管理職の罰ゲームとは 管理職になりたくない人の割合や原因・対策を解説
管理職の罰ゲーム化とは、管理職の負担が増え、それに対する見返りも得られない等を背景として「管理職になりたくない」という人が多数派になっている現状を示した言葉です。
その原因には「働き方・人材の多様化」「コミュニケーションの難化」「ハラスメントへの気遣い」などが挙げられ、対策としては「権限委譲」「新任管理職へのオンボーディング」「調査の詳細な集計・分析」などが求められます。
今回は管理職の罰ゲーム化をテーマに、「管理職になりたくない人の割合」についての調査結果や管理職の罰ゲーム化の原因・対策について解説していきます。
管理職の罰ゲーム化とは
管理職の負担・負荷は増大し、それに対する正当な見返りが得られないと多くの人が感じています。実際に「管理職になりたくない・昇進したくない」という人は各種調査でも多数派を占めており、こうした現状を表して「管理職の罰ゲーム化」という言葉が広まっています。
ただ、「管理職は割に合わない」という考え方は近年になって急に広まったわけはなく、バブル崩壊後から長く続いているものだと『罰ゲーム化する管理職』の著者である小林祐児氏は指摘しています。

管理職になりたくない人の割合
管理職を罰ゲームと感じている、「管理職にはなりたくない」と考える人は実際にどれくらいいるのでしょうか。主要な調査結果をご紹介します。
アデコ株式会社の調査
2026年9月時点の最新の調査として、アデコ株式会社が9月に公表した調査結果によれば、一般社員の76.1%が管理職という仕事に対して「ネガティブなイメージがある」と回答しています(「どちらかといえばネガティブなイメージがある(46.1%)」、「ネガティブなイメージがある(30.0%)」)。
また、実際に「将来管理職になりたくない」と回答したのは76.7%で、そのうち41.8%は「なりたくない」と言い切っている点がポイントといえるでしょう。
さらに同調査では管理職に対しても質問を行なっており、「管理職という仕事は、損と得どちらが多いと思いますか?」という問いに対して、59.9%が「管理職は損である」と回答しています(「損のみで得はない(9.2%)」、「得よりも損の方が多い(50.0%)」)。
参考:アデコ株式会社「日本全国の一般社員と管理職1,400人を対象にした、管理職という仕事に関する調査」
パーソルキャリア株式会社の調査
パーソルキャリア株式会社は、2025年12月に15,000人を対象とした「出世に関する意識調査」という大規模調査の結果を公表しています。この調査によれば、非管理職の58.5%が「出世したくない」と回答しています(「どちらかといえば出世したくないと思う(25.0%)」、「出世したくないと思う(33.5%)」)。
さらにこの調査で明らかになったポイントは、年代が上がるほどに「出世したい」と考える人の割合が減少することです。「出世したい」と回答した人の割合は、20代で46.3%、30代で36.1%、40代で30.9%、50代で20.8%となっており、年代が上がるほどに顕著に減少しています。
参考:パーソルキャリア株式会社「転職サービス『doda』 出世に関する意識調査」
管理職が罰ゲーム化する原因
管理職の罰ゲーム化は、様々な要素が絡み合っている問題です。ここでは、主要な原因について解説していきます。
働き方・人材の多様化
管理職の罰ゲーム化には、働き方・人材の多様化が進み、マネジメントの難易度が上がったことが深く関わっています。
例えば、リモートワークのように物理的に離れた場所のメンバーをマネジメントするという仕事は、これまで一般的な企業には存在しませんでした。同様に、フレックスタイムの導入や副業・フリーランス人材の登用などが進んだことで「同じ時間・場所・意識で働く」という前提が崩れています。
こうした状況から業務の切り分けやメンバーへのケアの難易度が跳ね上がり、これまでよりも高いマネジメントスキルが要求されるようになっているわけです。
「年上部下」等のコミュニケーションの難化
「働き方・人材の多様化」とも深く関わる原因として、「年上部下」を始めとしたコミュニケーションの難化が挙げられます。
近年の会社組織では年功序列から成果主義への転換が進み、結果として「部下が年上」といった関係性が増えています。
組織の在り方が変化しても、日本には古くより儒教の教えである「長幼の序」、つまり年上を敬い、年長者は年少者を導くという文化が根付いています。そのため、フィードバックや人員配置にも余計な気を遣うことになり、負担となっているのです。
なお、年上部下の問題については「年上部下とは マネジメント・指導のポイントの解説」でも詳しく解説しています。
ハラスメントへの気遣い
近年、管理職の罰ゲーム化を最も加速させている原因は、ハラスメントへの気遣いでしょう。
2019年に施行された「パワハラ防止法」以降、多くの企業がハラスメント研修を実施していますが、その多くは「NGな言動」や「ハラスメントの社会的な影響」などを教えるものであり、結果として健全な指導すら躊躇わせる事態となっています。
「そんなリスクがあるならコミュニケーション自体を減らそう」「部下に任せず、自分でやろう」と考えてしまい、結果として管理職のもとに仕事が山積し、さらに負担が増えるという負のスパイラルに陥っているわけです。
見返りが得られないため
管理職が罰ゲーム化したのは責任や負担が重くなっただけではなく、それに見合うリターンが得られなくなったことに原因があります。
