成果主義よりも劣っているというわけではありません。
成果主義のメリット
成果主義を取り入れることにより、「適正な人件費の実現」「若い世代のモチベーション向上」「優秀な人材の確保」といったメリットがもたらされます。それぞれ解説していきましょう。
適正な人件費(賃金)の実現
成果主義の大きなメリットとして、適正な人件費(賃金)の実現が挙げられます。成果主義は組織への貢献度に応じて、公平に社員へ対価を支払う制度だからです。
その点で年功序列は、在籍歴の長い社員であれば、目立った成果を上げていなくても高い賃金を支払わなければいけません。超高齢社会となった現在において、この矛盾は企業を苦しめる要因となっています。
若い世代のモチベーション向上
成果主義は、若い世代のモチベーション向上につながります。これはとくに、年功序列との比較で際立つメリットです。
前述のとおり、年功序列では在籍歴が長い社員に対して高い賃金が支払われる一方、若い世代は成果を上げても見合った対価が得られません。若い世代からすれば「自分のほうが働いているのに、なぜ在籍歴が長いだけの人のほうが高い報酬を得るのか」といった不満につながるわけです。
現在の採用市場は「売り手市場」ですので、若手社員は「自分の働きが評価されていない」と感じれば、容易に転職へ踏み切ることができます。この点で成果主義は「若い世代であっても会社への貢献度に応じて公平に評価する」という点で、モチベーションの向上につながりやすい制度といえます。
優秀な人材の確保
成果主義は採用面でも人材の価値に見合った条件を提示しやすくなるため、優秀な人材を確保しやすくなります。
年功序列は在籍年数や年齢を重んじるあまり、中途採用者に適正な報酬を提示しにくいという問題がありました。その点、成果主義は会社への貢献度に応じて人材を重用する文化が整っているため、外部からの人材に対して公平な評価を与えやすいメリットがあります。
生産性の向上
成果主義では社員の競争意識が高まることにより、成果を上げるための努力や効率化への取り組みが加速するため、組織全体の生産性が向上します。
ただ、この点に関しては後述する「デメリット」とも深く関わるため、自社の組織風土を含めて運用を検討する必要があります。
成果主義のデメリット・問題点
成果主義は、「評価基準の設定が難しい」「評価項目以外の業務の軽視」「離職率の増加」などのデメリットが指摘される人事制度でもあります。それぞれ解説していきましょう。
評価基準の設定が難しい
成果主義の導入・運用時の問題点となりやすいのが、評価基準の設定の難しさです。バックオフィスを始めとして、職種によっては定量的な評価を導入しにくい場合があるからです。
また、この問題は部署内での公平性に限らず、異なる部署のあいだでも公平性を保たなければいけません。例えば営業部と人事部を比較して、明らかに人事部のほうが高い評価を得やすいといった状態は、社員間の不和や不平不満の原因となります。
そのほかにも、外的要因によって成果を上げられなかった場合の評価なども難しい問題です。例えば、法改正や自然災害によって「業務が滞った」「商材が売れなくなった」といった問題が生じたときに評価を下げるのは公平ではありません。
成果主義を導入する際は、定性的に評価が行われていた部分や、成果が上がるまでに時間がかかる部署などに対し、いかに公平な評価基準を設けることができるかが課題となるでしょう。
評価項目以外の業務の軽視
成果主義では、評価項目以外の業務が軽視される傾向が強く表れます。「やっても得がない仕事」が明確になってしまう以上、評価につながる仕事を優先するのは当然の心理といえるでしょう。
しかし、社内には必ず「得はないけれど、誰かがやらなねばいけない仕事」が存在します。こうした仕事が放置されやすくなることで、重大なインシデントにつながる恐れがあるので注意が必要です。
離職率の増加
成果主義では常に成果と向き合う環境となるため、日々ストレスにさらされ、心身への負担も大きくなりがちです。
また、成果を上げることができないと望むような報酬を得られず、生活レベルも下がってしまいます。こうした様々な負の要因から、離職を選択する可能性が高まってしまうわけです。
不正を生む可能性がある
成果主義が進み過ぎると、組織内で不正を生む可能性があります。
成果主義が生み出す競争意識は生産性の向上につながる一方、自分の利益を確保するために違法のやり方で利益を上げようとしたり、虚偽の報告が行われたりといった問題が起きやすくなります。
不正には至らずとも、残業時間の増加や個人主義化が進むといった弊害が少なからず起きるのが成果主義の大きなデメリットといえるでしょう。
成果主義に向いている人の特徴
成果主義に向いている人といえば、「負けず嫌い」「チャレンジ精神が旺盛」などが挙げられます。ここでは、もう一歩踏み込んで成果主義に向いている人の特徴を挙げていきます。
決まった将来に不満を感じる
決まった将来に対して不満を感じる人は、成果主義に向いています。
例えば、年功序列制度の会社では先輩社員を見ることで「10年後はこんな生活で、こんな仕事をしているだろう」とおおよその予測がつきます。逆にいえば、現状で努力を重ねても、その将来が大きく変わることはありません。
こうした状況に置かれて「成果を上げても評価されないじゃないか」と不満を感じる人は、成果主義に向いています。「目の前の仕事をこなしていけば大丈夫だ」と安心できる人は、成果主義には向いていないといえるでしょう。
誰とでもチームワークを築ける
意外に思われるかもしれませんが、誰とでもチームワークを築ける人のほうが成果主義に向いています。
成果主義を重んじる企業は、積極的にチームの再編や人事異動を行う傾向にあります。常に成果が上がりやすい人員配置を心がけているからです。そのため、チームメンバーが入れ替わることも多いので、即席でチームワークを築き、成果を上げる能力が求められます。
成果主義では競争意識が激しくなるので連携を軽視すると思われがちですが、実は誰とでもチームを組めるコミュニケーション能力や柔軟性が必要なのです。
成果主義で公平な評価を行いたいなら「数字力」を磨こう
成果主義を成功に導くための最大のポイントは、公平な評価制度を構築することです。
例えば「顧客からの信頼を獲得している」という評価項目を取り入れる場合、何をもって信頼を獲得していると判断するかは、人によって捉え方が異なります。この場合は「クレーム発生率○%」といった具合に、評価者によって解釈の幅が生じないように定量的な設計が求められるわけです。
しかし、ビジネスパーソンのなかには数字やデータに対する苦手意識を持つ方も少なくありません。数字を扱うのが苦手な人ほど正確な数字にこだわり過ぎてしまい、評価が非現実的なものになっていくといった失敗を犯しがちです。
つまり、成果主義を正しく機能させるような評価制度を導入するためには、社員の数字への苦手意識を払拭しつつ、数字の扱いに慣れるためのトレーニングが必要となるわけです。こうした「ビジネスシーンで役立つ数字力」を磨くことを目標としているのが、弊社オルデナール・コンサルティング合同会社が提供する「ビジネス数学研修」です。
弊社の研修プログラムでは、受講者のレベルに合わせて4段階のコースをご用意しておりますので、数字に対して苦手意識を持つ方でも安心してステップアップできます。研修では実際のビジネスシーンを想定したデータの読み取り方や、わかりやすい報告資料の作り方など、実務に直結するプログラムで演習を繰り返していきます。
「部下が納得する評価項目を設定したい」「他部署間でも公平性を感じる、定量的な成果を示したい」といった課題にお悩みでしたら、ぜひ弊社の研修プログラムをご検討ください。
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