研修体系とは、スキル・知識を獲得させるために行う研修を構造化したものです。社員に対する教育の全体像を構造化した教育体系に対し、研修体系は研修について細かく整理してまとめていきます。
研修体系を作成する目的としては「効率的な人材育成の実現」「学びの定着」「社員教育の問題点に気付きやすくなる」などが挙げられます。
今回は、研修体系を作成する意味や教育体系との違い、作り方などについて解説していきます。
研修体系とは
研修体系とは、社員の能力開発を目的として、スキル・知識を獲得させるために行う研修を構造化したものです。簡単にいえば「あなたにはこの仕事をしてほしいので、これらの研修を受ける必要があります」と示すための一覧や図式のことです。
例えば新卒入社であれば、OJTの前にOAスキルやビジネスマナーなどの研修を行うのが一般的です。また営業職であれば、テレアポやプレゼンテーションなどの研修を実施する場合もあるでしょう。
このように必要な研修を「全社共通」「階層別」「職種別」などで区分し、一覧化して整理したものが研修体系です。
教育体系との違い
研修体系によく似た言葉として、教育体系があります。教育体系とは、社員に対する教育の全体像を構造化したものです。そこには研修だけでなく、キャリア開発や自己啓発のための施策なども含まれます。
つまり、研修体系は教育体系の一部であり、教育体系という全体像のなかで、研修について細かく整理して構造化したものなのです。
OFF-JTの実施状況
そもそも能力開発は、大きくOJTとOff-JTに分けられます。OJT(On-the-Job Training:職場内訓練)とは、現場で働きながら実践的に知識やスキルを取得する教育方法のこと。一方でOFF-JT(Off-the-Job Training)とは、職場から離れて学習機会を与える教育方法のことであり、研修体系は主にOFF-JTを中心に整理していく取り組みとなります。
厚生労働省「令和6年度能力開発基本調査」によれば、正社員に対してOff-JTを実施した事業所の割合は71.6%であり、3年移動平均の推移でみても上昇傾向にあります。ただ、コロナ禍前は75%台で推移していたことを鑑みると、OFF-JTの実施率は回復しきっていないといえるでしょう。
また、OFF-JTの実施状況は産業・企業規模によっても大きな差があります。産業別では、最も実施率が高いのが「複合サービス事業」で93.3%、最も低いのが「生活関連サービス業・娯楽業」で50.1%となっています。企業規模別では、最も高いのが「1,000人以上」で84.3%、最も低いのが「30~49人」で57.8%となっています。
参考:厚生労働省「令和6年度能力開発基本調査」

研修体系を作成する意味・目的
研修体系はなんのために作成するのでしょうか。研修体系を作成する意味・目的について解説していきます。
効率的な人材育成の実現
研修体系を作成する重要な目的として、効率的な人材育成の実現が挙げられます。
新人が入社したら「新人研修」、現場に配属されたらOJTなど、その場その場で必要となる研修を設定している企業は多いと思います。
しかし、こうした研修は体系的に管理しておかないと、研修内容が重複したり、相反する内容を指導してしまったりする恐れがあります。極端にいえば、場当たり的な研修になってしまうわけです。
こうしたムダを省くためには、企業として目標とする人物像を設定したうえで、必要となる研修を構造化して管理する必要があるわけです。
学びの定着
研修体系の作成には、研修での学びを定着させる目的もあります。研修を実施したにも関わらず、研修での学びを実務で活かす機会が訪れないとスキルや知識はどんどん薄れていってしまいます。
そのため、研修と実務を結びつけたり、より発展的な研修を続けて実施したりと、学びが定着しやすくなるような構造的なスケジューリングが求められます。そこで必要となるのが、研修体系というわけです。
社員教育の問題点に気付きやすくなる
研修体系を作成することで社員教育の問題点に気付きやすくなることにも、重要な意味合いがあります。
実施している研修の全体像を可視化することで「年度を通して強化テーマがぶれている」「座学の比率が多く、社員の集中力が下がる恐れがある」といった、全体を見通したうえでの改善案が検討しやすくなります。これにより「新人の戦力化が遅い」といった課題が浮上した際も、社員教育上の問題点を発見しやすくなるでしょう。

研修体系の作り方
研修体系を作る際に必要な取り組みについて解説していきます。
求める人物像の明確化
研修体系を作るためには、まず経営方針等から求める人物像を明確にする必要があります。
組織として達成したい目標に対して、どのようなスキルを持った人材が必要なのかを明確にしていくわけです。とくに研修体系を作成するうえでは、役職ごとに果たしてほしい役割を整理していくことが大切です。
また、現状で抱えている課題から必要な人材を明確化していくというアプローチも効果的です。目標に対してミスマッチが生じている部分について、教育で埋める必要があるからです。
OFF-JTの種類の把握
研修体系を作るためには、OFF-JTの種類の把握も欠かせません。研修には大きく分けて「階層別研修」「職種別研修」などの種類があり、ポジションや目的に合わせて適切な研修を設定する必要があるからです。
とくに近年は研修の細分化が進んでおり、AIなどの最新技術を使いこなすための研修が次々と新しく生まれています。例えば「データをもとにした意志決定ができる」という人物像を設定した場合、「データサイエンティスト研修」「データ分析研修」「AI活用研修」など様々な選択肢があります。
研修の内容と自社が求めていることとのあいだで齟齬が生じないよう、各種研修の目的や内容を事前にしっかりと理解しておくことが大切です。
OJTとOFF-JTの比率の検討
研修体系を作る際には、おおよそのOJTとOFF-JTの比率を検討する必要があります。OJTとOFF-JTの比率に正解はありませんが、「70:20:10の法則(ロミンガーの法則)」に倣うのが一般的です。
ロミンガーの法則とは、アメリカの人材コンサルティング会社ロミンガー社が実施した、リーダーシップ発揮の要因についての調査から明らかになった法則です。この調査・分析によれば、成長において必要なのは「業務経験が70%、上司などからの薫陶が20%、研修が10%」という結果が出ています。
OJTは業務経験と上司などからの薫陶を含む取り組みとなるので「OJTが90%、OFF-JTが10%」という比率が目安となるでしょう。つまり、社員教育は基本的にOJTを中心として組み立てていくことになります。
とはいえ、これはOFF-JTの効果が低いという意味ではありません。むしろOJTの成果を高めるために、現場では学ぶことができない知識やスキルをいかにOFF-JTで獲得するかが重要になるわけです。
自社が抱える課題や指導役の負担、コストなどを考慮し、自社に合ったOJTとOFF-JTの比率を検討していきましょう。
実施する研修の選定
「OFF-JTの種類の把握」と「OJTとOff-JTの比率の検討」の結果を踏まえて、実施する研修を選定していきましょう。
選定の際は期間やコスト、実施形態(集合研修やeラーニングなど)などを含めて、最も適切な方法を精査することが大切です。
研修体系図を作成する
研修の選定が済んだら、研修体系図を作成しましょう。研修体系図は複雑な図表にする必要はありませんので、Excelでも十分に作成可能です。
例えば、横軸に研修テーマを設定した場合、縦軸には「新入社員」「管理職」などの役職を設定し、誰が受講対象者なのかが一目でわかるようにします。なお、役職で区切れない「若手」や「中堅」などの区分には、あらかじめ「入社○年未満」「30~39歳」といった定義を設定しておきましょう。
誰が見ても一目で内容を把握できるよう、シンプルに仕上げることがポイントです。

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