終身雇用と年功序列が機能していた時代であれば、報酬や地位が向上することによって負担に見合うリターンを得ることができました。しかし、終身雇用制度は崩壊し、管理職の責任や負担は重くなるばかり。多くの人が「働きに見合う正当な報酬が得られない」と感じているため、管理職=罰ゲームという認識が広まっているのです。
管理職を罰ゲーム化させないための対策
管理職を罰ゲーム化させないためには、どのような対策が求められるのかについて解説していきます。
権限委譲
管理職を罰ゲーム化させないための対策として欠かせないのが権限委譲です。プレイングマネージャーが管理職の負担を増やす原因のひとつとなっているからです。
プレイングマネージャーの問題は、単にマネージャー・プレイヤー両方の負担がかかるだけではありません。多忙になるほど部下にマイクロマネジメント、つまり正解を与えて細かに指示を出すようになり、部下が「指示待ち型」になってしまう傾向があるのです。
そのため、部下に対して業務や意志決定の権限を与え、できるだけ管理職はマネジメント等の職務に注力できるチーム作りが求められます。
なお、権限委譲については「権限委譲とは 権限移譲との違いやメリット・注意点を解説」で詳しく解説しています。
新任管理職へのオンボーディング
管理職の罰ゲーム化を防ぐために組織の仕組みとして取り入れたいのが、新任管理職へのオンボーディングです。
「プレイヤーとして優秀な成績を上げたから」「とにかく管理職となる人材が少ない」などを理由として、十分な準備が整わないまま管理職に昇進してしまう事例は少なくありません。
しかし、管理職に求められる役割や視座、専門知識などを実務の中だけで身につけていくのは非常に難しいでしょう。
ですから昇進時、あるいは次世代リーダー候補となった時点から研修等を実施し、管理職に求められる能力を獲得できるような機会を与えることが大切です。
調査(サーベイ)の正しい集計・分析
管理職の罰ゲーム化を防ぐために、従業員に対する各種調査(サーベイ)を検討している企業も多いと思います。しかし、こうした調査は設計を綿密に行い、正しく集計・分析しないと誤った結果につながる恐れがあります。
例えば、2026年2月にリクルートマネジメントソリューションズが公表した「管理職のあり方に関する実態調査」によれば、「今後も管理職を続けたいと思いますか」という問いに対して、約6割が続けたいと回答しています(「続けたい(28.7%)」、「どちらかといえば続けたい(29.8%)」)。
この結果だけを見て「管理職はやりがいを感じているから問題ない」と思う方もいるかもしれません。
しかし同調査では、一般社員に対して「今後管理職になりたいと思うか」も質問され、「なりたい」と回答したのは僅か18.1%という結果が出ています(「なりたい(4.8%)」、「どちらかといえば続けたい(13.3%)」)。
参考:株式会社リクルートマネジメントソリューションズ「管理職のあり方に関する実態調査」
現在の管理職はそれなりに満足感を持っているが、肝心の管理職候補たちは、現在の管理職の働きぶりからネガティブな印象を持っていると明らかとなっているのです。
このように、調査対象や集計に不備があると、調査が無駄になるどころか問題の本質を見誤ってしまう恐れがあるので注意しましょう。
なお、アンケートの集計については「アンケート集計のまとめ方」で詳しく解説しています。
「会社の数字」を理解すれば管理職へのハードルは下がる
「新任管理職へのオンボーディング」でも解説したとおり、管理職を担う人材には事前に管理職として活躍するためのスキルや知識を取得してもらうことが理想です。
しかし「新任管理職に対してどんな教育を行えばいいだろう」と悩む人事担当者・経営者様も多いのではないでしょうか。そこでおすすめしたいのが「会社の数字」への理解を深める取り組みです。管理職は組織の数字に責任を持ち、客観的なデータをもとに意思決定を行うことが求められるからです。
一方で、ほとんどのビジネスパーソンは、会社の数字に興味すら持っていません。弊社では研修を始める前に「おおよそでいいので、去年1年分の自社の売上と営業利益がわかる人はいますか」と質問しているのですが、この質問に答えられるのは全体の10~20%程度しかいないのが現状です。
つまり管理職として活躍するためには、まず会社の数字に興味を持ってもらうことから始める必要があるのです。そこでご活用いただきたいのが、弊社が企画運営する「ビジネス数学研修」のひとつ「”ざっくり”学ぶ財務諸表」です。
一般職のビジネスパーソンがいきなり財務・会計についてしっかり学ぼうとしても、大半の方は途中で挫折してしまいます。まずは肩肘を張らずに”ざっくり”と財務諸表を学び、その知識を企業分析や顧客分析などで活用することによって、経営にまつわる数字への解像度を高めることができるのです。
もちろん、これらの取り組みは新任管理職のみならず、すべてのポジションで活きる研修内容となっております。弊社が提供する「ビジネス数学研修」は、具体的かつ日常的に訪れるビジネスシーンを想定して、実践的に「数字力」の向上を目指していく内容になっているからです。
「新任管理職が躓かないよう、会社の数字への苦手意識を解消させたい」「管理職に数字・データをもとにした意思決定を徹底させたい」といった課題にお悩みでしたら、ぜひ弊社の「ビジネス数学研修」をご検討ください。