分散学習とは やり方やメリット・デメリットを解説

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分散学習とは、一度行なった学習を忘れかけてきたタイミングで再度行う学習方法です。集中的に勉強するよりも分散学習のほうが学習効率が良いことが、各種実験からも明らかとなっています。

短時間でも効果を発揮するので多忙な現代人に合った学習方法ですが、「習慣化の問題」や「学習管理が難しい」などのデメリットも存在します。

今回は分散学習について、その原理ややり方、メリット・デメリットなどについて解説していきます。

分散学習とは

分散学習とは、一度行なった学習を忘れかけてきたタイミングで再度行う学習方法のことです。ここでいう学習とは、英単語や数学の公式などの記憶だけでなく、技能の学習も含みます。

これに対して、同じ内容の学習を集中して連続で行う学習方法を「集中学習」といいます。こちらは漢字ドリルや計算ドリルをイメージするとわかりやすいでしょう。

勉強は学校での経験から、集中学習のほうが効果があると思われがちです。しかし実は、総勉強時間が同じ場合、分散学習のほうが学習効果が高いことが各種実験から明らかとなっています。

なお、分散学習という耳慣れない言葉を聞くと、最近になって考案された方法と思われるかもしれませんが、その存在は古くから知られていました。最初に確認されたのは、1885年に実施された「エビングハウスの実験」で、この実験を行なったドイツの心理学者ヘルマン・エビングハウスは、記憶の実験的研究を初めて行なった人物と言われています。

学生の頃に一度は「予習・復習」の大切さを教えられたと思いますが、これはまさに分散学習の効果を活かした取り組みなのです。

分散学習の原理

まず前提として、「なぜ分散学習のほうが学習効果が高いのか」の神経科学的な原理については、完全には解明されていません。ただ、人間の記憶の維持・忘却のメカニズムに対し、分散学習が理にかなった学習方法であることは様々な研究によって実証されています。

記憶の維持・忘却のメカニズムについては「エビングハウスの忘却曲線」が有名で、エビングハウスの実験によれば、人の記憶保持率は20分で58%、1時間で44%、1日で26%にまで減退するとされています。

こうした記憶の忘却に対して適切なタイミングで再学習を行うと、記憶が維持されやすくなることがわかっています。心理学ではこの現象を「分散効果」と呼んでおり、脳のなかで短期記憶から長期記憶へ変換される作用が関連していると見られています。

分散学習のやり方

分散学習のやり方ですが、前述のとおり正確なメカニズムが解明されていないため「◯時間空けて分散学習を行うと効率が良い」といった明確なルールはありません。研究のなかには「2時間後に復習すると効果的」といった結果もありますが、相反する結果が出ている研究もあるため注意が必要です。

ですから、分散学習のやり方の絶対的なルールは以下の2つだけです。

・学習内容を忘れる前に再学習すること

・継続すること

また、学習の方法にもとくにルールはありません。昔ながらの単語帳でも効果は確認されていますし、分散学習用のアプリを活用してもよいでしょう。いずれにせよ、学習内容を忘れる前に、無理のない範囲で継続していくことが何よりも大切です。

分散学習のメリット

分散学習のメリットは「知識・技能が定着しやすくなる」と「忙しくても実行できる」です。それぞれ解説していきましょう。

知識・技能が定着しやすくなる

分散学習の最大のメリットは、知識・技能が定着しやすくなることです。研究によっては、分散学習は集中学習よりも2倍近い効果を発揮する例も確認されており、その差は学習の反復回数を増やすほど高まるといわれています。

さらに、別の研究ではその効果が8年間も存続した例もあり、長期的な知識・技能の定着も期待されます。

参考:水野りか(1998)「分散学習の有効性の原因― 再活性化量の影響の実験的検証―」,『教育心理学研究』46,11-20 

忙しくても実行できる

「忙しくても実行できる」というのも、分散学習の大きなメリットといえるでしょう。

多くの人は「時間を確保し、集中して勉強しないと意味がない」と考え、勉強自体に二の足を踏んでしまいます。しかし実際は、短時間でもコツコツと勉強を続ける分散学習のほうが効率が良いわけです。

一日のほとんどの時間を仕事に費やす社会人こそ、分散学習を実行すべきといえるでしょう。

分散学習のデメリット

分散学習は優れた効果を持つ一方、導入にあたって「習慣化の問題」「学習管理が難しい」「効果が信用されない」といったデメリットが壁となるでしょう。それぞれ解説していきます。

習慣化の問題

分散学習のデメリットとして、まず習慣化の問題が挙げられます。「三日坊主」という言葉があるように、勉強や運動は「継続すること」が最初の壁となりますが、分散学習は継続こそが鍵となる勉強法です。

学習の内容を思い出すことができないくらい間隔が空いてしまうと、分散学習の効果は得られません。感覚的にも、ほとんど思い出せない内容について勉強するのは、初めて勉強するのと変わらないですよね。

勉強自体を習慣化することが、分散学習の最初にして最大の壁といえるでしょう。

学習管理が難しい

授業や研修で分散学習を取り入れる際のデメリットとして、学習管理が難しくなることが挙げられます。

同じ授業・研修を受けても、学習の内容がどの程度頭に入るかは人によって異なります。つまり、学習内容をどれだけ記憶していられるかは、人によって差があるわけです。そのため分散学習を生徒・受講者に課す際には、再学習のタイミングを見極めることが重要となるわけですが、これは簡単なことではありません。

再学習の機会を増やしすぎてはカリキュラムが進みませんから、適切なタイミングで再学習を組み込む必要があります。結果的に、分散学習を取り入れることで学習管理の難易度が跳ね上がってしまうのです。

効果が信用されない

数々の研究によってその効果の高さが実証されている分散学習ですが、「集中学習のほうが効果的だ」と盲目的に思い込まれる傾向があります。

その原因としては、分散学習のメカニズムがはっきりしていないことが指摘されています。

また、単純に集中学習のほうが「がんばった感じがする」というのも大きいでしょう。

いずれにせよ、分散学習の効果が信用されないと「習慣化の問題」にも悪影響を及ぼします。小テストなどで早めに成功体験を得て、分散学習の効果を体感することがポイントとなるでしょう。

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